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コラム column

2026年8月27日

著作権商標広告

「これくらいは使って大丈夫だったっけ?」
~資料づくりにおける他人の著作物の利用~

弁護士  石井あやか (骨董通り法律事務所 for the Arts)

作成する資料に他人の著作物を掲載するとき、「これくらいは使って大丈夫だったっけ?」と迷ったことは、誰しもあるのではないでしょうか。その資料が社内の打合せ用など広く公開を予定していないものであれば、(問題は問題だとしても)目立ちにくいかもしれません。他方、社外配布やウェブでの公開が予定されていると、問題があった際にクレームが来るリスクも上がるため、緊張感は変わってくると思います。
今回は、そんな資料づくりにおいて、特に、他人の著作物を掲載する上での留意点について整理してみたいと思います。

なお、著作権法においては、ライセンスなど他人の著作物を許可を得て利用しようとする場合、検討の段階で、必要と認められる限度で、その著作物を利用することが認められています(著作権法30条の3)。したがって、例えば、他社Aのキャラクターを利用してコラボ商品を企画している場合、自社内や他社Bとの打合せで企画内容を説明するため、対象となる他社Aのキャラクターなどを資料に掲載することは可能です¹。また、結果的にその企画が実現しなかった場合にも、遡って利用が著作権侵害になるということはありません。

¹ただし、著作権法30条の3では、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」と定められており、資料の不必要な配布などには留意すべきです。

1.他人の画像・文章

他人が著作権を有する画像としては、他人が作成・撮影した画像のほかにも、例えば、YouTubeや番組の一場面を切り出した画像なども、通常これにあたります。また、書籍の表紙なども、デザイン全体として創作的な表現があれば、美術の著作物になりえます。

他人が著作権を有する画像や文章を利用するとき、資料づくりとの関係では、基本的には「引用」(著作権法32条)により利用の可否を検討することになると思います。まず、引用の対象は、「公表された著作物」でなければならず、未公表の著作物を引用にて利用することはできません。そして、引用の要件である「公正な慣行に合致するものであり」、かつ、「引用の目的上正当な範囲内で行われる」との内容を充たすためには、従来は明瞭区分性と主従関係の2要件を判断基準としていたところ、最近は裁判例が揺れており、各種の事情を総合考慮して検討するという考え方も強まっています。ここでは、裁判例も参考に、実務上の注意しておいた方が良い点を挙げるならば、主に、①明瞭区分性(自分が作っている資料と引用する他人の著作物を明確に区別すること)、②主従関係(量的また質的に、自分の資料が主たる内容であること)、③引用の必要性(自身の資料の説明のために、他人の著作物を引用する必要があるか)といった項目が挙げられるかと思います。また、引用にあたっては出所明示が必要ですので(著作権法48条1項)、引用する画像や文章の近くに、著作者名や他の出典などを記載します。

上記の引用の注意点に照らせば、作成する資料において、あくまで自分の文章などによる説明が主体であり、他人の画像や文章は、説明のための補強材料と考えた方が良いです。また、画像であれば、必要以上に大きく表示するといったことも避けた方が良いでしょう。資料における説明に必要な範囲を超え、また、資料を見ている人を飽きさせないための挿絵のように使われている場合には、引用の成立は認められにくくなります。

なお、画像に人物が写っている場合には、著作権の観点から利用が可能かだけではなく、肖像権やプライバシー保護の観点からも、注意が必要となります。(肖像権侵害の判断基準に関するガイドラインとして、デジタルアーカイブ学会が作成した「肖像権ガイドライン」があります。同ガイドラインは、非営利のデジタルアーカイブ公開を想定したガイドラインですが、他の用途にも応用し、参考にすることができます。肖像権や肖像権ガイドラインについては、福井弁護士のコラムもご参照ください。)

※「転載禁止」との表示
画像などには、「転載禁止」や「引用禁止」という表示が付されていることがあります。このような権利者の意思表示があっても、著作権法上の引用が成立しなくなるわけではなく、利用態様が「引用」の要件を充たすものであれば、なお、権利者の許諾なく利用することはできます。(もっとも、このような表示がある場合、権利者本人が他者による利用を望んでいないため、事実上のクレームリスクは増加します。)

※フリー画像の利用についての注意点
インターネット上で公開されているフリー画像は、自由度が高く使うことができます。しかし、「画像 無料」と検索して出てきた画像でも、利用規約を読んでみると、例えば商用利用は禁止されていたり、実は有料だったり、ということもままあるため、利用にあたっては規約を必ずチェックしておきたいところです。

このようなフリー画像を含め、画像の利用に関する留意点については、原口弁護士のコラムでも詳しく説明されているので、こちらもあわせてご参照ください。


2.表やグラフ

統計データの数値それ自体は、客観的事実であり、著作物には該当しません。また、データをありふれた表現方法で示したものは、創作性を欠き、著作物にはあたりません。例えば、月次の売上高をシンプルな一覧表や棒グラフで示したものは、恐らく著作物としては保護されないでしょう。一方、表やグラフのデザインに創作性がある場合には、その部分につき著作物性が認められることはあり、また、データの選択や配列に創作性があれば、編集著作物として保護される余地はあります。したがって、他人の作成した表やグラフの著作物性について迷う場合には、引用の要件を充たすように留意する、また、客観的事実であるデータ部分のみを利用して、表やグラフは自分自身で作成しなおすといった工夫をすることが良いと思います。

3.他社の社名、商品・サービス名称

短い社名や商品・サービス名称は、著作物には該当しないため、それらの名称を書くことについて著作権侵害が成立するとは考え難いです。また、多くの会社では、自社が展開する事業を指定商品・役務として、社名や商品・サービス名称を商標登録していることが多いと思います。ですが、他社の登録商標を使用しても、商品・サービスの出所などを表示するための使用でなければ、商標権の侵害にはあたらないとされます(「商標的な使用」ではない、と言います)。例えば、他社事例として、その商品やサービスの存在を説明するため、商標登録されている社名や商品・サービス名称を表示しているだけであれば、「商標的な使用」には該当しないかと思います。

しかし、著作権や商標の話とは別に、取引があること自体が秘密保持の対象であり、会社名を出すことが、その会社との秘密保持義務に抵触する可能性はあります。また、特段、秘密保持の対象とはなっていなくとも、社名を出すということは、その会社のレピュテーションに関わるため、配慮することが望ましいでしょう。例えば、自社の取引実績を示すため、取引先である他社の名前を表示するにあたっては、事前の承諾を求めている例が多いと思います。

4.地図アプリ

地図アプリを利用し、掲載したい地域の地図を資料に掲載する行為については、どのように考えれば良いでしょうか。まず、地図アプリのように、地理情報がデータ化された地図についても、情報の取捨選択及び表示の方法に創作性があれば、著作物として保護され得ます。他方、地図はその性質上、表現の選択の幅は狭く、著作物性についてはケースバイケースの判断が求められます。著作物性を前提とすると、地図を資料に掲載する場合は、地図そのものを見せる、本来地図として予定されている方法にて利用することも多く、その場合、引用の成立は否定的と考えられます。もっとも、実際のケースでは、地図アプリの利用規約などにおいて転載等のルールが詳細に定められており、その規約にしたがって判断することになります²

²例えば、Google Mapの使用方法については、各種の関連するガイドラインがありますが、「Googleマップ、Google Earth、ストリートビューの使用にあたって(最終更新日2025年6月4日)」では、「Print」による使用方法について「Business documents such as company reports, proposals, presentations, etc.」(筆者訳:会社報告書、企画書、プレゼンテーション資料などのビジネス文書)への使用が許容されています。一方、ストリートビューについては、「Print」による使用は制限されています。こういったガイドラインは随時更新されるため、利用時点の最新版を確認することが重要です。

5.おわりに

インターネット上で公開されているフリー素材や、AI生成などにより、資料づくりの選択肢の幅も広がってきていると思いますが、やはり「他人が作成したこの資料を使いたい」という場面はあり、そのような場合には一歩立ち止まって考える必要があります。

資料づくりで、他人の作成した素材を使ってよいか迷ったとき、特に、引用を検討する上では、まず「なぜ、その素材が必要なのか」から考えてみると、整理しやすくなると思います。


以上

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