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コラム column

2023年11月29日

改正景表法広告

「ステマ天国よ、さようなら
 ~ステマ規制のポイントをインフルエンサー視点で~」

弁護士  鈴木里佳 (骨董通り法律事務所 for the Arts)

今年も残すところ、あと1か月余り。つい最近まで大汗をかきながら、秋の訪れを楽しみにしていたのに、秋らしい季節はつかのま、年末がすぐそこまで近づいています。今年の年末は、数年ぶりに、親しい仲間との忘年会を予定されている方も多いのではないでしょうか。
ひさびさの忘年会、お店選びをする際、なじみのお店に行ってもいいが、ここはひとつ、新しいところ開拓しようか。そんなとき、筆者は、グルメな友人にお勧めのお店を教えてもらうというアナログな方法をいまだにとっていますが、グルメな友人たちも、インスタで「#●●部」、「#●●グルメ」などと検索しながら、新しいお店を開拓することもあるといいます。
どちらの方法も、口コミを利用するものですが、忘年会のお店選びに限らず、Amazonで家電を選ぶとき、新作の映画を見に行く際など、私たちの消費行動にきってもきれないのが、口コミやレビューを参考にすることです。なぜ、口コミを参考にするかというと、メーカーやお店自身が出している広告や宣伝よりも、中立な立場から客観的な評価がされているため、より信用できるだろうという期待が大きな理由の一つかと思います。
他方、この「口コミは信用されやすい」という傾向を利用して広がりをみせたのが、インフルエンサー・マーケティングです。
SNSでたくさんのフォロワーをもつインフルエンサーに好意的なレビューの投稿を依頼し、彼ら、彼女らのフォロワーに商品やサービスの魅力を訴求する方法は、SNSの広がりとともに普及し、2023年には741億円もの市場規模に拡大すると見込まれています
このインフルエンサー・マーケティングは、「ステマ」であるとして炎上することも少なくなかったのですが、二関弁護士のかつてのコラムにて、“あるべきルール”が日本にはないと指摘されていたように、日本には明確な法規制がされていませんでした。その結果、ステマ大国などと揶揄されるほど、また実際にも中立的な本来の口コミが、ステマ広告に埋没してしまうほど、ステマ行為が蔓延を続けていました。
このような状況を踏まえ、景品表示法(景表法)が禁止する「不当な表示」(法5条)にいわゆるステルスマーケティングを追加する、ステマ規制が導入され、昨月(2023年10月1日)より施行されました。
具体的には、景表法5条3項に基づき、いわゆるステマを「不当な表示」と指定する告示 (ステマ告示)が出され、あわせて消費者庁がステマ告示の運用基準 (ガイドライン)を公表しました。
今回のコラムでは、このステマ規制について、インフルエンサーやタレント、あるいは彼らのマネジメント事務所の視点から、Q&A形式で検討したいと思います。


Q1: そもそも、どのような行為が「ステマ」として禁止されるのでしょうか??


イラストby Loose Drawing

ステマ告示では、ステマ規制により禁止される行為につき、以下のように定められています。

①事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、
②当該表示であることを、一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

2つの要件について、少しかみ砕くと、①’商品やサービスを提供する事業者自身による「表示」(※)であるにもかかわらず、②’そのことが、消費者にとって分かりにくいものということです。
冒頭のとおり、私たちが第三者の口コミやレビューを信用する前提として、その口コミなどが中立の立場からされたもので、誇張や誇大はないだろうという推測が働いていると考えられます。反対に、商品やサービスの提供元である事業者自身による広告に触れるときは、「広告だから、ある程度の誇張や誇大な表現が使われているかもしれないな」と、ある種の警戒感が働きます。
ですが、ステマの場合、事業者自身が行った表示であることが分かりにくいため(②’)、このような警戒感をもつことができず、結果として、消費者が商品やサービスを選ぶ際に、合理的に選択することを妨げられかねません。この「事業者自身による表示である」ことについてステルス、つまり隠されている場合が、ステマ規制の対象となります。
たとえば、あるレストランのオーナーが自ら、食べログ上の評価を上げるべく、客を装って、★5つをつけ、料理を絶賛する口コミを投稿するなど、事業者自身によるサクラ行為がこれに該当します。
(※)ちなみに、景表法でいう「表示」とは、CM、チラシ、DM、ポスター、雑誌広告など、およそ事業者が顧客を誘引する際に使用するものを意味しますが、ステマ規制との関係では、インフルエンサーなどが行うSNSへの投稿やレビューなどを含むことを念頭に置き、ざっくりと「広告になりうる表現のことね」と捉えて頂けたらと思います。

Q2:美容インフルエンサーAが、エステサロンXから開店10周年の特別フェイシャルコースの体験に招待されました。招待メールには、「日頃の感謝を込めて」とあり、お代は不要なうえに、10周年記念で発売されるスペシャル基礎化粧品セットまでもらえるようです。他方、体験したコースと試した化粧品のレビューをSNSに投稿してほしいとの依頼が記載されています。
お店からの依頼を受け、レビューをSNSに投稿したとしても、Aは、サロンのスタッフなどではないですし、「事業者の表示」にはならないですよね??


インフルエンサーAによるレビューの投稿が、「事業者の表示」にあたるか、ガイドラインに基づき検討します。
ガイドライン上、「第三者による表示」、具体的には、インフルエンサーによるSNSへの投稿などの情報発信であっても、事業者自身がその内容の決定に関与している場合、事業者の表示となるとされています(ガイドライン第2柱書)。
典型的には、事業者自身が、第三者に対して、自社の商品やサービスに関する表示を依頼する際に、その表示内容を指定するようなケースです。質問の事案でも、招待メールにコースや基礎化粧品セットの説明書が添付されており、これに沿った投稿をするよう依頼されていたような場合、サロンX自身がインフルエンサーAによる投稿内容の決定に関与したとして、「事業者の表示」にあたると判断されるでしょう。

では、投稿内容に関して、招待メールでは何も触れられていなかった場合はどうでしょう。
この点、ガイドラインによれば、事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示(⇒事業者の表示)とされます(第2の1(2)イ柱書)。
つまり、事業者が、第三者に対して「こういう投稿をしてね」という依頼や指示をしていないとしても、事業者と、情報を発信する第三者との間に、「情報の発信者が、自分の意思で表示内容を決定した」とは考えられないような関係が客観的に存在する場合には、外形的には第三者による表示であっても、事業者の表示(=広告)とみなされます。
ここで、客観的な状況に基づき、という点がポイントで、情報発信者が主観的に「自分は、自由な意思で投稿したのだ」と主張しても、実際の状況によっては、事業者の表示と判断されることがあります。

では、具体的にどのような状況があると、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められず、事業者の表示と判断されるのかというと、以下の事情などを踏まえて総合的に判断されます(ガイドライン第2の1(2)イ柱書)。

・事業者と第三者の間の具体的なやりとりの態様や内容(①)
・事業者が第三者の表示内容に対して提供する対価の内容(②)
・対価の提供理由(宣伝目的であるか)(③)
・事業者と第三者の関係性の状況(④)

まず、①のやりとりの内容ですが、これは、メールや口頭での会話、商品が事業者から送られてきたときの送付状の内容などが具体的に考慮されます。
次に、②対価の内容ですが、金銭やモノだけでなく、イベントへの招待や宿泊の機会といった経済的上の利益も含まれます。そして、提供される対価が大きければ大きいほど、提供を受けた第三者は、対象の商品やサービスの宣伝を委託された者であると判断され、自主的な意思により決定された表示内容とは認められにくくなると考えられます。
また、③対価が提供された場合に、宣伝目的以外に提供理由があるかという点も考慮されます。
さらに、④事業者と第三者の関係性については、事業者と第三者の間で、過去に対価を提供するような状況があったかや、今後、対価の提供や仕事の発注が期待されるのかといった事情が考慮されます。

上記を踏まえつつ、ステマガイドラインでは、「事業者の表示」と判断される場合として、以下のような例が挙げられています(第2の1(2)イ(ア)(イ))。

〇事業者が第三者に対してSNSを通じた表示を行うことを依頼しつつ、自らの商品やサービスについて表示してもらうことを目的に、商品やサービスを無償で提供し、その提供を受けた第三者が、その事業者の方針や内容に沿った表示を行うなど、客観的な状況に基づき、その表示内容が第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合

〇事業者が第三者に対して、商品やサービスについて表示することが、第三者に経済的な利益をもたらすことを言外から感じさせたり、言動から推認させたりした結果として、第三者がその事業者の商品やサービスについての表示を行うなど、客観的な状況に基づき、その表示内容が第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合

反対に、「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合」、つまり、事業者の表示にあたらない場合として、以下のような例がガイドラインには挙げられています(第2の2(1)一部抜粋)。

〇第三者が、SNS等に自主的な意思に基づく内容として表示(複数回の表示も含む)を行う場合

〇事業者が第三者に対して自らの商品または役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合

〇事業者から、表示内容を決定できる程度の関係性にない第三者に対し、表示を目的とした無償提供ではなく、単なるプレゼントとして商品等の贈呈を行った結果、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合

とくに後半の例示は、やや抽象的な内容にとどまりますので、やはり上記①から④などの事情を考慮しながら、第三者の自主的な意思による表示内容といえるのかを具体的に検討することになります。

以上を参考に、質問の事案について検討します。
インフルエンサーAは、サロンXのサービスや商品についての投稿の依頼を受け、金銭は受領していないものの、サロンでコースメニューの施術を受ける利益に加え、商品の提供を受けています。これらの価格にもよりますが、たとえば総額で10万円など、高額なサービス・商品であった場合、Aの自主的な意思による表示と認められにくい事情にあたる考えられます。 また、これまでにAがサロンXから、Xのサービスや商品のPRになるような投稿を委託され、その対価を受け取っていたような場合、このような過去の関係性は、今回の投稿も「事業者の表示」であるという結論を導く要素にあたると考えられます。
他方で、「日頃の感謝に」というメッセージが、何を意味するのかも気になるところです。 仮に、AがもともとエステサロンXの常連客で、これまで足しげくお店に通っていたなどの事情があれば、サロンでの施術や商品の提供は、これまでの利用に対する謝礼という意図であると推定され、Aによる自主的な意思による表示という判断に傾きそうです。
さらに、Aによる実際の投稿内容も重要です。
仮に、サロンXから指定を受けていないとしても、招待メールに添付されていたコースの説明に、「肩・首・デコルテのつまりにダイレクトにアプローチ。安らぐ香りの中での目もとの集中ケア、フェイスラインの引き上げ、そして保湿マスクで潤いを与えて、若々しく輝くような素肌へ」と書かれていたのを参考に、「肩・首・デコルテの滞りにダイレクトにアプローチしているのを実感 目もとの集中ケア、フェイスラインの引き締め、保湿マスクで潤いたっぷり、若々しくて輝く素肌に 安らぐ香りにも癒された」などと投稿した場合、A自身の感想ではなく、サロンの方針に沿った内容の表示がされたとして、自主的な意思による表示内容とは認められず、ゆえに、「事業者の表示」と判断されると考えられます。


Q3:Aは、インフルエンサーとして致命的なことに、自分の言葉で感想を書くのが苦手なため、サロンXから提供された説明をもとに、投稿したいと考えています。その場合、ステマになってしまいますか?


Q2の事案で、AがサロンXから提供された説明をもとにSNSに投稿する場合、事業者の表示にあたる可能性が高いと考えられます。
といっても、第三者によるこのような投稿が、ステマ規制により一律に禁止されるものではありません。
Q1で検討したとおり、「事業者の表示」であっても、そのことが一般消費者に判別困難、という2つ目の要件を満たさなければ、景表法により禁止されるステルスマーケティングには該当しません。
具体的には、一般消費者にとって「事業者の表示」であることが明瞭となるよう、「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言を表示する方法が考えられます(ガイドライン第3の2(1)ア)。
ただ、インフルエンサー自身も対象の商品やサービスを本心から気に入っており、好意的に発信したいという希望をもっているような場合には、「#広告」とつけることに抵抗を感じることもあるかもしれません。そのような場合は、「X社から無償で商品の提供を受けて(あるいは、エステのコースをお試しする機会をもらって)投稿している」といった文章を表示する方法も許容されます(ガイドライン第3の2(1)イ)。

ただ、これらの表示を付ける場合も、場所や方法に注意が必要です。ガイドラインも、以下のような場合を、事業者の表示であることが不明瞭な方法として挙げています(第 3 の 1(2)ウ、オ、カ、ク)。

〇SNSの投稿において、大量のハッシュタグを付した文章の記載の中に当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合

〇事業者の表示である旨を周囲の文字と比較して小さく表示した結果、一般消費者が認識しにくい表示となった場合

〇消費者が見にくい表示の末尾に表示する場合

〇動画において、消費者が認識できないほど、短時間で表示したり、長時間の動画で冒頭以外でのみ表示する場合

「事業者の表示」であることを示す際には、以上も踏まえ、表示全体から、「事業者の表示」であることが分かりやすい表示となっているか、表示の場所、色、大きさ、目立ちやすさに注意して頂けたらと思います。


Q4:もし、「事業者の表示」であることの表示が分かりにくく、ステルスマーケティングと判断されてしまった場合、インフルエンサーAは、何かしらの制裁の対象となるのでしょうか。


インフルエンサーやタレント事務所の皆さんにとって、一番に気になる質問かもしれません。まず、事業者がステマ規制に違反した場合、景表法 7 条に基づく措置命令(差止めや再発防止に必要な事項の公示などの命令)の対象となり、さらに、措置命令に違反した場合には、「2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処」せられることとなります(景表法 36 条 1 項)。

他方、インフルエンサーなど、「事業者の表示」に関与した第三者は、景表法の制裁の対象とはなっていません。
ただし、ステマ規制の導入以前にも、「ステマ」と呼ばれる類型の広告に、芸能人や有名人が不適当に関与したことで、社会的に強い非難を浴び、いわゆる炎上やイメージダウンにつながった事案が複数起きたことは、みなさんご存じのとおりかと思います(ペニーオークション詐欺事件や、女性アナウンサーによるステマ疑惑などでは、タレントの生命線ともいえる好感度やレピュテーションを大きく損なう結果につながったことは記憶に新しいところかと思います)。
また、今後、事業者からSNSへの投稿などの情報発信を依頼される際に、「適用法令に違反しないこと」という条件をインフルエンサーやタレント事務所が求められることもあるでしょう。
以上を踏まえると、景表法による直接の制裁の対象でないとしても、ステマ規制を正しく理解することは、インフルエンサーやタレント事務所にとっても重要と考えます。


Q5: その他に気を付けることはありますか?


ステマ規制の開始は、2023年10月1日となりますが、過去の投稿であっても、施行日以降に閲覧できるものは規制の対象となります。ですので、インフルエンサーやタレント事務所の皆さんにとっては、過去に発信した情報がステルスマーケティングの2つの要件を満たし、違法と判断されないかの見直しが必要となります。
これは、ステマ規制の直接の対象である事業者にとっても重要なポイントです。過去に行ったインフルエンサー・マーケティングの総点検が未了の事業者も少なくないと思いますが、すっきりとした気持ちで忘年会を迎えられるよう、対価提供があった案件を中心に、優先順位をつけながらでも、検討を進められるとよいでしょう。

以上

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