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コラム column

2022年1月21日

著作権契約エンタメ音楽

第16回骨董通りリンク報告

「著作権・著作隣接権の集中管理の未来を語る」

骨董通りリンク事務局 

骨董通り法律事務所では、中堅・若手を中心とする実務家・研究者による勉強会、「骨董通りリンク」を開催しています。昨年11月に行われた第16回のテーマは、「著作権・著作隣接権の集中管理の未来を語る」でした。本コラムでは、その一端をご紹介します。

著作権の集中管理が一大焦点となっている時代に、その台風の眼である日本音楽事業者協会(音事協)、日本レコード協会(レコ協)、授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)、そしてアーティストIDの付番に向かって乗り出すアーティストコモンズと、まさに今知っておきたい4団体の仕組みと課題を一度に学べてしまう!極めて贅沢な回でした。

今回のご登壇者は、中井秀範さん(一般社団法人日本音楽事業者協会(音事協)専務理事、一般社団法人アーティストコモンズ理事)と髙杉健二さん(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)常務理事)。中井さんは、音事協の専務理事やアーティストコモンズの理事として、実演家の権利の集中管理の第一線にいらっしゃいます。また、髙杉さんは、レコ協の常務理事として、レコード製作者の権利の集中管理を担われた後、SARTRASの常務理事に転身され、その立上げに従事されています。
今回も、福井健策弁護士の司会で、著作権・著作隣接権の権利集中の現在から未来まで語り合いました。

中井さんには、芸団協CPRA(実演家著作隣接権センター)とaRma(映像コンテンツ権利処理機構)における、レコード実演(音楽)と映像実演に関する集中管理の流れや実務について、吉本ご出身らしく時にユーモラスにご説明頂きました。実演家の著作隣接権の集中管理の特殊性として、実演家団体と事業者団体、非一任型と一任型など、様々な団体や制度が混在している点などがあるようです。
aRmaについて、権利者の所在が不明の場合には、数百円の利用料の分配に際して、5~6万円をかけて権利者等を調査することすらあるとのご指摘があり、権利者探しを含む、権利処理の課題を改めて感じるものでした。また、音楽は、1人の視聴者に繰返し視聴される一方、映像は視聴回数が限られるなど、露出コントロールがより重要とのこと。「実演家の著作隣接権」といった一括りではなく、権利やコンテンツを踏まえた取扱いが必要となるようです。

高杉さんからは、はじめに、(一般論でとお断りされつつ)日本レコード協会の業務についてご紹介を頂きました。レコ協は、放送二次使用料、貸レコード報酬等の徴収・分配のほかにも、複製使用料や送信可能化使用料の管理業務も行っていますが、今後、特にネット配信分野に伸びしろが見込まれるとのことでした。
また、髙杉さんには、SARTRASの設立、運営等についても極めてビビッドにお話し頂きました。現状、教育機関から補償金が徴収されていますが、1,000校から著作物の利用実態をサンプリング調査し、その利用報告を踏まえて、分野の毎に分配業務を担う受託団体を介して、個々の権利者に分配金が分配されるスキームを予定しているとのこと。権利制限の補償である補償金を権利者に対して適切に分配するためには、そもそもの権利者の特定という一大難事を含めて、分配精度の向上が課題となります。教育機関の作業負担を軽減しつつ、利用報告数を増やす方法など、様々な改善策を継続して検討していくようです。

その後、司会から、様々な視点で、横断的なコメントと質問が投げかけられ、参加者の皆様との活発な議論に発展していきました。
権利の集中管理は、利用者と権利者の双方にとって利便性のある制度です。一方、権利者の把握、利用実態の調査、使用料の分配などの各場面において、手間と費用もかかります。集中管理には、①JASRACのような一元的な管理、②窓口のみの一元化、③aRmaのような①と②のハイブリッドのほか、政府の関与の仕方など、様々なバリエーションがあり得ます。権利処理窓口の一元化については、文化審議会著作権分科会でも中間まとめ案が出されるなど、検討が進められています。今後の動向にますます注目です。

次回の骨董通りリンクの活動報告もお楽しみに!

以上

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