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コラム column

2017年2月23日

憲法エンタメ

「スポーツをする権利と差別~性的マイノリティを巡る近時のスポーツ界の動き~」

弁護士  小林利明 (骨董通り法律事務所 for the Arts)

東京オリンピック・パラリンピックまで3年半。50以上の競技が開催されるので、会場の準備も急ピッチで進んでいます。新国立競技場の予算問題に始まった会場問題は、昨年末から今年年初にかけてのバレーボールやボート競技会場の見直し要否問題へと続き、最近はゴルフ競技会場が話題となっています。今回のコラムはこのゴルフ競技会場問題と絡めて、スポーツにおける差別、とりわけスポーツ権と性的マイノリティ(「LGBT」、「LGBTs」、「LGBTQ」などといわれますが、本稿では「LGBTQ」といいます(※))について考えてみたいと思います。

(※) ※LGBTQとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア(LGBTのいずれでもない性的マイノリティ)の略です。


1 典型的差別とゴルフ競技会場問題

 (1)人種差別

人種差別は、スポーツ界において古典的に見られる差別です。世界中から選手が集まる欧州サッカーではしばしば大きな問題として報じられ、日本人選手も含め外国人選手が敵チームのサポーターのみならず地元でも差別的扱いを受けることも珍しくありません。Jリーグにおいても、外国人選手に対する人種差別的言動に関するニュースは少なからず見られます。
人種差別問題は時にチームの経営も左右します。2014年4月には、米国男子バスケットボールリーグ(NBA)の、あるチームのオーナーが人種差別的発言を行ったことに端を発し、スタジアム付近ではデモが開催され、スポンサーも直ちにほぼすべて降板するなどし、全米を巻き込む大きな社会問題となりました。そのわずか4ヵ月後には、その人物は約33年間務めたオーナー職を追われ、裁判を経てチームの売却を余儀なくされました。
2013年には「42~世界を変えた男~」という米国映画がヒットしました。背番号42をつけたジャッキー・ロビンソンは、それまで白人のみに門戸が開かれていた近代米国メジャーリーグ(MLB)における初のアフリカ系アメリカ人選手として1947年から活躍し、アフリカ系選手のMLB参加の道を開いた選手です。42は全米の野球チームにおいて永久欠番となっており、ロビンソンはSporting News社が2016年11月に公表した「野球の歴史において最も重要な40人」において、ベーブ・ルースに次ぐ第2位にランクされています。人種差別は非常に根深い問題であるがゆえに、文学作品や映画のテーマにもよく取り上げられるのです。


(2)男女差別

男女差別も典型的な差別類型です。2016年夏には、甲子園大会での練習中に県代表高校の女子マネジャーがグラウンドに入ったところ、高野連(日本高等学校野球連盟)の規則に反するとして大会関係者から制止されたという出来事があり、男女差別の一場面としても議論されました。また、「差別」と言うべきかはさておき、2016年春には、テニス大会における男子の賞金額の方が女子の賞金額より高くてしかるべきかという点をめぐり、男女の世界トップクラスランカーであるノバク・ジョコビッチとセリーナ・ウィリアムスが「場外戦」を繰り広げたこともありました。


(3)ゴルフ競技会場問題

冒頭に挙げた東京オリンピックのゴルフ競技会場問題とは、競技会場となる予定の霞ヶ関カンツリー倶楽部において正会員資格が男性に限定されていることが問題視されている、というものです(※)。報道によれば、同倶楽部において規則改定に関する議論が今月(2017年2月)に入り行われたものの、本コラム執筆時点ではまだ結論は出ていないようです。
法的な議論としては、ゴルフクラブはあくまでプライベートな結社であって憲法21条が保障する結社の自由ないし構成員選択の自由が認められます。一方で、合理的理由なく男女で扱いを変えることは平等権ないし平等原則を定める憲法14条の趣旨に反し違法ではないか(※※)、という憲法上の価値が私人間において衝突する場面となるわけですが、今後理事会がどのような結論を出すのか、注目されるところです。

(※) なお、世界的に見ても、女性の会員資格について何らかの制限を設けているゴルフクラブは少なくなく、この問題は特定のゴルフクラブだけの問題ではないといえます。


(※※) 憲法は私人間相互の関係に直接適用されないものの、社会通念上、重大な権利侵害がされており、その侵害の態様・程度が、憲法上の規定等の趣旨に照らして社会的に許容しうる限界を超える場合は違法になる、と考えるのが最高裁判例です。
(注)その後の報道によれば、同倶楽部は、2017年3月20日に開催された臨時理事会において、女性も正会員として認めるために定款細則の変更を決議したそうです。

2 性的マイノリティとリオ・オリパラ大会

(1)マイノリティとオリンピック憲章

差別は人種差別、男女差別に限られるものではありませんが(たとえば国籍による差別など)、それらのいわば従来から認知されてきた差別類型に対して、近時は、LGBTQへの理解・認知度が進んだことにより、彼らに対する差別問題に関する意識も高まっています。
2001年にはTBSのドラマ「3年B組金八先生」で上戸彩さんが性同一性障害(LGBTQのうちの「T」(※))の役を熱演して話題となりましたし、最近では渋谷区が2015年4月から同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行するようになったことが大きく報道され、LGBTQについての社会的認知度を高めました。

(※) 性同一性障害(GID、gender identity disorder)とは、生物学的な性別と性別についての自己認識が一致しない状態を指します。トランスジェンダーとGIDは完全に同一の概念ではないとされますが、本稿は両者を厳密に区別することが目的ではないため、便宜上、同じものと扱います。


リオ・オリパラ大会での連日の報道も、LGBTQの認知度を高めた理由のひとつでしょう。試合会場においてブラジル代表選手の1人が競技場運営に携わる恋人の女性からプロポーズを受け周囲から祝福を受けたというニュースは日本でも全国紙や多くのネットメディアで報道されました。リオ・オリパラ大会でカムアウトした選手は過去最多の50人を超え、前回ロンドン大会の23人と比べると倍以上だったそうです。
その理由の一つには、そうしやすい社会的雰囲気あるいは声を上げなければならないという社会的背景があったのではと推測されます(ブラジル最高裁は2011年に同姓婚を合法化する判決を下し、2013年には国家司法審議会でも同旨が確認されましたが、ブラジルには熱心なカトリック信徒が多く、否定的な意見も少なくありません)。しかしそれだけではなく、オリンピック憲章もまた彼らの権利をサポートしていました。
具体的には、2014年にIOC総会で採択された「アジェンダ2020」は、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」という内容をオリンピック憲章に盛り込むよう提言しました。そしてこれらは早速、同年に改正されたオリンピック憲章に盛り込まれました。2014年の時点ですでに、オリンピック憲章はLGBTQに対する差別を含めた差別禁止を明示的に謳い、彼らの権利を擁護する姿勢を明確にしていたのです。

(2)LGBTQに関する国内の動向

上記のとおり、世界最大のスポーツイベントにおいても「性的指向」による差別禁止が明記されるに至ったわけですが、LGBTQについてのこのような動きはオリンピックに限られたことではありません。
わが国においても、民進党が通称「LGBT差別解消法案」を2016年5月に国会に提出しましたし(現時点では成立していません)、自民党もこの問題について検討を行っています。厚生労働省は、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」に、被害を受けた者「の性的指向又は性自認(※)にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となる」という文言を追記する改訂を行い、LGBTQに対して職場で行われる性的言動がセクハラに該当する可能性があることを明確化しました(本年1月から施行)。このように、まだ十分ではないものの、日本においても立法・行政・司法レベルで徐々にLGBTQへの対応は進んでいます。また民間レベルでも、外資系企業に限らず、「ダイバーシティ」あるいは「インクルージョン」をキーワードとして掲げ、熱心に取り組む姿勢をアピールする企業が増えてきています。


(※) 性的指向(sexual orientation)とは、人の恋愛・性愛がいずれの性別を対象とするかを表すものであり、性自認(gender identity)とは、性別についての自己意識を意味します。両者を合わせ、"SOGI"と呼ばれることもあります。性的指向は、自分の性自認を前提として、同性/異性のいずれが好きか又はその両方か、という問題ですが、性自認は、自己の性別についての自分の認識それ自体を問題とする概念です。


3 「L・G・B」とは異なる「T」特有の問題

(1)性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

ところで、我々はなお日常、LGBTQをどこか遠い存在に感じていないでしょうか。普段の自分の生活圏にはLGBTQはいない、と。
しかし、2015年に行われたある調査によれば調査対象者の約7.6%が、また2016年に行われた別の調査によれば同じく8%がLGBTQだったそうです。人口の8%弱いるとすれば、単純計算で約13人に1人という計算になります。小学校で40人1クラスなら1クラスに3人、Jリーグ(ベンチ入り登録人数は18人)では1クラブに1人はいる計算になります。決して遠い存在ではないのです。しかしその割には、LGBTQについての理解は不十分なように思われます。
そもそも、一括りに「LGBT」といわれることが多い中、LGBとTとではその意味合いはまったく異なることはご存知でしょうか。LGBは性的指向の観点からの分類であるのに対して、Tは性自認の観点を問題としています。また、日本において前者と後者とで決定的に違うのが、戸籍上の扱いです。性的指向は戸籍上反映されることはありませんが、性自認が生物学的な性別と異なる状態は医学的に「性同一性障害」と扱われることが多く、所定の条件を満たせば、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下「特例法」といいます)により戸籍上の性別の表記を変更することもできるようになっています。これは、個人の性自認に沿った扱いを可能にするための制度として評価できるものですが、戸籍の変更がかえって厄介な問題を引き起こすこともあります。


実際にあった裁判です。女性Xがある名門ゴルフクラブに入会しようとしました。クラブでは、戸籍謄本等の必要書類を送付後、紹介者同席の下でクラブの理事面接を経て理事会の承認を得て所定の金額を払えば会員になれることになっていました。しかし、提出された戸籍を確認したクラブは、Xがかつて男だったことを知り、それを理由に入会を拒否しました。Xはもともと生物学的には男性でしたが、性同一性障害と診断され、特例法が定める戸籍変更の条件を満たし、戸籍の性別表記を女性に変更していました。
裁判所は、次のように判示し、ゴルフクラブ側が敗訴しました(静岡地裁浜松支部平成26年9月8日判決)。


  特例法の施行から約8年を経過した平成24年当時「の社会情勢からすれば、性同一性障害が医学的疾患であったことは公知の事実」であり、「性同一性障害及びその治療を理由とする不合理な取扱いが許されないこと」は公序の一内容である。Xが過去にクラブの女性用施設を利用した際にも混乱等が生じておらず、Xの入会を認めてもクラブの運営に支障をきたすとは考えにくい一方で、性同一性障害を理由に入会を拒否することは、「自らの意思によっては如何ともし難い疾患によって生じた生物的な性別と性別の自己意識の不一致を治療することで、性別に関する自己意識を身体的にも社会的にも実現してきた」というXの「人格の根幹部分をまさに否定したものにほかなら」ず、憲法14条1項の趣旨に違反し違法である。(ゴルフクラブは控訴審(東京高裁平成27年7月1日判決)でも敗訴しています。)


上記判決によれば、性同一性障害者(トランスジェンダー)は、男性3万人に1人、女性10万人に1人の割合で存在するそうです。LGBTQのうちでも少数派であり、社会的認知度の低さゆえ理解を得られにくい場合も多いため、性同一性障害者に関しては次のような報道もありました。

男性Xはスポーツクラブに5年ほど通っていました。その際男性は男性用更衣室を使用していましたが、性同一性障害と診断され性適合手術を受けたことを機に、スポーツクラブにおいて女性用更衣室の使用を希望しました(この男性は、日常は女性として生活しているそうです)。しかし、スポーツクラブはXに、戸籍上の性別に準じた施設利用を求めました。そこでXがスポーツクラブを訴えました。
性別に準じた施設利用が求められており、日常は女性として生活しているのであれば、戸籍を女性に変更すればよいと思うかもしれません。しかし性別を変えたくても変えられないとしたらどうでしょう。特例法は、戸籍の変更の条件の1つに「現に未成年の子がいないこと」を求めています。この男性には10歳の子がいるのです。この裁判の帰趨に関する報道は見当たりませんでしたが、経過が注目されるところです。


(2)スポーツ基本法

2011年に施行されたスポーツ基本法は、その基本理念として、「スポーツは、これを通じて幸福で豊かな生活を営むことが人々の権利である」と定め(2条1項)、「スポーツは、スポーツを行う者に対し、不当に差別的取扱いを」しない(2条8項)ことを定めています。上述のゴルフクラブやスポーツクラブの判断はXの「スポーツ権」を侵害し、スポーツ基本法が禁じる差別的取扱いに該当するともいえるでしょう。


(3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律

また2016年4月1日からは「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されており、民間事業者は「障害」による「不当な差別的取扱い」をすることが禁止されるとともに、「施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備」を行う努力義務が課されることになりました。性同一性障害も法律上は「障害」に該当することから、スポーツクラブの事例でいえば、たとえば性別を問わず使用できる更衣室を設けるよう努力することが求められるかもしれません。


4 競技スポーツとトランスジェンダー~競技スポーツにおける平等とは何か~

トランスジェンダーの扱いは、競技スポーツにおいてはさらに難しい問題があります。生物学的には女性であり性自認は男性である選手は、男子リーグと女子リーグのどちらでのプレーを認めるべきでしょうか。生物学的に男性であって性自認は女性である選手だけのチームと、生物学的にも性自認としても女性だけのチームが真剣勝負をするとした場合、それは魅力的な競技として成立するでしょうか。身体的能力の面における生物学的な男女差は多くの競技スポーツにおいて歴然としています。しかし、いかなる場合であってもトランスジェンダー選手を自己の認識と異なる性別で扱うことは妥当でしょうか。

2016年10月、米国プロスポーツ界で初めて、トランスジェンダーであることを公表した現役アイスホッケー選手が現れました(※)。そしてこれに合わせて、同選手が所属する北米女子プロアイスホッケーリーグ(NWHL)は、トランスジェンダー選手の出場資格について基準を公表 しました。これは、IOCが最新の状況を踏まえて2016年に改正したトランスジェンダー選手の大会参加に関するルールを概ね踏襲するものだそうです。IOCの新ルールは概ね、(1)女性から男性に転換した選手は制限なく男性カテゴリーで競技参加可能、(2)男性から女性に転換した選手は、競技者が自認する性を女性だと宣言していること、テストステロンのレベルが所定の期間中一定のレベル以下であること、これらの条件を満たしているかについての検査が行われ、満たされていない場合は12か月間出場資格が停止されるなどの条件を満たせば女性カテゴリーで競技参加可能、というものです。
男女の生物学的違いに配慮した基準が作成され、トランスジェンダーに競技者としてスポーツを行う道が開かれたことは評価すべきでしょう。しかし、これで将来にわたり平等が実現されることが約束されたかというと、そうとも言えないかもしれません。このルールも、今後の医学の進化によってもさらに変える必要がでてくる可能性はあるでしょう。そもそも、競技スポーツにおいては何があるべき平等なのか、それを考えるにあたり一般社会における平等とは異なる配慮が必要か、異なる配慮があってよいならば、どのような配慮ならば合理的といえるのか。現時点ではほとんど議論すらなされていない問題も多く、今後のさらなる議論が期待されます。


(※) 日本では、個人競技ですが、1980年代半ばに女性として選手活動を開始しながらその後に性適合手術を経て2000年代前半に男性選手として選手登録し現役を続けた選手がいます。


5 スポーツにできること

政治や宗教観とも密接に関係するがゆえに難しくなりがちなLGBTQの問題について、スポーツが果たせる役割は大きいように思います。たとえばNBAでは「NBA Cares」というプログラムで、様々な社会問題に対する活動を行っており、GLSEN(中高生を主に対象としたゲイ、レズビアン、ストレートのための教育ネットワーク・サポート組織)への支援活動も行っています。日本でも昨年秋に発足したBリーグ(男子バスケットボール)がBリーグhopeとして同様の活動を開始しました。NHL(北米男子ホッケーリーグ)と選手会は「Hockey Is For Everyone」という、リーグのダイバーシティとインクルージョンをサポートする活動を展開しています。
リーグやチームのサポートなくして、アスリートが自己の性的指向や性自認を安心して公表できる環境が整うことはないでしょう。特にチームスポーツにおいては、現役選手が性的指向を明らかにすることは今までほとんどありませんでした。近時は、上記の性自認の公表の例に限らず、現役チームスポーツの選手が自己の性的指向を公表する例も増えています。たとえば2014年にはNBAのJason Collins選手が、2016年にはMLBのDavid Denson選手が、それぞれリーグで初めて現役中に自身の性的指向を公表しました。そしてコミッショナーは即座にその公表をサポートする旨の声明を出し、リーグとしてサポートする姿勢を示しています。
また、NBAは、個々の選手のカムアウトではない場面においても、リーグとしてLGBTQの権利をサポートする姿勢を明らかにしています。今シーズンのNBAオールスターゲームはルイジアナ州ニューオーリーンズにて2月19日に行われたばかりですが、実は、昨年7月までは、ノースカロライナ州シャーロットで開催される予定でした。しかし、ノースカロライナ州議会が2016年3月にHB2法(反LGBTQ法)を成立させたことを受け、リーグとしてLGBTQの権利を否定する政策に反対するポリシーを明確にし、オールスター開催地を変更する措置に踏み切ったのでした。
特に昨今の米国スポーツ界においてはトランプ政権発足を受けて平等権に関する意識は特に高まっており、リーグだけではなく、スポーツブランドや個々のアスリートも自身の意見を表明することが増えています。たとえば、NIKEは今月、黒人歴史月間に合わせ、著名アスリートが数多く出演する「EQUALITY」と題するキャンペーンを展開しCMを公開していますし、個々の選手がSNSで自己の意見を表明することは今や当たり前になっています。

上述のスポーツ基本法の制定により、スポーツをすることは、単なる余暇の楽しみから権利へと位置付けられました。そして、性的指向や性自認に関わらず、スポーツを楽しむ権利は基本的人権として誰にでも平等に認められています。しかし、まだ平等は実現されていないと言わざるを得ないでしょう。この問題は、一朝一夕に解決される問題ではないかもしれません。しかし、選手が、企業が、リーグが、国が、そして国際組織が声を上げることが平等とは何かを考えるきっかけとなり、少しずつ、平等は実現されていくのだと思います。
東京オリパラ大会を目前に控え、スポーツに対する注目は非常に高まっています。最近はオリンピックと絡めて「レガシー」(大会後に残る遺産という意味)という言葉を耳にする機会も増えました。スポーツを通して、そして世界的ビッグイベントであるオリンピックを契機に、平等とは何か、どのようなルールが望ましいかを改めて考え、それぞれが皆違うことを前提に、それを受容する文化を目指すということも、東京オリパラ大会のレガシーの一つとなりうるのではないでしょうか。


以上

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