All photos by courtesy of SuperHeadz INa Babylon.

English
English
Loading

コラム column

2019年4月 1日

その他の知的財産法

「新元号『令和』を登録できるか ~ドメイン、商号、商標」

弁護士 松澤邦典(骨董通り法律事務所 for the Arts)

ついに新元号が発表された。政府が改元の検討が入ったとの報道がされた時期に、桑野雄一郎弁護士が「元号は商標登録できるか」を執筆しているが、この時から2年以上が経過している。この間の情報をアップデートしつつ、元号のドメイン登録や商号登記、商標登録ができるのかについて確認しておこう。

元号はドメイン登録できるか

そもそもドメインとは何か。ホームページなどのURLの一部であり、よくインターネット上の住所のようなものだとか説明される。骨董通り法律事務所であれば、

https://www.kottolaw.com/

というURLだが、このうち

kottolaw.com

の部分がドメインだ。インターネット上の全てのドメインは、ICANNという米国カリフォルニア州の非営利団体のもとで一元管理されていて、kottolaw.comというドメインは世界中でたった一つしかない。
kottolaw.comのうち、

.com

の部分をトップレベルドメインといい、ICANNはトップレベルドメインの管理を「レジストリ」と呼ばれる組織に委任している。例えば、「.com」と「.net」を管理しているのはベリサイン(Verisign, Inc.)というレジストリで、日本を表す「.jp」を管理しているのは株式会社日本レジストリサービスというレジストリだ。
そのレジストリへのドメイン登録の申請を仲介しているのが「レジストラ」と呼ばれるドメイン登録事業者で、その下に「リセラー」と呼ばれる代理店がいる。ドメインを取得したいインターネットユーザーは、レジストラかリセラーを介してドメインを取得することになる。図にすると、こんなイメージだ。

以上、ご存知の方には当たり前すぎる解説だろうが、要するに、ドメインというものは、同じものが二つと存在しないように全世界な規模で管理されていて、ユーザーは世界中でたった一つのドメインを取得することになる。誰がどのドメインを取得するかは、早い者勝ちだ。

さて、いよいよ本題。早い者勝ちで「heisei.com」や「shouwa.jp」を取得できるか。答えは、「ドメインが空いていれば取得できる」だ。アルファベットに限らず、日本語でドメインを取得することもできる。つまり、「平成.com」や「昭和.jp」も、ドメインが空いていれば取得可能だ。ドメインには、文字数の制限はあるが、「元号は取得できない」という決まりはない。
また、取得したドメインを売買するのも自由だ。価値が出そうなドメインを転売目的で取得する「ドメイナー」と呼ばれる人たちが、新元号を予測して買い占めているとの報道もあったが、この「元号ドメイナー」たちの一攫千金の夢は果たして…。

なお、ここで挙げた「heisei.com」などの例は、全て登録済みのものばかりだ。

元号は商号登記できるか

商号とは、商人や会社が自己を表すために使う名称のことだ。商法に、「商人は、その商号の登記をすることができる」と定められている(商法11条2項)。登記するかどうかは、商人の選択に委ねられている。他方、会社に関しては、「その名称を商号とする」と定められ(会社法6条2項)、「商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない」とされている(同条3項)。つまり、会社には、必ず「株式会社○○」とか「○○合同会社」といった商号がある。

商号に関しては、幾つか制限がある。代表的なのは、「同一商号・同一本店」の禁止だろう(商業登記法27条)。同一の商号が同一の本店所在地で先に登記されている場合には、その商号を登記することはできない。(逆にいえば、所在地さえ別なら同一商号の併存は許される。)
しかし、「元号を商号登記できない」という法律はない。現に超有名企業のなかにも元号を含む社名の会社がある。明治しかり、大正製薬しかり、昭和シェルしかり。 東京商工リサーチによれば、「平成」を冠した企業も全国で1,270社あり、その半数が平成1桁年代(平成元年~平成9年)に設立されたそうだ。今後、新元号「令和」を冠した会社が今後続々と設立されるのかもしれない。
ちなみに余談だが、「昭和」を冠した企業の数は、「平成」を冠した企業の数のおよそ2倍という調査結果となったらしい。昭和と平成の年数の長さとの因果関係は不明だが。

出典:http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180307_01.html

という訳で、「元号は商号登記できるか」という問題に対する答えは、言うまでもないだろう。「登記できる」だ。

元号は商標登録できるか

では、商標登録はどうか。国内で商標を取得したい者は、特許庁に対して出願しなければならない。特許庁では、「商標審査基準」に従って、出願された商標を登録できるかが判断される。商標審査基準は特許庁の内部規範にすぎず、法令としての拘束力は持たないが、特許庁の判断はこれに従って行われるため、実務上とても重要だ。

特許庁の「商標審査基準」の改訂第13版(2017年3月発行)では、次のように定められていた。

4. 現元号を表示する商標について
商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。

ここにいう「本号」とは、商標法3条1項6号のことで、何人かの商品または役務であることを認識できない商標(このような商標のことを「識別力のない商標」という)については商標登録できないとする規定を指す。これによれば、改元後、「平成」が現元号でなくなれば、「平成」を商標登録できるように読める。

しかし、特許庁は、2018年6月に「元号に関する商標の取扱いについて」と題して、改元後、「平成」が旧元号となった場合も、単に旧元号として認識されるにすぎないため、商標登録を受けることはできないとの見解を明らかにした。また、現元号以外の元号についても明確化を図るため、この取扱いに準じた基準の改訂を検討することを明らかにした。

その後、「商標審査基準」の改訂第14版(2019年1月発行)では、次のように改められた。

4.元号を表示する商標について
商標が、元号として認識されるにすぎない場合は、本号に該当すると判断する。
元号として認識されるにすぎない場合の判断にあたっては、例えば、当該元号が会社の創立時期、商品の製造時期、役務の提供の時期を表示するものとして一般的に用いられていることを考慮する。

つまり、商標が元号として認識されるにすぎない場合には、識別力がないため、商標登録はできない。先述の特許庁の見解では、商標登録できない例として、饅頭について「平成まんじゅう」を出願する場合を挙げている。もっとも、元号の部分に識別力がない場合でも、識別力のある文字等と組み合わせて出願すれば登録できる可能性はあるだろう。例えば、「平成ノブシコブシ」は、ノブシコブシの部分が十分に特徴的なので、本人たちが出願すれば商標登録できるだろう。ちなみに、「Hey!Say!JUMP」は商標登録されている。
なお、特許庁のデータベースで確認したところ、「令和」を含む商標の登録例は見当たらない。

以上

※本サイト上の文章は、すべて一般的な情報提供のために掲載するものであり、
法的若しくは専門的なアドバイスを目的とするものではありません。
※文章内容には適宜訂正や追加がおこなわれることがあります。
ページ上へ