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コラム column

2018年10月16日

文化・メディア著作権法

「知財本部タスクフォースと海賊版対策『中間まとめ案』」

弁護士 福井健策(骨董通り法律事務所 for the Arts)

15日、政府知財本部の海賊版対策タスクフォース(TF)がひとまず終了した。会議では焦点のブロッキングを巡り、導入論を含む両論併記でのとりまとめを求める意見と、「両論併記は法制化につながる」として激しく反対する意見との対立が解けず、村井純共同座長は「議論の経過のみを記してブロッキングに関する結論の部分はほぼ削除し、中間まとめはとりまとめない」と宣言した。3時間半に及んだ会議の詳細は今後発表される議事録等をご覧頂くほかないが、今後の課題を備忘的に記しておきたい。

前回に続き、筆者は「大部分で合意できている他の海賊版対策の実施と検証を、ブロッキング法制化に優先させるべき」との意見を述べた。

誤解のないように書いておけば、筆者は、ブロッキング以外の現実的な対策を動員しても決定打とならない悪質な海賊版サイトは存在し得る、とは考えている。
例えば近時、米国での訴訟提起とサピーナ(召喚令状)を利用した、クラウドフレア(CDN)とペイパルからの海賊版運営者の情報取得が脚光を浴びている。これは恐らく一定の場合には非常に有効な対策だ。
具体的には、①海賊版サイト側が自ら契約者になってクラウドフレアの有料サービスを使い、かつ、②その身元が日本など法執行しやすい国にある場合などには有効性を期待できそうだ。
他方、複数の指摘があった通り、クラウドフレアの無料CDNを利用する海賊版、4月の緊急対策で名指しされた「Anitube」のように身元が分かっても本国では法執行できないケース、「MioMio」のようにそもそもCDNを使っていないとされる大規模海賊版サイトでは、他の対策が必要に思える。
ブロッキングとて、多くの指摘がある通りそれ単体では不十分な対策ではあるが、それでもEUなど多くの国(日経報道によれば45ヶ国。数は争いあり)で導入され、効果や肯定的な評価の報告もある。その事実はやはり重い。

そうではあるが、ブロッキングが他の対策が乏しい場合の、最後の手段であるべき点に争いは少ない。そして、TFの内外でこの間、多くの貴重の対策提案が行われている。それらは「直接の法的措置の強化策」「フィルタリング/アクセス警告」「検索結果抑止」「広告出稿対策」「リーチサイト規制」「正規版の振興」「普及・啓発」などであり、委員間でも大きな対立はなかった。問題は、海賊版被害をいわば許容できるレベルに抑え込むことであり、それはこれらの既存の手法及び新手法を動員し、ケースに応じて使い分けることで達成できる可能性はあるだろう。
そして現在、民間同士の協力でこうした総合対策を早急に実施しようという機運は高まっている。まず、その実施と効果を見定めることが重要に思える。

TFでは憲法上の対立も解けなかった。「ブロッキングは検閲的で、財産権である著作権に優先する通信の秘密の重大な侵害である」「既に児童ポルノ対策で通信先は全て検知されており、その中での秘密の侵害の程度と深刻な海賊版被害との利益衡量が必要」といった対立である。委員の上野達弘教授は別な会議体で憲法問題を議論すべきと提案しており、自分もそれがこれからの情報社会にとって必要な作業に思える。

幸い、4月以降かつてないほど高まった社会の関心と多くの人々の努力で、現在海賊版の被害は最悪の状況は脱している。無論、「漫画塔」の例など予断は許さない。この与えられた時間を利用し、我々の社会は、海賊版とどう向き合いクリエイター達の生活の糧を守るかを考え続けることになる。

以上

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