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コラム column

2023年1月25日

契約IT・インターネット

「オンライン・サブスクリプションと特定商取引法    
~「最終確認画面」「特商法表示」の読みこなし方を考える~」

弁護士  北澤尚登 (骨董通り法律事務所 for the Arts)

 最近、デジタルコンテンツ(映像作品・音楽など)のサブスクリプション・サービスに加入する際、「画面での確認事項が増えた」と感じたことはないでしょうか。
 読む手間が煩わしい、どこに重点を置いて読んだらよいかわからない、というストレスもあるかもしれません。
 そこで、これらの確認事項がなぜ必要なのか、どう読めばよいのか、近時の法改正をふまえたポイントを簡潔に解説します。(主にユーザー目線からの解説となりますが、事業者側にとっても、これらのポイントを押さえておくことは有益といえましょう。)

◆ 「最終確認画面」には何が記載されている?

 2022年6月に施行された、特定商取引法(正式名称は「特定商取引に関する法律」)の改正により、オンライン・サブスクリプション等の「通信販売」において「最終確認画面」の表示が義務付けられました。
 具体的には、「申込みに係る書面又は手続が表示される映像面」に、一定の事項を表示(記載)すべきこととなっています。この「申込みに係る~映像面」とは、消費者庁のガイドラインによれば、一般的には「注文内容の確認」といった表題の画面、いわゆる最終確認画面を指すとされています。

 オンライン・サブスクリプション・サービスにおいて、最終確認画面への表示が求められる主な事項には、例えば以下のものがあります(詳細は、特商法など関連法令の条文をご参照ください)。なお、上記のガイドラインには画面表示の具体例も掲載されています。

・対価(料金など)
・支払の時期(期限など)および方法
・サービスの提供時期(配信開始日など)
・サービス提供契約の申込みの撤回または解除に関する事項(キャンセルの可否や方法など)

◆ 最終確認画面は、どう読めばよい?

 上記のガイドラインでは、「分かりやすい表示」の重要性が強調されていますが、他方で最終確認画面においては(リンクや別ウインドウでの表示も可能とはいえ)「原則として表示事項を網羅的に表示することが望ましい」ともされています。そのため、法令遵守の観点から正確さを損なわないように、記載文言が長くなってしまう場合もあり、ユーザーにとっては読むのが煩わしいと感じられるかもしれません。
 しかし一方で、最終確認画面の表示事項は、サブスクリプション・サービスの利用規約・利用契約の重要事項を抜粋したものと考えられます。そうであれば、いきなり利用規約や料金説明の全文にあたるよりは時間が節約でき、理解もしやすいかもしれません。
 特に料金体系や解約方法は、契約後に「思っていた条件と違う」ことが判明した場合はトラブルになりやすいので、申込みの前に最終確認画面をよく読んだ上で利用規約の該当箇所もチェックするなど、重点的な確認が望ましいでしょう。その意味でも、最終確認画面の活用が期待されます。

◆ 特商法表示とは(最終確認画面とはどう違う?)

 上記のような最終確認画面の表示が求められるようになった理由は、ユーザーがサービス加入前に重要な契約条件を確認できるようにすることで、契約後のトラブルを予防するためと考えられます。
 ところで、重要な契約条件などを確認する手段としては、元々「特定商取引法に基づく表示/表記」というものもありました。これは、契約条件などに関する「広告」において義務付けられる表示であり、オンライン・サブスクリプション・サービスのウェブサイト上に常時掲載されているケースが多いので、ご加入中のサービスがある場合は一度確認しておくとよいでしょう。

 「特定商取引法に基づく表示」(以下では「特商法表示」と略します)の記載事項は、最終確認画面の記載事項と一部重なっており、例えば以下のものがあります。なお、「サービス提供契約の申込みの撤回または解除に関する事項」は、2022年6月1日施行の特商法改正によって新たに特商法表示の記載事項となったものです。

〈最終確認画面と共通する記載事項の例〉

・対価(料金など)
・支払の時期(期限など)および方法
・サービスの提供時期(配信開始日など)
・サービス提供契約の申込みの撤回または解除に関する事項(キャンセルの可否や方法など)

〈最終確認画面とは異なる記載事項の例(サービス事業者が会社などの法人である場合)〉

・事業者の名称、住所、電話番号
・事業者の代表者または業務責任者の氏名
・対価以外にユーザーが負担すべき金銭があるときは、その内容および金額

◆ 特商法表示は、いつ/どこを/どう読めばよい?

 特商法表示は、サービス事業者のウェブサイトなどに常時掲載されているのが一般的なので、最終確認画面とは異なり、契約(申込)前だけでなく契約後も随時チェックすることができます。例えば、契約中に解約の条件や方法を確認したい場合、いきなり規約の条文にあたるよりも、まずは特商法表示を読んだ方がわかりやすい場合もあろうかと思います。
 また、サービスの内容(が契約どおりかどうか)などについて事業者に問い合わせたい場合、電話番号などの連絡先を確認する手段としても活用できます。
 さらに安全を期するならば、契約申込み前に(最終確認画面だけでなく)特商法表示もチェックして、記載に不足や不明点がないかどうかを確かめておくこともお勧めできます。

以上

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