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2019年1月24日

裁判その他の知的財産法著作権法

「短い身体動作の法による独占 ――モーション、エモート、ダンスムーブ」

弁護士 中川隆太郎(骨董通り法律事務所 for the Arts)

このところ、時間にして10秒にも満たない短い身体動作や(ダンス)ムーブを法によって独占させるべきかどうかが問われる海外事例が続いている。それぞれ論点も異なるが、本コラムでは2つほど事例を紹介してみたい。

■「塩振りおじさん」のパラパラムーブ

2017年からSNSを中心に世界的に人気となった「塩振りおじさん」「ソルト・ベイ」こと、ヌスレット・ギョクチェ。彼の代名詞といえば、料理の仕上げとして肉の上に塩を振る際の独特の「塩パラパラ」ムーブである。

(EU知財庁ウェブサイトより)

この塩振りおじさん、実は料理の腕やパフォーマーとしての才能だけではなく、すぐさまこの「塩パラパラ」ムーブを「動きの商標」としてEU当局に出願する目ざとさも併せ持っていた(出願016433369号)。

しかしEU知財庁は、肝心の「食事の提供」などのサービスについて「塩を振るこの動作には識別力がない」として、商標登録を拒絶した(登録が認められたのは「塩振り」が関係しないサービスばかり)。これに対してギョクチェ氏はEU知財庁審判部に審判を申し立てたものの、昨年6月の審決でも、「食事の提供」等を指定役務として上記動作を商標として登録することは認められないとの部分の結論は同様であった。

ごく短い、そして「食事の提供」というサービスと関わる動作につき商標による独占を認めるためには、「この動作といえば塩振りおじさん」だと消費者が広く認識していることを立証する必要がある。そのためにはやはり、これを裏付ける多数かつ強力な証拠の提出は、避けては通れない道である。しかし審決によれば、ギョクチェ氏側はこの点に関する証拠をほとんど提出していないようなので、このような結論も当然だろう。

■Fortniteが巻き起こすダンスムーブの著作権論争

他方、アメリカでは目下、ダンスムーブの著作権がスポットライトを浴びている。きっかけは大ヒットオンラインゲーム「Fortnite」の中の「エモート」と呼ばれる機能だ。これにより、Fortniteではキャラクターにいろんなジェスチャーやダンスムープなどの動作をさせることができ(プレイヤー同士のコミュニケーションツールとなる)、同作の販売・配信元であるEpic Gamesは、様々なエモートを別途販売している。

しかし、このエモートはオリジナルばかりではなく「元ネタ」のあるものも多いため、無断でダンスムーブなどを流用された「元ネタ」側が、相次いでFortnite側を提訴する動きを見せている(関連記事123)。

Fortniteの”Fresh”(左)とAlfonso Ribeiroの”Carleton Dance”(右)

問題を複雑にする背景のひとつが、著作権法の議論状況である。米国(*1)では、個々のダンスムーブやステップは著作物には当たらないとされている(米国著作権局の整理参照)。おそらくFortnite側の基本的なスタンスも「これらの短いダンスムーブには著作権は認められず、自由に使用できるのだから、無断でエモートとして有料販売していようが何ら法的問題はない」というものだろう(*2)。確かに、一般論として、著作権局の整理自体には違和感はない。しかし、果たしてこのようなフリーライド(それも、「元ネタ」側の代名詞となっているようなシグネチャームーブにつき無断で商業的に利用し、大きな利益を上げるもの)に対して「打つ手なし」とするのが法のあるべき姿なのか。「悩ましい」、というのが正直な心のうちである。

*1) 日本におけるダンスの振付の著作物性につき、岡本健太郎弁護士によるコラム参照。


*2) ダンスムーブの振付の創作者(著作権者)という立場とは別に、ダンスのパフォーマー(実演家)としてどういった権利主張が可能なのか、という点は本件に限らずモーションキャプチャー全般に関わる未解決の問題だが、本コラムでは立ち入らない。

■おわりに

短い日常的な身体動作は、本来あらゆる人が行う可能性があり、独占に馴染みにくい。また、個々のダンスムーブや短いルーティーンについて安易に法的独占を認めると他のダンサーや振付家への影響があまりに大きいという点については、おそらく大きな異論は見られないだろう。問題はどこに線を引くかであり、だからこそ簡単には答えが出ない。自分なりに考えを深めつつ、国内外の事例について引き続き広く情報収集を続ける必要があることを、改めて心に留めておきたい。

以上

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