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    <title>コラム</title>
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    <updated>2012-04-25T04:07:53Z</updated>
    
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    <title>（出張編） Internet Watch 「著作権法改正でこう変わる――DVDリッピング規制、元・日本版フェアユース 」 </title>
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    <published>2012-04-11T03:58:29Z</published>
    <updated>2012-04-25T04:07:53Z</updated>

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    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="著作権法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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    <title>「ピンク・レディー事件最高裁判決　～著名人の写真利用とパブリシティ権を考える」</title>
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    <published>2012-03-22T05:27:22Z</published>
    <updated>2012-03-22T07:19:08Z</updated>

    <summary>今年の2月2日、最高裁で初めてパブリシティ権の意義及び侵害基準を判断した、注目す...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
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        <category term="その他の知的財産法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="裁判" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<p>今年の2月2日、最高裁で初めてパブリシティ権の意義及び侵害基準を判断した、注目すべき判決がだされました。そうです。報道でも「ピンク・レディー敗訴確定」、「最高裁でパブリシティ権について初判断」などと大きく取り上げられた、いわゆるピンク・レディー事件の最高裁判決（<a href="http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120202111145.pdf" target="_blank">最高裁平成24年2月2日判決</a>）です。</p>
<p>今回のコラムでは、本判決について、概要や意義を中心に詳しく紹介したいと思います。</p>

<h2>●事案のあらまし</h2>

<p>本件は、「ピンク・レディーdeダイエット」と題する雑誌記事（本件記事）において、ピンク・レディーを被写体とする14枚の写真（本件写真）が無断で掲載されたことが、パブリシティ権を侵害する不法行為になるとして、ピンク・レディーのお二人が掲載雑誌を発行した出版社に対して、計約370万円の損害賠償を求めた事案です。</p>
<p>問題となった本件記事は以下の3頁で、ピンクで囲った部分が、無断で掲載された本件写真です。</p>

<p><img src="../images/pinklady_photo(Joseijishin).jpg" width="532" height="233" alt="ピンク・レディー記事" /></p><br /><br />


<p>本件記事は、平成18年秋ころに流行した、ピンク・レディーの楽曲の振付を真似たエクササイズによるダイエット法を解説したもので、「UFO」等計5曲の振付について、一部の動きのアドバイスやダイエット効果等の説明をしています。</p>
<p>本件写真に着目すると、各楽曲につき、その曲の特徴的なポーズをしたピンク・レディーのステージ写真が1枚ずつ掲載されているほか、「本誌秘蔵写真で綴るピンク・レディーの思い出」のコーナーでは、ダイエット法とは直接関係ないように思える複数の写真が掲載されています。<br />
たしかに、これらの写真を見て、「こんなにたくさん写真を載せなくてもいいのではないか？」「無断で写真を使って売上をあげるなんて許せない」と感じられるのも分かるように思います。</p>
<p>しかしながら、本判決は、パブリシティ権は一定の要件のもとで法的に保護されるべきと判示しつつも、本件写真の無断掲載は違法なパブリシティ権侵害にはあたらないとして、上告を棄却しました。これにより、ピンク・レディーのお二人が求めた損害賠償請求が認められないことが確定しました。</p>

<h2>●そもそもパブリシティ権とは、そして本件下級審の判断は</h2>

<p>日本の法令上、「パブリシティ権」という権利が規定されているわけではありません。しかし、これまで、複数の下級審裁判例において、いわゆるパブリシティ権（著名人がその氏名、肖像について有する顧客吸引力・経済的利益を排他的に支配する権利）が、一定の要件のもと法的に保護されると認められてきました。</p>
<p>もっとも、(1)その法的性質*（人格権に基づく権利か、人格的利益から独立した経済的利益か）、及び(2)侵害の判断基準については、下級審裁判例では判断が分かれていました。</span></p>
<p class="subcontent">（* もっとも、(1)法的性質については、物のパブリシティ権を否定した<a href="http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120716670381.pdf" target="_blank">平成16年の最高裁判決</a>が、顧客吸引力を有するとしても法令等の根拠もなく物に排他的使用権等を認めることはできないと判示したことから、人のパブリシティ権の法的性質は、自然人が有する人格権に基づくとの見解に親しみやすいと指摘されていました（参考：本件第二審判決を解説した判タ1311号210頁））</p>
<p>本件の<a href="http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080711110045.pdf" target="_blank">第一審</a>・<a href="http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090828131843.pdf" target="_blank">第二審</a>も、(1)法的性質については、両判決とも人格権説によりつつ、主に争われた(2)侵害の判断基準については、異なる基準を採用した上で、結論としては、いずれもパブリシティ権侵害を否定しました。</p>
<p>具体的には、第一審は、「<span style="color: #333399">使用行為の目的，方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して，その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し，専らその利用を目的とするものであるといえるか否か</span>」との判断基準*により、パブリシティ権侵害を否定しました。</p>
<p class="subcontent">（* 第一審の採用した「専ら基準」は、<a href="http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=13321&hanreiKbn=07" target="_blank">中田英寿事件・第一審判決</a>や、ブブカスペシャル事件・第一審判決など、過去の複数の地裁判例において見られたものです）</p>
<p>これに対して、第二審は、「<span style="color: #333399">著名人が自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利と，表現の自由の保障ないしその社会的に著名な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担との利益較量の問題として相関関係的にとらえる必要がある</span>」とした上で、「<span style="color: #333399">氏名・肖像を使用する目的，方法，態様，肖像写真についてはその入手方法，著名人の属性，その著名性の程度，当該著名人の自らの氏名・肖像に対する使用・管理の態様等を総合的に観察して判断されるべき</span>」という（基準というには、いささか曖昧とも思われる）判断基準により、パブリシティ権侵害を否定しました。</p>
<p>なお、第二審は、第一審の「専ら基準」に対して、出版等につき、そのほとんどの目的が著名人の氏名・肖像による顧客吸引力の利用であるのに、それ以外の目的がわずかでもあれば、「専ら」に当たらないとしてパブリシティ権侵害が否定されるとすれば、かかる基準は一面的すぎると批判的な評価をしました。</p>

<h2>●本判決におけるパブリシティ権侵害の判断基準</h2>

<p>では、本判決では、いかなる判断がされ、それはいかなる意義をもつのか、具体的に見ていきたいと思います。</p>
<p>まず、本判決は、パブリシティ権の意義に関し、(i)個人は、人格権に由来する権利として、その氏名、肖像等をみだりに利用されない権利を有し、(ii)肖像等が、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合、かかる顧客吸引力を排他的に利用する権利たる「パブリシティ権」も、上記の人格権に由来する権利に含まれる*と判示しました。</p>
<p class="subcontent">（* パブリシティ権の法的性質は人格権に由来するとの上記判示は、法的性質に関連する論点（差止請求、譲渡等による移転の可否等）に、一定の方向性を示すものと考えられますが、本コラムでは詳細は割愛します。法的性質を踏まえての諸論点の検討は、内藤篤・田代貞之著「パブリシティ権概説（第2版）」（木鐸社）が参考になります）</p><br />

<p>そして、本判決は、顧客吸引力を有する者の肖像等の無断使用であっても、正当な表現行為等として受忍されるべき場合もあると判示した上で、具体的には「<span style="color: #333399; font-weight:bold">専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に</span>」違法なパブリシティ権侵害となるとの判断基準を判示しました。</p>
<p>また、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」として、以下の三類型*が挙げられました。</p>
<p class="subcontent">　 &#9312;肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合<br />
　 &#9313;商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合<br />
　 &#9314;肖像等を商品等の広告として使用する場合</p>
<p class="subcontent">（*　なお、本判決に付された金築裁判官の補足意見では、上記①類型につきブロマイド、グラビア写真が、上記&#9313;類型につきキャラクター商品が例示されています。<br />
ちなみに、補足意見とは、合議体の多数意見である最高裁判決に付される、裁判官個人の個別意見のうち、判決に賛成の立場から付されるものです。判決内容そのものではありませんが、その名のとおり、判決を補足する意見であるため、判決内容を理解するうえで参考になります。本判決についても、以下、金築裁判官の補足意見（補足意見）と読み合わせていきたいと思います。）
</p><br />

<p>補足意見では、本判決の判断基準について、以下のような説明がされています。<br />
すなわち、著名人は、社会の正当な関心の対象となりうる存在であり、その人物像、活動状況等の紹介、報道、論評等は不当に制約されるべきではないところ、ほとんどの報道、出版、放送等は商業活動として行われており、その際に著名人の肖像等が掲載されれば顧客吸引効果をもつことは十分ありうる。よって、肖像等の商業的利用一般を侵害とすることは適当ではなく、パブリシティ権侵害となる範囲はできるだけ明確に限定されなければならないと述べられています。</p>
<p>また、補足意見では、本判決が列挙した上記三類型以外のケースについては、三類型に準ずる程度に顧客吸引力を利用する目的が認められる場合に限り、パブリシティ権侵害が認められると示唆されました。</p>
<p>補足意見とあわせて読むと、本判決の判断基準により、肖像等の利用がパブリシティ権侵害を構成するケースは、相当程度限定されるよう理解されます。</p><br />

<p>この点、商業活動たる報道、出版、放送等において、あえて購買意欲が減退するように著名人の肖像等が利用されるケースなど極めて稀でしょう。むしろ、ほぼ全てのケースで、利用される著名人の肖像等は、多かれ少なかれ顧客吸引効果を持つと考えられます。</p>
<p>商業活動としての報道等全般がパブリシティ権侵害と判断されるべきでないことは当然として、商業活動であるだけでパブリシティ権侵害を肯定する要素として重視されるような、曖昧ないし非限定的な判断基準が採用されては、肖像等の利用を含む表現行為が過度に委縮しかねないように思われます。</p>
<p>本判決の判断基準は、肖像等の利用をともなう表現活動に対して、一定の行為規範を示すものと評価できます。</p><br />

<p>もっとも、肖像等の主体の立場からは、少々酷な基準のようにも感じられるところです。
この点、補足意見でも示唆されているように、パブリシティ権侵害による経済的な損害とは別に、そもそも本人が撮影を承諾していない写真（パパラッチ写真等）については、名誉毀損やプライバシー侵害に該当するとして、別の救済がされる場合があります。このように別の救済手段もありうることは、パブリシティ権侵害を限定的に認める判断を許容する根拠になると考えられます。</p>
<p>また、著名人が写真の撮影に応じるにあたり、当該写真につき当初の利用以降も広範な商業的利用がされうることを見据えて対価の交渉をする、あるいは、撮影者に対し、当初目的以外の写真の利用や外部への提供を契約上禁止するといった自衛の手段も考えられます（後者により、仮に、後の無断利用につき不法行為責任を問えない場合も、提供者に対する契約責任追及の余地があるでしょう）。このようなプロテクションがありうることも、パブリシティ権侵害を限定的に認める判断を許容する根拠といえるかもしれません。</p><br />

<p>他方、補足意見では、第二審の「専ら」基準への批判に対し、「<span style="color: #333399">例えば肖像写真と記事が同一出版物に掲載されている場合，写真の大きさ，取り扱われ方等と，記事の内容等を比較検討し，記事は添え物で独立した意義を認め難いようなものであったり，記事と関連なく写真が大きく扱われていたりする場合には，「専ら」といってよく，この文言を過度に厳密に解することは相当でない</span>」と述べられています。</p>
<p>第二審が示した、「専ら基準では、ほとんどの目的が顧客吸引力の利用であっても、その他の目的がわずかでも存在すれば、パブリシティ権侵害が否定されてしまうのではないか」との懸念に対して、本判決では、そのようなケースはパブリシティ権侵害と実質的に判断される可能性があると示唆されている点も、実務上参考となると考えられます。</p>

<h2>●本件写真の掲載はセーフなのか</h2>

<p>パブリシティ権侵害の判断基準に関する説明が少し長くなりましたが、ピンク・レディーの写真に戻りましょう。</p>
<p>本判決は、本件写真におけるピンク・レディーの肖像が、顧客吸引力を有することを認めつつも、(i) 本件記事の内容（ピンク・レディーそのものの紹介ではなく、ピンク・レディーの曲の振付を利用したダイエット法の解説及び解説者のタレントが振付をまねていた思い出を紹介するもの）、(ii)本件写真の使用態様（写真の使用は約200頁の雑誌全体の3頁にすぎないうえ、白黒写真であって、大きさも縦2.8㎝、横3.6㎝ないし縦8㎝、横10㎝程度のもの）などの事情に鑑み、本件写真は、ピンク・レディーの振付を利用したダイエット法の解説及び振付を解説するタレントの思い出等を紹介するため、読者の記憶喚起など、本件記事の内容を補足する目的で使用されたものであり、専らピンク・レディーの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえないと判示しました。</p>

<p>まず、上記(i)に関しては、雑誌や書籍等における肖像等の利用事例では、記事自体の内容、記事と写真の関連性及び記事との関連で写真の果たす役割が、今後の実質的な判断において、重要な要素となりそうです。具体的には、記事自体が内容に乏しく、実質的には写真集と変わらないようなものはアウトになりやすいでしょう。他方、記事自体に意義があり、かつ、写真が、記事で使われたビジュアルに関する表現を補足して読者のイメージを膨らませる場合や、本件のように読者の記憶を喚起させるために利用される場合はセーフになりやすいのではないでしょうか。</p>
<p>次に、上記(ii)のうち、写真の大きさについては、個人的には、本件記事の紙面に対する本件写真（コラム冒頭記事のピンク囲み部分）の占める割合は、むしろ顧客吸引力の利用目的を肯定する要素となるようにも感じられました。しかし、本判決では、専ら目的を認めるための（少なくとも重要な）判断要素とされていない点は、実務上参考となると考えられます。他方、写真の使用は約200頁の雑誌全体の3頁にすぎないという部分については、写真が雑誌の表紙などでも使われるケースでは異なる判断がされる余地もあるように思われます。</p>

<h2>●おわりに</h2>

<p>以上のとおり、本判決の判断基準によれば、書籍等のメディアにおける肖像等の掲載利用につき、裁判においてパブリシティ権侵害と判断されるケースは限定的であろうと考えられますが、具体的には、どのようなケースがアウトになるでしょう。</p>
<p>たとえば、「トマト料理のレシピ本」において、トマト好きを公言しているアイドルが食事をしている写真を、多数掲載するケースは、どうでしょうか。</p>
<p>かかるケースでは、ピンク・レディーの件とは異なり、写真と記事内容の関連性が弱いため、「写真の利用は、読者の食欲をそそり、または、レシピを掲載したトマト料理をおいしそうに見せるため」といった別目的が主張されたとしても、写真の利用は、専らアイドルの肖像の顧客吸引力の利用を目的と判断され、アウトとなる可能性が高いように思われます（もちろん、写真の枚数・大きさ・画質等にもよります）。</p>
<p>では、「スカートの丈から解く戦後史」といった書籍において、戦後活躍した、アイドルやファッションアイコンの写真を多数掲載するケースはどうでしょう。</p>
<p>こちらは、レシピ本と異なり、写真と記事内容の関連性はありそうです。また、写真は、読者が各時代を思い返し、あるいはイメージを膨らませるのに役立ちそうです。あとは、やはり、写真の枚数・大きさ・画質や、記事と写真のボリュームの比較により、判断が分かれるように思います。</p>
<p>本判決で挙げられた三類型その他の肖像等の利用行為について、いかなる事情のもと、パブリシティ権侵害となるのか、今後、集積される事例判断に注目したいと思います。</p>

<br />
<p align="right">以上</p>]]>
        
    </content>
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<entry>
    <title>「&quot;マジコン&quot;規制のゆくえ ～ゲーム海賊版対策の最前線～」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000364.html" />
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    <published>2012-02-24T02:20:08Z</published>
    <updated>2012-02-24T02:55:50Z</updated>

    <summary>１.はじめに デジタル化・ネットワーク化の進展にともない、様々なコンテンツについ...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="その他の知的財産法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="著作権法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="ＩＴ法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<h2>１.はじめに</h2>

<p>デジタル化・ネットワーク化の進展にともない、様々なコンテンツについてユーザーのニーズに即した利便性の高いコンテンツ提供が可能となり、クリエイター側のビジネスチャンスも拡大しているといえます。ゲームの世界では、「バーチャルコンソール」などのダウンロードによるゲーム販売や、オンラインゲームの普及といった例が挙げられます。しかし一方では、「海賊版」の流通規模の飛躍的な増大によって、クリエイターの権利・利益に対する深刻な被害が懸念され、対策が課題となっています。</p>

<p>最近の著作権法関連のトピックでいえば、ACTA（模倣品・海賊版拡散防止条約）、TPP、SOPA（Stop Online Piracy Act; 米国の著作権保護法案）は、いずれも海賊版対策を重点項目にしています。これは、とりわけ米国が海賊版対策に熱心だからともいえますが、日本でもマンガ・アニメ・ゲームなど、人気のあるコンテンツが多数生み出されていることから、そのぶん海賊版被害が生じやすく、対策の必要性が高いといえましょう。</p><br />


<p>デジタル社会における海賊版対策の難しさとしては、海賊版の作成（デジタル複製）・提供（ネットワーク送信）といった行為が比較的容易にできてしまうため、そのような行為自体を規制しようとしても、実際には捕捉しづらいことが挙げられます。例えば、ネットワーク送信やダウンロード複製の主体を、サーバーをたどって把握できたとしても、「もぐら叩き」的に個別の対処をすることは難しかったり、できたとしても対症療法にすぎず抑止効果に乏しい場合も多いでしょう。したがって、海賊版対策に実効性をもたせるためには、複製・送信行為を禁止するという直截的な規制だけでは不十分な場合もあります。</p>

<p>その代表例がゲームで、今では多くの海賊版がインターネット上で提供されており、ダウンロードで簡単に入手することができますが、これを「マジコン」という機器につなげば、（Nintendo DSなどの）ゲーム機に内蔵されているセキュリティを回避できるため、海賊版を正規版と同様に起動（プレイ）することができてしまいます。こういった一連のプロセスによる海賊版被害は、ニンテンドーDSおよびPSP（プレイステーション・ポータブル）のゲームソフトについては2004～2009年の累計で国内被害額 9,540億円にのぼるという試算もあるほどですが（「<a href="http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2301_gaiyo.pdf" target="_blank">文化審議会著作権分科会報告書の概要（平成23年1月）</a>」、これを抑止するには、海賊版の作成・提供（・入手・使用）といった個別の行為を規制するだけでは実効性が十分とは言いがたく、根本的な対策として、マジコンの製造・販売を規制することが必要と考えられます。</p>

<p>このような観点から、近年、マジコン規制に関する法改正に向けた動きが進められてきました。平成23年には不正競争防止法および関税法の改正がなされており、著作権法の改正についても議論が行われていますが、複数の法律にまたがる話でもあり、ゲーム業界や法律関係者以外の方々には若干わかりにくいかもしれません。そこで本稿では、マジコン法規制の現状を概括的に整理して、読者のご参考に供したいと思います。</p>

<h2>２.著作権法</h2>

<p>マジコンは、コピーガードではなくアクセスガード（ゲーム機に内蔵されている、海賊版の起動を防止するセキュリティ）を解除するものであるため、法律上の議論では「アクセスコントロール回避機器」と呼ばれることがよくあります。</p>

<p>著作権は、英語でいえば「コピーライト」であることからもうかがえるように、本来的には「複製（コピー）」をコントロールする権利とされています。他方、ゲームをプレイする、本を読むなどの「アクセス」行為は、伝統的に著作権の範囲外とされてきました。したがって、いわゆるコピーガード・キャンセラーなどの「コピーコントロール回避（機器）」はともかく、コピー行為に直接関係しない「アクセスコントロール回避（機器）」は、著作権法による規制の対象にすべきではない、との見解も従来は有力でした。</p>

<p>しかし、実際上の規制の必要性もあってか、<a href="http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2301_ver02.pdf" target="_blank">文化審議会著作権分科会報告書（平成23年1月）</a>では、著作権法の対象とすべきゲーム用の保護技術として、「オンラインゲーム用の保護技術のうち、ゲームソフトの複製やインターネット上での送信の防止・抑止が行われていないもの」は除くが、それ以外の「ゲーム機・ゲームソフト用の保護技術」は含めるべき、とされています。ポイントを要約すると、直接的なコピーガードだけでなく、ゲーム機のアクセスコントロール技術（コピー行為自体を直接防止するものではない）であっても、結果としてコピーを無意味化し抑止しているものは、コピーコントロールの「機能」を有しているから、著作権法の守備範囲に含めるべき、ということになります（以上につき、同報告書77ページ以下参照）。</p>

<p>今後、この方向で法改正が行われるとすれば、具体的には：<br />
<p class="subcontent">・ゲーム機のアクセスガードを、著作権法上の「技術的保護手段」（2条1項20号）に含める<br />
・ゲーム機のアクセスガードの解除（マジコンの使用を含む）を、「技術的保護手段の回避」（30条1項2号）に含める<br />
・その結果、ゲーム機のアクセスガードの解除を「専ら」機能とする装置の譲渡・製造・輸入等に、刑事罰が科される（120条の2第1号）</p>
<p>という形で、マジコンの製造、販売、輸入といった行為が著作権法の規制対象になる可能性が高いと考えられます。</p>

<h2>３.不正競争防止法</h2>

<p>不正競争防止法においては、著作権法のように「コピーは規制するが、アクセスは規制しない」という原則があてはまらないこともあって、従来からアクセスコントロール技術が「技術的制限手段」（2条1項10号）として保護対象に含まれていました。</p>

<p>しかし、以前は技術的制限手段の回避機能「のみ」を有する装置の譲渡・輸出入が禁止されるにとどまっていたため、マジコンの販売などが禁止対象になるのかどうか、解釈上の問題がありました。マジコンは、ゲーム機のアクセスガード回避が主な用途であることが多いにせよ、それ以外の用途（自主制作ソフトの起動など）も無いとはいえないため、上記の「のみ」要件を充たさないのではないか、という疑問があったためです。任天堂などのゲームメーカーが東京地裁で販売差止めの判決を得たケースもあるものの（平成21年2月27日）、常に同様の結論が得られるとは限りませんでした。</p>

<p>この問題を解決するため、平成23年改正（同年12月1日施行）において、不正競争防止法2条1項10号が改正されたことにより、技術的制限手段の回避機能を有する機器であれば、他の機能があっても、その販売・輸入等を違反に問えるようになりました（ただし、他の機能も併有する装置の販売・輸入等については、回避の用途に供する目的でされる場合に限られています）。これによって、マジコンの販売等を原則違法に問えることになったといえます。なお、同改正では上記の違反行為が刑事罰の対象とされており（21条2項4号）、その意味でも規制が強化されたことになります。</p>

<h2>４.関税法</h2>

<p>マジコンは海外で製造されていることも多いようですので、マジコン流通阻止の実効性を確保するためには、税関での水際規制も重要といえます。</p>

<p>この点の対処として、関税法では平成23年改正（4月1日施行）によって、不正競争防止法2条1項10号の組成物品（すなわち、おおかたのマジコンを含むアクセスコントロール回避機器）が輸出入禁止品とされました（69条の2第1項4号、69条の11第1項10号）。</p>

<h2>５.まとめ</h2>

<p>ゲーム機のアクセスガードを解除するタイプのマジコンについては、上記のように、販売や輸入が差止および刑事罰の対象となり（不正競争防止法2条1項10号・21条2項4号）、さらに輸入禁止品とされたことで（関税法69条の11第1項10号）、流通の抑止はかなり期待できるようになりました。また、今後あり得る著作権法の改正によってマジコンの製造も刑事罰の対象となれば、さらに規制が強化されることになります。</p>

<p>このように、三つの法律による"マジコン包囲網"は出来上がりつつあるといえますが、本来の目的であるゲームの海賊版対策のために、これで十分かどうかは、今後の検証に待つこととなりましょう。考えられる課題としては、オンラインゲームが急速に普及し、従来の「ゲーム機＋パッケージソフト」型のゲーム市場を脅かす存在となりつつある現在においては、オンラインゲームの「海賊版」ないしそれに準ずるような不正利用についても、対策が必要となるかもしれません。</p>

<p>この点、オンラインゲームにログインするためのIDやパスワードを冒用する行為に対しては、不正アクセス禁止法（不正アクセス行為の禁止等に関する法律）違反を問うことができますが、それ以上にどのような規制が必要ないし有効なのか、オンラインゲーム特有の保護技術が前掲・文化審議会著作権分科会報告書（平成23年1月）において著作権の保護対象外とされていることは現実問題として妥当かなど、今後の議論の進展が期待されるところです。</p>

<p align="right">以上</p>
]]>
        
    </content>
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    <title>「新しいEUの個人データ保護規則」</title>
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    <published>2012-02-13T06:21:32Z</published>
    <updated>2012-02-13T06:24:38Z</updated>

    <summary>今年の1月25日、EUにおいて法案提出権を持つ欧州委員会が、欧州議会及び欧州理事...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
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        <category term="その他の実体法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="ＩＴ法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<p>今年の1月25日、EUにおいて法案提出権を持つ欧州委員会が、欧州議会及び欧州理事会の<a href="http://ec.europa.eu/justice/data-protection/document/review2012/com_2012_11_en.pdf"target="_blank">新たなデータ保護規則の法案</a>を正式に公表した。この新しいデータ保護規則（「新規則」）は、成立すれば<a href="http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:31995L0046:en:HTML"target="_blank">1995年EUデータ保護指令（95/ 46/ EC）</a>に代わるものである。個人情報保護に関連して先進的な内容も多々含んでおり、EU域内外へのインパクトが大きい。本コラムでは、新規則の法案概要を紹介する。</p>

<h2>１ 基本的権利性の確認</h2>

<p>新規則は、その前文の冒頭において、個人データの取り扱いに関する個人の保護は、基本的権利であることを確認し、<a href="http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:C:2010:083:0389:0403:EN:PDF"target="_blank">EU基本権憲章</a>8条(1)および<a href="http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:C:2010:083:0047:0200:EN:PDF"target="_blank">EU機能条約</a>16条(1)において、何人も自己に関する個人データを保護する権利を有する旨規定されていることに言及している。</p>

<p>このように、EUでは基本的な条約において、個人データの保護が基本的権利として明記されている。それが単なるお題目でなく、個人データの保護が実際に尊重されていることは、新規則に取り入れられようとしているルールをみてもよくわかる。</p>

<h2>２ 指令（directive）から規則（regulation）へ</h2>

<p>1995年のEUデータ保護指令は、その名のとおり「指令（directive）」であった。EUの法形式として、「指令」はそれ自体が直接適用されるわけではなく、EU加盟各国に対し、それぞれ「指令」に沿った国内法の制定を求めるルールである。国内法を制定する過程で各国に一定の裁量権が与えられる。それゆえ、「指令」の場合、EU域内において統一的なルールができるわけではない。そのため、EU域内の複数の国にまたがって個人データを扱う国際的な企業は、それぞれの国ごとに異なるルールに対応する必要があった。それに対し、法形式としての「規則（regulation）」は、EU域内全域において直接適用される。そのため、新規則が成立すれば、これまでEU域内の国ごとに様々であった個人データ保護のルールが統一化されることになる。従来、国ごとに担当政府機関への通知等を求められていた国際企業は、自社のメインオフィス所在地の国の担当政府機関にのみ通知等を行えばよくなる。</p>

<h2>３ EU域外の企業への適用</h2>
<p>たとえば、ある事業者が日本在住者を対象としてウエブサイトを運営しているとする。単にEU在住の個人もそのウエブサイトにアクセスできるというだけでは、その事業者は新規則の適用を受けない。さもないと、地球上のすべてのウエブサイトは新規則の適用を受けることになってしまう。</p>
<p>では、どのような場合に新規則が適用されるか。新規則によると、EU域内に在住する個人に対して商品あるいは役務の提供を行う場合であれば、EU域外の企業にも適用される。また、EU域内に在住する個人の行動をモニタリングする場合であれば、EU域外の企業にも適用される（3条2）。たとえば、クラウドコンピューティングを利用して、データをEU域外で処理・保存する場合でも、EU域内居住者への商品販売等を目的とする場合には、新規則の適用を受けることになる。</p>
<p>したがって、新規則は、日本の消費者に向けてネットビジネスを行っている域外企業に直接は適用されない。ただし、そうであるからといって、そのような企業が、新規則を単によそごととして片づけるわけにはいかないと考えられる。その点は後述する。</p>

<h2>４ 対象はIPアドレスやクッキーも含む「個人データ」</h2>

<p>新規則は、「個人データ」を、「データ主体」に関する情報を意味するものと定義している（4条(2)）。その「データ主体」の定義中には、「位置データ」や、IPアドレスやクッキー等を意味する「オンライン上の識別子」が明記されている（4条(1)）。氏名や住所などの伝統的な意味での個人識別性は要求されていない。このため、クッキーに紐づけられた情報も「個人データ」に該当する。現時点での一般的な解釈に基づく日本の個人情報保護法の適用範囲よりも、適用対象が広い。</p>

<h2>５ 「同意」に関するルール</h2>

<p>個人データの取扱いが合法化されるためには、データ主体が、特定の目的のために本人の個人データを取り扱うことに同意した場合であるか、あるいは新規則その他のEUの条約等に規定されている正当化事由のいずれかを満たした場合でなければならない。そのような正当化事由としては、たとえば、データ主体が当事者である契約を履行するために必要である場合、データ主体の重大な利益を保護するために必要である場合、事業者が追求する正当な利益を目的とするために必要であって、その利益を上回る個人データの保護を要求するデータ主体の利益または基本的権利や自由が存しない場合などがある（6条1）。最後の正当化事由は、特にデータ主体が子ども（18歳未満と定義されている〔4条(18)〕）の場合を念頭に置いている。</p>

<p>個人データの取り扱いに関するデータ主体の同意は、推定的なものでは足りず、明示的なものでなければならない（4条(8)）。そのような同意があったことについては、事業者が立証責任を負う（7条1）。データ主体は、いつでも同意を撤回する権利を有する（7条3）。データ主体と取扱事業者の地位に重大な不均衡がある場合には、同意があってもそれだけではデータの取り扱いは正当化されないとする規定もある（同(4)）。「重大な不均衡（significant imbalance）」は抽象的な概念であり、新規則にその定義があるわけではない。しかしながら、新規則の前文の中では、その例の１つとして、労働者の個人情報を雇用者が保有している場合をあげている。</p>

<p>2011年末に出回った新規則の草稿では、商業目的のダイレクトマーケティングのための個人データの取り扱いは、データ主体が、そのようなマーケティング用に個人データを取り扱うことに同意していた場合にのみ合法になるとしていた（草稿5条2）。しかし、正式に公表された法案からは、この条項は削除されている。</p>

<h2>６ センシティブデータの取扱制限</h2>
<p>いわゆるセンシティブデータの取り扱いは、本人の同意があった場合その他法定の例外がある場合以外は行ってはならない。センシティブデータとは、人種、民族的出自、政治的意見、宗教または信条、労働組合員たる資格を明らかにすることになる個人データ、遺伝ないし出生前のデータ、健康または性生活、犯罪歴又は関連する安全対策をいう（9条）。</p>

<h2>７ 「忘れられる権利」「データ・ポータビリティの権利」</h2>

<p>データ主体は、一定の要件のもと、「忘れられる権利」、すなわち、自分に関する情報の消去を求める権利を有する（17条）。条文では、特に子ども（先述のとおり18歳未満と定義されている）のときに掲載した情報についてこの権利が認められる旨強調している（17条1）。これにより、たとえば、子どものときに安易にSNSに載せた情報のために、就職のときに不利益を被るといったことを防ぐこと等が想定されている。</p>
<p>データ主体は、一定の要件のもと、自己のデータをある事業者から受け取り、別の事業者に移行することができる（「データ・ポータビリティの権利」18条）。これにより、たとえば、1つのSNSから他のSNSにデータを移行することが容易になる。</p>

<h2>８ プロファイリングに基づく評価を拒む権利</h2>

<p>人に法的影響を及ぼし、あるいは重大な影響をあたえる評価であって、その人に関する個人的な側面を評価したり、その人の労働能力や経済状態、位置、健康、個人の嗜好、信頼性または行動を分析・予想することを意図した自動処理のみに基づく評価について、一定の例外的場合を除き、人はその対象になることを拒む権利を有する（20条）。</p>

<h2>９ 「データ侵害」の報告</h2>

<p>個人データの不法な消去、改変、漏えい等につながるセキュリティの侵害（data breach）があった場合、事業者は、担当の政府機関に対して可能であれば24時間以内に通知する義務を負う。</p>

<h2>１０ 第三国への個人データ移転の制限</h2>

<p>1995年EUデータ保護指令25条が規定していた第三国への個人データ移転の制限と同様の規定は、新規則にも含まれている。すなわち、EU域内から域外の第三国等への個人データの移転は、欧州委員会が適切な保護レベルにあると認めた国等に対してしか認められない。</p>

<h2>１１ 高額の罰金</h2>
<p>重大な規則違反があった場合、担当政府機関は、100万ユーロあるいは法人の場合にはその法人の全世界的な年間売り上げの2%を上限とする罰金を課すことができる。重大な規則違反について、<a href="http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/12/41&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en"target="_blank">EUのプレスリリース</a>では、個人の同意無しに又は他の法的根拠無しにセンシティブデータを処理する場合を例としてあげている。</p>
<p>2011年末に出回った新規則の草稿では、罰金の対象となる法人の全世界的な年間売り上げの5%を上限とする規定もあったが、上限は2%に下げられている。</p>

<h2>１２ 日本への影響等</h2>

<p>以上、新規則のごく一部についてその概要を紹介した。</p>
<p>新規則は先進的な内容を多々含んでおり、今後の法案審議がどのようになるか、現時点では不明である。ただし、これまで2年以上にわたり、主要な利害関係者との協議や、大掛かりなパブリックコメントを2回行ってきた経緯もある（パブリックコメントの期間は、それぞれ約5か月間と2.5か月間）。2011年末に流布された新規則の法案の草稿には、「第56版」という記載があり、それまでのプロセスを踏まえて何度も書き直されてきたことを窺わせる。このような慎重な討議のプロセスを経ていることに照らすと、先進的な内容ゆえに成立は難しいと安易に予測することはできないように思える。新規則は、成立した場合、成立時から2年で施行される。</p>
<p>前述のとおり、新規則は、日本の消費者向けにネットビジネスを行っている企業に直接は適用されない。とはいえ、かつて1995年EUデータ保護指令が日本において個人情報保護法制定の原動力の1つになったように、成立した場合、その影響力は無視できない。さらに、新規則の適用を受けるグローバル企業が、日本でもEUと同レベルの運用を行う可能性もある。そのような企業との競業を想定すると、新規則の適用を直接は受けない日本企業も、EUのルールを単なるよそごととして片づけることはできないであろう。</p>

<p align="right">以上</p>]]>
        
    </content>
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    <title>「TPPが特許に与える影響～特に医療・医薬品を中心に」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000354.html" />
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    <published>2012-01-25T07:23:32Z</published>
    <updated>2012-01-30T06:43:04Z</updated>

    <summary>2011年11月12日、野田内閣総理大臣がホノルルAPEC首脳会合においてTPP...</summary>
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        <name>kottolaw</name>
        
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        <category term="その他の知的財産法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<p>2011年11月12日、野田内閣総理大臣がホノルルAPEC首脳会合においてTPP（環太平洋戦略的経済提携協定）の交渉参加を表明して以来、TPPの各論点についてはさまざまな観点から議論がなされているところです。TPPにおける米国政府による知的財産の要求項目のうち、著作権に関する問題点は、福井健策によるInternet Watch内のコラム「<a href="http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20111031_487650.html" target="_blank">TPPで日本の著作権は米国化するのか ～保護期間延長、非親告罪化、法定損害賠償</a>」と<a href="http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20120120_505930.html" target="_blank">同続編のQ&A</a>をご覧頂き、今回のコラムは、その他の知的財産とTPP、とりわけ医療・医薬品の特許に関する議論を中心に、ポイントを絞って、内容を簡単にご説明いたします。</p>

<p>なお、本コラムは、米NGOより公開された「TPPにおける米国政府の知財要求項目」（以下、「知財要求項目」という。PDFは<a href="http://keionline.org/node/1091" target="_blank">こちら</a>のページから）を基に記述をしております。また、国境なき医師団「どのようにＴＰＰは医薬品アクセスに脅威を与えるか」（以下、「MSF意見書」という。PDF（英文）は<a href="http://www.doctorswithoutborders.org/press/2011/MSF-TPP-Issue-Brief.pdf" target="_blank">こちら</a>）をも参考にしております。<p>

<h2>■医療方法の特許性について</h2>
<p>知財要求項目では、人間または動物の手術方法、治療方法、診断方法に関する発明に、特許性を認めなければならないとしております（知財要求項目8. 2条(b)）。</p>

<p>現在、日本の特許法の審査基準においては、人間が対象に含まれないことが明らかであれば、動物の手術方法・治療方法・診断方法については、特許の対象となるとされております。しかしながら、人体の存在を必須の要件とするもの、具体的には、人間を手術する方法、人間を治療する方法、人間を診断する方法に関する発明は、「産業上の利用可能性」（特許法29条1項柱書）がないとして、特許を受けることができません（特許庁審査基準第Ⅱ部1. 2. 1）。ただし、医療機器、医薬それ自体、医療材料の製造・処理方法（細胞の調製、加工による製品・製剤化）、医療機器の作動方法は、特許の対象になります。</p>

<p>なお、諸外国においては、アメリカは手術方法、治療方法、診断方法ともに特許の対象となるとし、欧州においては、手術方法、治療方法、診断方法の一部は特許の対象になりません（諸外国の法制については、平成20年11月25日付け特許庁「我が国と各国の特許制度比較～医療分野～」（PDFは<a href="http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kyousou/sentan/dai1/siryou8.pdf" target="_blank">こちら</a>）（知的財産戦略本部　先端医療特許検討委員会資料））。</p>

<p>日本で医療方法の特許性が認められていなかったのは、従来、医学研究を営利目的の開発競争に巻き込ませるべきではないという政策的理由、人の生存や尊厳にかかわる人道上の理由などにより、特許による独占を認めるべきではないと考えられているためです。特に、医療方法に特許を認めると、緊急の患者が病院に運び込まれてきたときに、治療を行う医師が特許権者に許諾を得なければ命が助からないという状況が発生しうるのではないかと言われています。</p>

<p>この懸念への対処としては、医療方法に特許を認めた上で、医師の行為について例外を設けるという方法もあります。たとえば、医療方法に特許が認められているアメリカにおいても、医師が侵害に該当する医療行為を行った場合には、その医師や医療行為に関与する関連医療機関には差止請求や損害賠償請求ができないと規定されております（米国特許法287条c ）。</p>

<p>なお、ここでいう「医療行為」には、装置、製造物または組成物に関する特許の使用、組成物の使用に関する特許の実施、バイオテクノロジー特許の実施が含まれませんので、全ての医師等による医療行為が除外されるわけではなく、また、医師等が行う医療行為でない場合には特許権者の許諾が必要となります。</p>

<p>医療方法に関する特許を認めるかどうかにつき、特許を認めることによるインセンティブによる開発の促進、大学の医療技術に対する投資回収、重複研究の回避などを考えると、医療方法に特許を与えることにも一理あるように思います。また、現状の文言上は、「産業上利用することができる」とのみ規定されており、人体を必須の構成要素としない発明、たとえばiPS細胞などの研究に関する発明は特許となりうるにもかかわらず、人体に関する部分だけを殊更「産業上の利用可能性がない」として、特許として認めないことは一貫していないと考えられます。一方で、医療行為に対する萎縮効果の他、欧州は医療方法特許がないにもかかわらず国際競争力があること、医師や研究者のインセンティブは特許制度を使わずとも守れるものではないか、医療費の高騰の可能性などの懸念の声があるのも確かです。なお、2009年5月29日付け知的財産戦略本部　知的財産による競争力強化専門調査会　先端医療特許検討委員会報告書「先端医療分野における特許保護の在り方について」（PDFは<a href="http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kyousou/houkoku/090529/090529_tokkyohogo.pdf" target="_blank">こちら</a>）においても、医療方法に特許性がないという基本方針は維持されています。</p>

<p>いずれにせよ、仮に、知財要求項目のとおり医療方法に特許を認める方向となった場合においても、医療現場に混乱を与えるようなものではあってはなりません。医療方法に特許性を認めるとしても、権利制限規定を設けると共に、現場にいる医療関係者の実態を把握し、その権利制限規定が実際の医療にあたって問題が発生しないよう適切な内容となっているかを検討することが必要です。</p>

<h2>■特許期間の延長の可能性の有無</h2>
<p>著作権と同様、TPPにより特許の期間が延長されるかのような議論もみられます。しかしながら、知財要求項目のうち、著作権は著作者の死後70年への延長要求が明記されているものの（知財要求項目4. 5条）、特許には期間に関して言及する記述はありません。アメリカにおいては、著作権の保護期間の原則は著作者の死後70年となっておりますが（アメリカ著作権法302条）、特許法については、日本と同じく出願から20年です（アメリカ特許法154条(a) (2) ）。そのことから、特許について、TRIPs協定33条で保護すべきと定められている20年という期間を大幅に超えて各国に特許期間の延長を要求することは、現時点では想定されていないように思われます。</p>

<h2>■有効成分が公知な医薬の特許性</h2>
<p>知財要求項目8. 1条において、既知の物を使用した新しい構造、使用又は方法について、たとえその発見が、その物について既に知られた効能を促進するものでなくても、特許性を認めるよう要求しております。もし、この規定を導入した場合は、古い医薬品の新しい使用や、物の効能に大きな効果を与えないような新構造であっても特許性を認めることになり、実質的に同じものを特許で再度保護するものではないかという批判もあります。しかし、用途発明（ある物の未知の属性を発見し、この属性により、そのものが新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明）に関していえば、有効成分が公知であっても医薬用途が新規であるものについては、現在の日本の運用でも、特許要件である新規性が認められております（特許審査基準第Ⅶ部2. 2. 1. 1 (3) ）。たとえば、抗菌剤の有効成分として知られている化合物Ａにつき、「化合物Ａを有効成分とするアルツハイマー病治療薬」との発明には、拒絶理由がないとされています。したがって、物の発明（用途発明）に関して言えば、大きな影響はないかもしれません。</p>

<p>知財要求項目8. 1条の規定の記載は必ずしも明確ではありませんが、現在も、そしてこれからも、医薬品業界においてある物質が、本来特許が切れている用途等であるにもかかわらず永遠に特許の対象となるような状況を防ぐために（MSF意見書では、「evergreen」と表現されています）、その用途変更等が当業者にとって容易であるかどうかを特許庁が慎重に判断しているかを監視することが必要です。</p>

<h2>■臨床実験データの排他的独占権</h2>
<p>特許の議論とは少し離れますが、臨床実験データの排他的独占権についての議論があります。ジェネリック医薬品の審査においては、現在、臨床試験は不要です。これは、ジェネリック医薬品は、新薬の臨床使用経験を踏まえたものであるからです。この臨床実験データについては、莫大な投資が行われているため、特許の有効期間とは別の議論として、臨床実験データの独占権を与える動きがあります（MSF意見書によれば、アメリカの機関（Pharmaceutical Research and Manufacturers of America（PhRMA））が、臨床実験データの排他的独占権を強く主張しているようです）。アメリカにおいては、臨床実験データに関して、排他的独占権が認められております。</p>

<p>現状の日本はどうでしょうか。現在、「臨床実験データの排他的独占権」という権利はありません。しかしながら、日本では、薬事法上の医薬品の再審査期間が結果として医薬品の試験データを保護する期間として機能しております（薬事法14条の4）。ここで、医薬品の再審査制度とは、新薬について、承認後一定期間（原則8年。薬食発第0401001号）が経過した後に、企業が実際に医療機関で使用されたデータを集め、承認された効能効果・安全性について、再度確認する制度です。この再審査期間中に承認申請される後発医薬品は、新医薬品と同等の申請資料が必要とされております。つまり、ジェネリック医薬品を再審査期間中に承認申請をしようとするならば、新医薬品と同等の申請資料、つまり承認申請の臨床実験データを集めるために自ら治験（3~7年かかります）を行わなければならず、「低価格の医薬品」であるジェネリック医薬品として発売することはできなくなります。そのため、再審査期間が終了するまでは、特許有効期間満了後すぐにジェネリック医薬品を発売することを目的として承認申請することもできず、さらに言えば、特許有効期間が満了していたとしても承認申請が実質的にできないことになります。このように、再審査期間は結果として新医薬品の臨床実験データを保護する期間となっております（平成18年6月8日付け知的財産戦略本部「知的財産推進計画2006」47頁参照）。結果として、ジェネリック医薬品を発売するためには、その特許が切れていることの他、再審査期間が経過していることが必要になります。</p>

<p>現状を前提に、TPP加入により、日本にも、「臨床実験データ独占権」を設置するよう求められるでしょうか。知財要求項目9. 2条によれば、医薬製品に関するデータの保護に関する条項が、知財要求項目9. 3条によれば、医薬製品の特許との関係に関する条項が挿入される旨の規定がありますが、現時点で詳細な内容については記載されておりません。しかしながら、それがどのような内容になるかの参考として、米韓FTAがあります（米通商代表部HPによる米韓FTA条項は<a href="http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/korus-fta/final-text" target="_blank">こちら</a>）。そして、知財要求項目9. 2条に相当する米韓FTA 18. 9条1項および18. 9条2項では、実験データの独占権（data exclusivity）について、以前承認されたことがあるか否かなどの場合を分けて、化学物質等の製品の医療データまたは証拠について、一定の範囲・期間で、データ等提出者の事前の同意なく使用できないとしています。そのうち、一例を挙げると、新医薬品（医薬品使用としてその国で以前承諾を受けた化学物質を含んでいない製品）の市販承認の条件として、国が、その新医薬品の開発者が相当の労力をかけて作成した安全性・効率性に関するデータ等の提出をさせた場合またはデータ等の提出を許可した場合には、少なくとも市販承認から5年間は、データ提出者の事前の承諾なく、その新医薬品のデータ等に基づく同種の製品（すなわち、後発医薬品）を販売させてはならない旨の規定を定めています（米韓FTA 18. 9条1(a) ）。</p>

<p>米韓FTAの規定では現状の日本のような「事実上のデータ保護」は不十分であり、アメリカのような「独占権」という形の「権利」を求められる可能性もあります。しかしながら、米韓FTAの文言それ自体は、「権利を付与せよ」という条項ではなく、「他人に対してデータ使用を許可しない」という規定方法であるので、私見では、現状の日本の再審査期間のような規定でも問題はないと考えられます。なお、仮に再審査期間という制度による事実上の独占ではなく、「独占権」を与える必要があると判断されるならば、特許とは別の新しい独占権を創出する必要があります。この場合、データに積極的な権利を付与することから、その権利の内容、範囲等について、予想外に広範囲な権利が付与され、後発医薬品の承認が遅れる事態にならないよう、注意しなければなりません。</p>

<h2>■新規性喪失の期間（グレース・ピリオド）について</h2>
<p>先願主義の下では、新規性の判断基準は、「出願前」を基準として判断します（特許法29条）。ただし、それをそのまま適用すると、大学教授が学会などで発表するにより新規性が喪失する結果、学会での発表や博覧会の出品等に抑制的になる可能性があります。その弊害を取り除く必要があるため、一定の期間に限り、例外を認める条項を定めております。この期間を「グレース・ピリオド」と呼びますが、知財要求項目8. 8条(b)では、発明の公表から特許出願するまでに認められるグレース・ピリオドの期間を12ヶ月とすることを要求しています。</p>

<p>日本では、グレース・ピリオドに関する規定は特許法30条に定められておりますが、同条は、平成23年改正が行われております（平成24年4月1日から施行）。グレース・ピリオドの内容の前に、平成23年改正の説明をいたしますと、改正前30条では、特許を受ける権利を有する者が、試験、刊行物発表、特許庁長官指定の学術団体による研究集会での文書発表などの限定列挙された場合に新規性が喪失された場合において、6ヶ月以内に出願をした場合には、その開示では新規性は喪失しないとされていました。しかし、平成23年改正により、グレース・ピリオドの対象範囲については限定列挙をはずし、「特許を受ける権利を有するものの行為に起因」したものと網羅的にすべて対象とし、6ヶ月以内に出願をした場合には新規性を喪失しないとされました（なお、米国においても、2011年9月の特許法改正により、グレース・ピリオドの規定である102条(b) が改正されました。改正法では、基本的に同一者の同一発明による開示や公表には1年の猶予期間があるとされております）。このように、日本ではグレース・ピリオドが6ヶ月であるため、仮に知財要求項目に沿う形とするならば、その期間が12ヶ月に延長される可能性があります。</p>

<p>グレース・ピリオドの延長は、発明者の行為に起因したものまたは意に反して公知となったものであれば、その発明者にとっては「新規性を喪失せずに出願ができる期間が長くなる」ことを意味するため、より発明者に有利となります。また、アメリカとグレース・ピリオドが同一になることで、アメリカとの産学連携がしやすくなるという意見もあります。一方で、延長により特許の見通しが現状よりさらに不明確になることからビジネスに混乱を与える可能性があるという意見もあり、12ヶ月という期間延長が妥当か、慎重に検討しなければなりません。</p>

<h2>■まとめ</h2>
<p>冒頭に紹介したＭＳＦ意見書は、日本においてTPPに加入することに対する危機への警鐘を鳴らしたものではなく、あくまでTPPに加入することにより、日本を含め、知的財産、特に医薬品に関する特許を必要以上に保護するあまり、途上国における安価な医薬品へのアクセスの促進が阻害される可能性があることに警鐘を鳴らすものです。この意味で、同じ知的財産権の分野であっても、直接、TPP加入により日本の制度をドラスティックに変えようと試みる著作権とは異なる視点を与えてくれるものです。現状、特許に限定していえば、そして、（現時点では全容は明らかではありませんが）日本で導入することだけを考えれば、著作権ほど現状からドラスティックな変更がなされる可能性は少ないと考えられます。しかし、逆にいえば、特許に関し、日本がTPPに加入する必要性があるのか、という疑問もあります。特許はあくまでも知的財産項目の中の一つです。特許権者と活用のバランスが崩れないように注意しながら、その他の知的財産項目、ひいてはその他の交渉項目との兼ね合いも考えて、日本および環太平洋の経済圏にとって何が最善かを考えて交渉していく必要があります。</p>

<p align="right">以上</p>

]]>
        
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    <title>（出張編） Internet Watch 「TPPで日本の著作権は米国化するのか～続報：知的財産Q&amp;A編」</title>
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    <published>2012-01-20T11:06:12Z</published>
    <updated>2012-01-25T11:09:45Z</updated>

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    <title>「複製権侵害罪における『依拠性』の要件」</title>
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    <published>2011-12-13T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-13T08:13:14Z</updated>

    <summary> ■はじめに 著作権法の本の「複製権」の項目を開くと，「複製」の要件は「依拠性」...</summary>
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        <name>kottolaw</name>
        
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        <category term="著作権法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<br/>
<h2>■はじめに</h2>

<p>著作権法の本の「複製権」の項目を開くと，「複製」の要件は「依拠性」と「同一性」である，という説明が書かれています。そして，その根拠として，昭和53年9月7日最高裁第一小法廷判決を引用しています。ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件判決と呼ばれている，著作権の本を読んだことがある方は誰でも知っている有名な判決です。</p>
<p>もっとも，この判決は知っていても，この事件で著作権を侵害するとして訴えられた「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」という曲は（昭和の名曲なのですが意外と）聴いたことがないという方も少なくないようです。そういう方は，一度ぜひお聴きになってみて（ちなみに私が好きなのはアイ・ジョージです），訴えた側の「The Boulevard of Broken Dreams」も聴き比べてみてください（ちなみに私は，定番ではありますがやっぱりトニー・ベネットやナット・キング・コールが好きです）。</p>

<p>話を元に戻しますと，ここで言っている「依拠性」の意味について考えてみましょう。</p>


<h2>■依拠性についての説明</h2>

<p>例えば特許権では，発明の技術的範囲に属する技術的思想を実施すれば，例え発明のことを知らなかったとしても，その客観的事実だけで特許権の侵害であると判断されます。ところが，著作権については，ある著作物と同一性のある著作物を作ったから複製権の侵害になるとは考えません。他の著作物（Ａ）と同一性のある作品（Ａ'）ができたとしても，それが他の著作物（Ａ）に依拠することなく，独自に創作活動を行った結果なのであれば，著作権の侵害とは考えないわけです。このような場合にまで著作権の侵害だとしてしまうと，自由な創作活動ができなくなってしまうというのがその理由だろうと思います。つまり，「依拠性」というのは，「独自性＝オリジナリティがないこと」と置き換えることもできます。</p>
<p>ところで，この「依拠性」は，他人の著作物をスキャンしたり，トレースしたり，ダウンロードしたりする場合は，依拠している（オリジナルでない）ことが誰の目にも明らかですから，そんなにややこしいことはありません。</p>
<p>ところが，自分の好きな曲のフレーズを利用する場合のように，「複製＝コピー」する行為が目に見えない形で行われる場合は，ちょっと厄介です。というのは，出来上がった作品（Ａ'）が，他人の作品（Ａ）に依拠したものなのか，依拠せず，たまたま似てしまったオリジナルの作品なのかは，作曲をした人の頭の中を覗いてみないとわからないからです。</p>
<p>そんなこともあり，どういう場合を「依拠した」というのかという，「依拠性」の具体的な意味については，微妙に説明が分かれています。</p>
<p>例えば，&#9312;既存の著作物の表現内容の認識と&#9313;これを自己の作品に利用する意思の２つに分けて説明をする方もいますし，既存の著作物を利用する事実があればいいのであって，&#9312;の「認識」も，&#9313;も必要じゃないという方もいます。特に見解が分かれるのは「無意識の依拠」という場合です。本人はオリジナルの曲だと思っているのだけど，実は記憶の底に眠っていた作品が浮かんできたというように，「依拠」についての自覚がない場合も依拠性の要件を満たすと考えるのかどうかです。</p>

<p>「依拠性」については様々な見解がありますが，例えば以下の２つを考えてみましょう。</p>
<p class="subcontent">【Ａ説】&nbsp;&nbsp;依拠性を&#9312;既存の著作物の表現内容の認識と&#9313;これを自己の作品に利用する意思２つに分けて説明をする見解<br />
【Ｂ説】&nbsp;&nbsp;既存の著作物を利用する事実があればいいという見解</p>
<p>【Ａ説】の場合は，上述のような場合は依拠性の要件を満たさないということになるでしょう。他方，【Ｂ説】の場合は，依拠性の要件を満たすということになります。</p>

<h2>■刑事法の視点</h2>

<p>さて，ここで少し視点を変えてみましょう。</p>

<p>著作権法は罰則といって，例えば著作権を侵害した人は懲役刑といって刑務所送りになる場合もあるぞ，という規定も盛り込まれています。つまり，著作権法は，殺人罪や放火罪などと一般的な犯罪について定めている刑法の特別法（特別刑法）という顔も持っているわけです。著作権法は法改正が頻繁に行われていますが，罰則についても，刑を重くする法改正がなされていますし，少し前には親告罪の見直しが議論されたこともあります。本稿では，刑罰法規の，つまり犯罪の要件としては，「依拠性」はどのような解釈になるのかを考えてみたいと思います。</p>

<h2>■刑事法における客観的要件と主観的要件</h2>

<p>犯罪の要件は，原則として客観的要件と主観的要件に分けられます。人にケガを負わせる，傷害罪という犯罪について考えてみましょう。</p>
<p>傷害罪について定めている刑法204条には</p>

<p class="subcontent">人の身体を傷害した者は、<br />
１５年以下の懲役又は５０万円以下の罰金に処する。</p>

<p>と書いてあります。この規定から，「人の身体を傷害した者」というのが傷害罪の要件だということがわかります。「人」ではなく「動物」を傷害しても（別の犯罪にはなり得ますが）傷害罪にはならないわけです。これを「客観的要件」といいます。</p>

<p>では，人を傷害した者は必ず傷害罪になるかというと，そうではありません。例えば人に向かって石を投げつけて怪我を負わせれば傷害罪ですが，誰もいないと思って草むらめがけて石を投げつけたらたまたまその陰にいた人に命中してしまい，けがを負わせてしまったとしたら，傷害罪にはなりません。なぜなら，この場合，石を投げつけた人に，自分が「人の身体を傷害した者」にあたるという自覚がなく，従って「わざとやった」わけではないからです。このように，傷害罪はわざと，つまり自分が「人の身体を傷害した者になる」とわかっている場合にしか成立しないのです。これを「故意」といいます。「わざとやった」という意味に捉えてもいいかもしれません。</p>
<p>先ほどの例のように，「故意」がなく，つまり「わざとやった」わけではないけど人にけがを負わせてしまったという場合には，―「過失傷害」という別の犯罪にあたるかどうかは問題になりますが―傷害罪にはならないわけです。この「故意」を「主観的要件」といいます。</p>
<p>損害賠償を請求するような民事法の世界では，「故意」（わざとやった場合）も「過失」（わざとではないけど軽率にやってしまった場合）も同列に扱われます。ですから，故意なのか過失なのかはさほど厳密には議論されません。客観的に著作権を侵害する行為をしてした者に対して，故意があった（わざとやった）かどうかはわからないけど，少なくとも過失はあった（軽率にもやってしまった）でしょう，損害賠償責任を負う，という結論になるわけです。</p>
<p>ところが，刑事法の世界では，故意の場合と過失の場合は全く別の犯罪として扱われます。そして，著作権法には，過失の場合を処罰する規定はありません。ですから，故意があれば有罪，故意がなければたとえ過失があっても無罪ということになります。故意の有無は正に運命の分かれ道というわけです。</p>

<h2>■複製権侵害罪の客観的要件と主観的要件</h2>

<p>著作権侵害の罪（著作権侵害罪）について定めた規定はいくつかありますが，その中の119条1項を見てみると，（ちょっと長いので簡略化しますと）こう書いてあります。</p>

<p class="subcontent">著作権を侵害した者は、<br />

10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。</p>

<p>ここでいう「著作権」は，複製権や演奏権などの支分権のことですから，複製権侵害の罪（複製権侵害罪）については，「複製権を侵害した者」というのが要件ということになります。これが客観的要件ですね。そして，故意，つまり自分が「複製権を侵害する者になる」とわかっていて「わざとやった」ということが要件ということになります。これが主観的要件です。</p>

<h2>■複製権侵害罪における「依拠性」の要件</h2>

<p>さて，「複製権を侵害した者」の「複製」の要件が「依拠性」だと考えると，少しおかしなことが出てきます。</p>
<p>「依拠性」を&#9312;既存の著作物の表現内容の認識と&#9313;これを自己の作品に利用する意思の２つに分ける，上述の【Ａ説】の考え方を前提としてみましょう。この場合，主観的要件は「自分に&#9312;既存の著作物の表現内容の認識と&#9313;これを自己の作品に利用する意思があることをわかっていること」ということになります。でも，「自分が『ある事実を認識している』とはわかっていなかった」，ということは，要するに「ある事実を認識していなかった」ということに他ならないのではないでしょうか。また，「自分に『ある意思がある』とはわかっていなかった」ということは，要するに「ある意思」はなかった，ということになるのではないでしょうか。何だかおかしいように思います。</p>

<p>では，既存の著作物を利用する事実があればいい，だから「無意識の依拠」でも依拠性の要件を満たすのだという，上述の【Ｂ説】の考え方ではどうでしょう。この考え方では「客観的要件」としての依拠性は，「既存の著作物を利用する事実」ということですから，主観的要件は「自分が既存の著作物を利用していることをわかっていること」ということになります。とすると「無意識の依拠」でも依拠性の要件を満たすという結論は変ですよね。「無意識のうちに依拠していることをわかっていること」が主観的要件になるという背理になってしまいます。</p>
<p>どうしてこんな変な結論になってしまうのでしょう。それは，【Ａ説】の場合は，客観的要件であるはずの「依拠性」という客観的要件の中に「認識」や，「意思」といった主観的な要素を入れ込んでしまったからです。逆に，【Ｂ説】の場合は，「依拠性」の中身を「既存の著作物を利用する事実」という形で「認識」や「意思」といった主観的な要素を除外している点はよいのです。ただ，この見解は，無意識の依拠も依拠として認めて，そのまま複製権侵害の成立も認めてしまいます。とすると，「他人の著作物を利用している」ということをわかっていない人も複製権侵害になってしまうという問題があるように思います。</p><br />

<p>ではどう考えたらいいのでしょう。お前はどう考えるのだ，という質問が飛んできそうですが，字数もかなり多くなってしまいましたので，この続きは次回に，ということにさせていただきます。<br />
・・・と，これで終わっては申し訳ないので，最後にもう一言。</p><br />

<p>既存の作品（Ａ）と同一性のある作品（Ａ'）が創作されたという場合，<br />
　　&#9312;	Ａのことを知っていて，これを真似してＡ'を創作した場合<br />
があります。これが複製権侵害になることはもちろんです。他方，<br />
　　&#9313;	Ａのことを全く知らず，オリジナルでＡ'が創作された場合<br />
これが複製権侵害にならないことも，異論のないところだと思います。</p>
<p>問題は，</p>
<p class="subcontent">&#9314;	Ａのことは知りつつ，無意識のうちにＡ'を創作した場合<br />
&#9315;	Ａのことは知っていて，意識もしていたが，自分の思想感情を表現するためにはどうしてもＡ'にならざるを得なかった場合</p>
<p>ではないでしょうか。この&#9314;及び&#9315;の場合に複製権侵害罪が成立すると考えるかどうかにが，「依拠性」を含めた著作権侵害罪の客観的要件，主観的要件の捉え方に影響してくるだろうと思います。&#9315;は，自分の思想感情を表現するためにどうしても既存の作品と同一性のある表現にならざるを得ないという場合にも，その表現は行ってはならないと考えるのかどうか，という問題にもつながります。パロディやコラージュといった作品に対する考え方にも影響してくるように思います。複製権侵害罪の場合，これに違反すると刑務所送りにもなりかねない問題ですから，慎重に考える必要がありますね。</p><br />

<p>今回はここまでで筆を置くことにいたします。</p>


<p align="right">以上</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>（出張編） Internet Watch 「TPPで日本の著作権は米国化するのか ～保護期間延長、非親告罪化、法定損害賠償 」</title>
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    <published>2011-10-30T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-25T11:04:02Z</updated>

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        <name>kottolaw</name>
        
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    <title>「東京都暴排条例の&quot;押さえどころ&quot;～契約時の対処法～」</title>
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    <published>2011-09-29T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-13T07:52:33Z</updated>

    <summary> 東京都暴力団排除条例が、10月1日に施行されます。芸能界絡みの最近の報道なども...</summary>
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        <name>kottolaw</name>
        
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        <![CDATA[
<p>東京都暴力団排除条例が、10月1日に施行されます。芸能界絡みの最近の報道などもあって、条例の存在に対する認知度は高まっており、条例対応に関心をお持ちの企業も多いと聞きます。</p>

<p>こんにち、暴力団との交際発覚が非常に強い社会的非難を招きうることから、企業のリスク管理にとって、暴力団との関係遮断は避けて通れない課題といっても過言ではありません。しかし一方で、知らず知らずのうちに暴力団と関わってしまうことを警戒するあまり、取引に際して慎重になりすぎ、健全なビジネスにまで支障を来たしてしまっては困ります。</p>
<p>そこで企業としては、TVや週刊誌の報道にあまり振り回されず、暴排条例によって「何を、どの程度まで」行うことが求められているのか、条例の規定に沿って理解いただくことが重要です。本稿ではその一助とすべく、条例施行前の「直前対策」として、条例の基本的なコンセプトを要約したうえで、業種を問わずあらゆる企業にとって重要な、「契約」に関する条文をピックアップして解説したいと思います。</p>

<h2>1. 都条例のコンセプト</h2>

<p>東京都暴排条例は、従来からの「三ない運動」（「暴力団を恐れない、資金を提供しない、利用しない」）に加え、「暴力団と交際しない」という基本理念のもと（3条）、暴力団を公共事業の契約（建設・土木工事の請負契約など）のみならず民間契約からも排除し、それによって暴力団存続の要因となっている資金源を断つことで、暴力団の消滅をめざすという目的をもっています。</p>
<p>この目的を実現するためには、都や警察が暴力団を直接取り締まるだけでなく、民間の個人や事業者が、暴力団と契約や取引をしないよう、自主的に事前予防や事後的な関係遮断といった対策を講ずることが不可欠です。</p>
<p>都条例では、そのような民間の取り組みを促進しつつも、都民や事業者が過大な義務や罰則を科せられることのないように、都民や事業者の義務を努力義務にとどめたり（15条～20条）、違反があってもいきなり公表せずに勧告という軽度の措置を経るなど（27条・29条）、一定の配慮を盛り込んでいます。したがって、一般の都民や事業者の方々は、都条例を「負担」と考えるよりも、むしろ暴力団に利用されることを防ぐための「武器」あるいは「味方」と考え、積極的に活用するという姿勢で臨むことが期待されているといえましょう。</p>

<h2>2. 重要条文の解説（契約時の対処について）</h2>

<p>上記のコンセプトをふまえて企業に要請されるのは、一言でいえば「暴力団と契約や取引をしないこと」ですが、より具体的に何をすべきかは、都条例の条文をふまえて理解する必要があります。</p>
<p>条例の本体は34か条あり、早めに一度は全文に目を通していただくのが望ましいですが、本稿では、業種を問わずあらゆる企業に適用される、「契約」に関する重要条文として、契約時に相手方が暴力団関係者でないことを確認する努力義務（18条1項）、契約書に暴排条項を盛り込む努力義務（18条2項(1)号）、の二つに絞って解説いたします。</p><br />

<table align="right" border="1" width="500" cellspacing="1" bordercolor="#666666">
	<caption><strong>　〈18条1項〉</strong></caption>
	<tr><td>事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
	</td></tr>
</table><br /><br />

<p>事業に係る契約が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合」の典型例としては、暴力団関連のパーティ（組長の襲名披露、組員の出所祝いなど）のために、宴会場や飲食の予約を申し込まれるようなケースが挙げられます。</p>

<p>ここまで露骨なケースでなくとも、相手方の名称などから暴力団関係者であることを疑わせるような具体的事情がある場合には、純粋に個人の私生活の枠内にとどまる取引でない限り、上記に該当する可能性を考慮すべきでしょう。</p><br />

<p>「契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認する」とありますが、ここで問題となるのは、&#9312;どこまでが「暴力団関係者」に含まれるか、&#9313;「暴力団関係者でないことの確認」をどのように行うか、の二点です。</p>
<p>まず&#9312;については、「暴力団関係者」は条例において「暴力団員または暴力団もしくは暴力団員と密接な関係を有する者」と定義されています（2条4号）。近年では、暴力団は組員だけでなく、いわゆる周辺者や共生者と呼ばれる外部の協力者を介して取引などの資金獲得活動を行っていることが多いため、規制対象を広めにとる必要があることから、このような定義になっています。</p>
<p>より具体的に「暴力団関係者」の範囲を理解するには、東京都が定めている、「<a href="http://www.e-procurement.metro.tokyo.jp/html/youkoukaisei-haijo221008.pdf" target="_blank">契約関係暴力団等対策措置要綱</a>」における、排除対象者の分類が参考になります。この分類は、1号から8号までありますが、特に注意すべきなのは、5号の「暴力団等親交者」でしょう。企業の場合、役員または従業員が暴力団と「社会的に非難される密接な関係」を有していると認められれば、その企業自身が「暴力団等親交者」に該当しますので、都条例の「暴力団関係者」にも該当する場合が多いといえます。</p>
<p>具体的には、暴力団が関与する賭博や無尽等への参加や、暴力団員やその家族に関する行事（結婚式、還暦祝い、ゴルフコンペなど）への出席が重なれば、暴力団との密接な交際があるとされて、「暴力団関係者」に該当する可能性が高くなります。</p><br />

<p>次に&#9313;の確認方法ですが、相手方の氏名・名称を確認できるような形態の取引であれば、新聞記事やインターネットなどの公開情報を検索することが望ましいと思われます（事例や属性情報を集積したデータベースが整備されている業種であれば、もちろん、データベース検索によるチェックをすべきことになります）。また、書面のやりとりになじむような取引においては、可能なかぎり「暴力団関係者ではない」旨の誓約書を差し入れてもらうのがベターです。</p>
<p>上記の方法によるチェックの結果が「グレー」な場合は、所轄の警察署や<a href="http://boutsui-tokyo.com" target="_blank">暴追都民センター</a>への相談をお勧めします。必要性に応じて、可能なかぎり、情報提供を受けられることも期待できます（9条には、都が暴追都民センター等と連携して、都民や事業者に情報提供等の支援を行うと定められています）。</p><br />

<table align="right" border="1" width="500" cellspacing="1" bordercolor="#666666">
	<caption><strong>　〈18条2項(1)号〉</strong></caption>
	<tr><td>事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。<br />
(1)	当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。<br />

（...(2)号以下は省略）
	</td></tr>
</table><br /><br />

<p>いわゆる暴力団排除条項（暴排条項）は、既に多くの業種・企業で導入されていますが、上記の規定によって、さらに導入が容易になると思われます。契約の相手方が暴排条項に難色を示した場合でも、「条例で決まっているので、全ての契約先に了承をお願いしています」と説明すれば、納得してもらえる可能性が高まるからです。したがって、企業としては、条例の施行を機に、全ての契約書の書式に暴排条項を盛り込むのが良策といえます。</p><br />

<p>18条2項(1)号が定めている最低限の暴排条項は、「相手方等が暴力団関係者であることが判明した場合の、無催告解除」ですが、暴排条項には他にも様々なバリエーションがあります。実際に条項を作成される際には、弁護士などへの個別相談がベターであることは勿論ですが、参考例として、既に暴排条項の整備が進んでいる金融・建設・不動産の各業界のモデル条項等が挙げられます。例えば、<a href="http://www.zenginkyo.or.jp/news/2011/06/02150000.html" target="_blank">全銀協のモデル条項</a>、<a href="http://www.nikkenren.com/archive/news/index70.html" target="_blank">日建連のひな型</a>、<a href="http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/const/sosei_const_fr3_000013.html" target="_blank">不動産流通4団体の標準モデル条項例</a>が公開されており、良い参考になると思われます。</p><br />

<p>上記の18条1項あるいは2項(1)号は、努力義務であり、1項の確認をせずに契約したり、暴排条項のない契約書を交わしてしまった場合でも、ただちにペナルティを科せられるわけではありません。ただし、程度によっては、報告や資料の提出を求められたり、立入検査を受ける可能性はあります（26条）。その場合に、虚偽の報告をしたり立入検査を拒否するなどの違反があれば、その旨を公表されることになります（29条1項7号）。公表に至れば、「暴力団排除への取り組みを怠っている企業」であると認知されてしまい、その後の企業活動に大きな支障を来たすおそれもあります。</p><br />

<p>また、18条1項や2項(1)号の規定を守っていないと、結果として（気づかないうちに）暴力団関係者と契約してしまい、暴力団に経済的利益を供与することになりかねず、トラブルの元にもなります。これが度を越せば、自らが「暴力団関係者」に該当してしまい、他の企業から18条1項によって契約を拒まれたり、暴排条項によって契約を解除され、ひいては事業が立ち行かなくなることもあり得ます。</p>
<p>したがって、努力義務だからといって軽視せず、契約時の確認および暴排条項の導入を積極的に進めることが、企業のリスクマネジメントのためにも有益といえましょう。</p>

<h2>3. まとめ</h2>

<p>上記の規定にもみられるとおり、今や契約法務において暴力団対策の観点は必須といってよく、企業としてはコンプライアンスやクレーム担当部門だけでなく、契約に関わる全ての部署や役員・従業員に、条例の規定をふまえた暴排意識を浸透させることが重要と考えられます。</p>
<p>暴排条例の背景には、「自治体・警察・都民・事業者を含めた社会全体で、暴力団排除に取り組む」というコンセプトもあります。これをふまえて、警察への早期相談や企業間での連携や情報共有も活用しつつ、自発的・積極的に「契約からの暴力団排除」を進めていただければと思います。</p>

<p align="right">以上</p>

]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title><![CDATA[「著作権者等不明の場合の裁定制度 　～孤児作品は侵害しながら使う？&nbsp;使わない？&nbsp;それとも...。」]]></title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000155.html" />
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    <published>2011-08-30T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-13T07:48:00Z</updated>

    <summary> １．はじめに 古い映画をインターネット配信したい、文庫の表紙絵を使ってイラスト...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="著作権法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[
<br/>
<h2>１．はじめに</h2>

<p>古い映画をインターネット配信したい、文庫の表紙絵を使ってイラスト集をつくりたい等、作品の利用を検討するにあたり、まず考える必要があるのが、著作権者等の権利者の許諾を得ることです。

<br/>ただ、「権利者の許諾」といっても、実際にはそう簡単にはいかないことも多いかと思います。
<br/>古い作品であれば、その作品を創作した方が亡くなられ、相続人が誰かわからない場合もあるでしょうし、著作権を保有していた企業がいつのまにか倒産していたなんてことも、このご時世、珍しくはありません。
<br/>また、当初の（あるいは特定の時点の）著作権者が判明したとしても、著作権は、本来的に自由に譲渡できるものであり、その譲渡は口約束ですら有効であるため、誰が現在の著作権者であるか、正確にたどるのは、至難の業といえるケースもあるでしょう。</p>

<p>このように、利用したい作品の権利者が不明の場合、どうすればよいのでしょうか。
<br/>権利者が不明の作品（孤児作品）の取扱い方法として、パッと頭に浮かぶ選択肢としては、&#9312;利用をあきらめる、&#9313;許諾はないが利用してしまう、の2つでしょうか。
<br/>&#9312;利用をあきらめてしまえば、当然、法的リスクは生じませんが、利用の実現というゴールからは、1番遠い結果でしょう。
<br/>&#9313;は、大きな声では（いや、小さな声でも）、オススメはできませんが、実際には、どんなに手を尽くしても権利者が見つからない状況から、権利者が現れてクレームしてくるリスクは大きくないと判断して、利用に踏み切るケースも少なくないように思います。
<br/>しかし、やはり、あとになって、どこからともなく現れた権利者から、クレームを受け、ましてや裁判沙汰になるリスクが残ることや、第三者から権利侵害だと指摘を受け不祥事に発展するリスクを考えると、大々的な利用を検討しづらい場合も考えられます。</p>

<p>今回のコラムでは、上記の&#9312;又は&#9313;を選択する前に、一度検討する価値のある（かもしれない）第3の選択肢として、著作権者等が不明の場合の裁定制度について、取り上げてみたいと思います。</p>

<h2>２．裁定制度の使い方</h2>

<p>まず、この裁定制度の概要としては、著作権者や実演家などの著作隣接権者（以下「著作権者等」といいます）が不明の場合に、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料相当と文化庁長官が定める補償金を、著作権者等のために供託し、その裁定を受けた利用方法により作品を利用することが認められています（著作権法（「法」）第67条1項・第103条）。
<br/>具体的には、著作権者等（又はその相続人）が誰か分からない場合や、著作権者等は判明したが、どこにいるか分からないという場合が、この裁定制度の出番となります。
<br/>本制度における裁定は、著作権者等の許諾に代わるものですので、著作権者等の許諾はなくとも、裁定に従った利用は権利侵害になりません。
<br/>ただし、裁定による利用の事実を知った権利者が出てきた場合、将来の利用をとりやめなければならない場合もあります。</p>

<p>●対象</p>
<p>まず、この裁定制度は、</p>
<p class="subcontentW1">(i)公表された作品</p>
<p class="subcontentW1">(ii)相当の期間にわたって公衆に提供され、若しくは提示されていることが明らかである作品</p>

<p>を対象としています。
<br/>すなわち、(i)著作者の了解のもと公表された作品のみならず、(ii)著作者が不明の場合や、著作者が公表したのか分からない場合でも、相当の期間にわたって世間に提供されている実績がある作品も、この裁定制度の対象となります。</p>

<p>●申請条件としての「相当な努力」
<br/>裁定を申請する条件として、著作権者等と連絡するための「相当な努力」を払ったにもかかわらず、連絡することができないことが必要となります。
<br/>この「相当な努力」の具体的な方法としては、著作権者等と連絡をとるために必要な住所、電話番号等の連絡先の情報を取得するために、下記のアからカの全ての措置をとり、それらにより取得した情報その他全ての情報に基づき、著作権者と連絡するための措置をとることが必要となります（著作権法施行令第7条の7第1項・平成21年文化庁告示第26号第1条から第3条。）</p>

<p>
<table summary="著作権者等と連絡するための「相当な努力」" align="center" border="1" width="500" cellspacing="0" cellpadding="5" bordercolor="#666666">
	<tr>
	<th bgcolor="#669933" >　</th>
	<th bgcolor="#669933" align="center" width="300">調査手法</th>

	<th bgcolor="#669933" align="center" width="180">必要度</th>
	</tr>
	<tr>
	<td bgcolor="#CCFFCC" align="center" >ア</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="300">著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の<br />種類に応じて作成された名簿・名鑑類の閲覧</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="180" align="center" >○<br />（2種類以上）</td>

	</tr>
	<tr>
	<td bgcolor="#CCFFCC" align="center" >イ</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="300">インターネット検索サービスによる情報の検索</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="180"align="center" >○<br />（2社以上）</td>
	</tr>
	<tr>

	<td bgcolor="#CCFFCC" align="center" >ウ</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="300">著作権等管理事業者その他の著作権等の<br />管理を行う事業者への照会</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="180" align="center" >△<br />（当該分野に係る著作権等の管理を行っている事業者が存在する場合）</td>
	</tr>
	<tr>
	<td bgcolor="#CCFFCC" align="center" >エ</td>

	<td bgcolor="#FFFFFF" width="300">利用しようとする著作物等と同種の著作物等の<br />販売等を行う者への照会</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="180" align="center" >△<br />（存在する場合）</td>
	</tr>
	<tr>
	<td bgcolor="#CCFFCC" align="center" >オ</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="300">利用しようとする著作物等について<br />識見を有する団体への照会</td>

	<td bgcolor="#FFFFFF" width="180" align="center" >△<br />（存在する場合）</td>
	</tr>
	<tr>
	<td bgcolor="#CCFFCC" align="center" >カ</td>
	<td bgcolor="#FFFFFF" width="300">次のいずれかの方法による、一般に対する<br />情報提供依頼
			<br />　(i) 日刊新聞紙に掲載する方法
			<br /> 　(ii) 社団法人著作権情報センター（CRIC）の<br />　　ホームページに掲載する方法（30日以上）</td>

	<td bgcolor="#FFFFFF" width="180" align="center" >○</td>
	</tr>
</table> 
</p>

<p>この「相当な努力」については、文化庁のホームページで公表されています「裁定の手引き」（以下「本手引き」といいます）において、調査方法等についての具体的な説明がされています。その内容を、以下にて少しご紹介します。</p>

<p><b>ア</b>（名簿・名鑑類の閲覧）について</p>
<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;原則として、著作物等が発行・公表された当時のものを2種類以上閲覧するよう示唆されています。</p>

<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;具体例としては、一般的なものとして、著作権台帳や人事興信録が挙げられているほか、美術の著作物については、美術年鑑や美術家名鑑、音楽の著作物については、音楽年鑑や音楽人名辞典、実演については日本タレント名鑑等が該当します。</p>

<p><b>イ</b>（インターネット検索サービスによる情報の検索）について</p>
<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;著作物等の題号、著作者等の名前、著作物等の内容をキーワードとして、2社以上のインターネット上の検索サービスを用いて、権利者に関する情報を検索するよう示唆されています。</p>
<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;あわせて、文化庁のホームページで、利用しようとする著作物等についての権利登録の有無を確認する必要があります。</p>

<p><b>ウ</b>（著作権等管理事業者等への照会）について</p>

<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;管理実績の多い著作権等管理事業者として、音楽の著作物については、一般社団法人日本音楽著作権協会（JASRAC）や㈱イーライセンス、言語の著作物については、社団法人日本文藝家協会等が挙げられています。</p>

<p><b>エ</b>（当該著作物と同種の著作物の販売等を行う者への照会）について</p>
<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;&#9312;利用しようとする著作物等と同じものを過去に販売等したことのある者がいる場合、又は&#9313;利用しようとする著作物等ではないが、当該著作者等が創作等した別のものを過去に販売等したことのある者がいる場合に必要となります。</p>
<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;上記&#9312;又は&#9313;に該当する者が複数ある場合は、原則として、それぞれ有力な情報を有していると思われる2者以上に照会するよう示唆されています。</p>

<p><b>カ</b>（一般に対する情報提供依頼）について</p>
<p class="subcontentW1">&nbsp;・&nbsp;(ii)の方法については、(a)社団法人著作権情報センター（CRIC）のホームページに情報提供を求める広告記事掲載の依頼を行う方法と、(b)CRICのホームページには情報提供を求める広告記事の概要のみを掲載し、詳細は自分（又は自社）のホームページへリンクさせるようCRICに依頼する方法があります。</p>

<p>なお、「相当の努力」として求められる、適切な手続・方法は、著作物の種類や利用方法により異なりますので、早いタイミングで文化庁への事前相談を行うことをお勧めします。</p>

<p>●全体的な手続の流れ
<br/>上記のとおり、&#9312;「相当な努力」をした後の大まかな手続の流れは、以下のとおりです。
<br/>　&#9313;　申請書及び添付書類の文化庁著作権課に対する提出
<br/>　&#9314;　文化庁長官による裁定の可否及び補償金額の決定・通知

<br/>　&#9315;　補償金の供託
<br/>　&#9316;　著作物の利用開始
<br/>本手引きで紹介されているスケジュール例によれば、&#9313;申請から&#9314;補償金額の決定までの標準処理期間は3カ月とされています。もっとも、文化庁のホームページで公表されている過去の裁定実績の中には、申請から1カ月以内に裁定がされた案件もあり、事前に利用までのスケジュールを組みにくいところです。</p>

<p>他方、平成21年の著作権法改正により新設された、申請中利用制度（法第67条の2）を利用する場合、申請後、文化庁長官の定める担保金を供託すれば、裁定の決定前であっても、著作物の利用を開始することができます。なお、当該著作物の著作者が利用を廃絶しようとしていることが明らかであるとき、具体的には、著作者が、「その作品の今後一切の利用を一切禁止する」との置き手紙を残して失踪した場合等には、申請中利用制度による利用は認められません（この場合、裁定をしない処分となります（法第70条4項2号））。
<br/>申請中利用制度を利用する場合、担保金の額の通知を受け（申請から約1～2週間程度かかるようです）、当該金額を供託すれば、裁定を待たずに利用を開始できるため、利用開始までのスケジュールの短縮を一定程度期待できるかと思います。
<br/>ただし、利用開始後、「裁定をしない処分」を受けた場合には、その時点で著作物の利用を中止しなければならない点には留意が必要となります。</p>

<h2>３．実際に使われているのか、そして使えるのか</h2>

<p>では、この裁定制度、実際に使われているのか？というと、どうやら、最近にわかに使われ始めているようなのです。</p>
<p>文化庁のホームページで公表されている過去の裁定実績によれば、直近10年間の状況は下記グラフのとおりです。</p>

	<p><img src="images/clumn110829_2.jpg" width="500" height="392" alt="過去10年間の裁定実績" /></p>

<p>グラフを見てみますと、平成20年までは、1年に数件程度しか活用されていなかったのに対し、平成21年、平成22年には少しずつ裁定事例が増加していることが分かります。
<br/>この裁定件数の増加の要因としては、上述の&#9312;文化庁による本手引きの公開（平成17年3月以降）や、&#9313;申請中利用制度の開始や手続の明確化等を内容とする平成21年度の著作権法改正により、幾分、制度を利用しやすくなったことが考えられます。</p>

<p>もっとも、裁定の対象とされた著作物の内訳を見てみると、どの年も言語の著作物が大半を占めています。
<br/>映像コンテンツなど、関連する権利者が多数存在することから、本来、この裁定制度による利用の必要性が高いように思われるものの、過去に裁定がされた実績はほとんどありません。
<br/>このように利用対象に偏りがあり、また件数としても未だ十分に活用されているとは決していえない現状については、申請にあたり求められる「相当な努力」や提出書類の準備についてのハードルが相当高いことが一因であろうと思います。</p>

<p>とくに、申請書には、「補償金の額の算定の基礎となるべき事項」という項目があり、本手引きによれば、例えば、(a)販売価格等の著作物の提供又は提示の対価、複製を行う場合はその部数、演奏・上演・上映等を行う場合はその回数、出版物やビデオの場合には全体の分量と当該著作物が占める分量などのほか、(b)同様の形態についての「使用料の相場」が分かる資料があれば、記載・添付するよう示唆されています。
<br/>(b)「使用料の相場」については、著作権等管理事業者の使用料規程や業界の標準料金が存在する場合には、これらが参考になりますが、使用料規程や標準料金が存在しない種類の著作物については、各社の取扱いにつき調査を実施し、その結果の報告を求められることもあるようです。このような労力をかけることは、業界にカオがきき、資金もある一部の企業を除いては、現実的には難しく、自らできる範囲には限界があるように思われます。
<br/>それ以前に、(a)については、「広範な利用の可能性を事前に確保できなければ事業を進められない」といったケースでは、現実に難しいでしょう。裁定制度を利用するために、作品の利用方法が大きく制約されることもあるのではないでしょうか。</p>

<p>また、「相当な努力」についても、実際に申請を受理されるためには、（本手引きによれば、該当する者が存在する場合に照会するよう示唆されている）上記表のウからオの照会について、該当する者が存在しない場合であっても、不存在であることについて、詳細な説明や疎明資料の提出を求められるなど、「相当な努力」どころか「多大な努力」を要するケースも多いようです。</p>

<h2>４．おわりに</h2>

<p>著作権者等不明の場合の裁定制度は、補償金を供託させることにより権利者の利益を確保しつつ、孤児作品の死蔵を防ぎ、次世代の文化創造を促進するという、実に大きな役割を果たし得る制度です。
<br/>ただし、どんなに素晴らしい理念に基づく制度であっても、過度に厳格な運用がされるのであれば、利用者にとっての現実的な選択肢とはなりえず、孤児作品とともに、裁定制度自体が（再び）死蔵されてしまうかもしれません。
<br/>そうならないためには、コンテンツの内容・利用方法が多種多様に広がる情報化社会にふさわしく、裁定制度がより柔軟に運用されることが必要でしょう。たとえば、補償金について、申請者において具体的な金額を算定できないケースでは、文化庁のイニシアチブにより作品の種類等に応じた金額を設定し、当事者から不満があれば異議を出させることにより、申請に向けてのハードルが一段低くできるのではないでしょうか。
<br/>また、孤児作品の利用希望者のスタンスとしても、権利侵害となる利用をしながら、あるいは、利用を諦めながら、現行の裁定制度の運用改善や、新たな使い勝手のいい制度の導入をただ待つのではなく、少し面倒そうだけど適法に作品を利用できる裁定というオプションがまず検討されることを期待しつつ、本コラムを終えたいと思います。</p>

<br />
<p align="right">以上</p>
]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>「１秒でも利用したら侵害？ ―― 音楽のサンプリングと原盤権」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000154.html" />
    <id>tag:www.kottolaw.com,2011:/column//3.154</id>

    <published>2011-08-29T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-13T07:40:35Z</updated>

    <summary>■サンプリングとは 音楽におけるサンプリングとは、過去の曲や音源の一部をデジタル...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="著作権法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="裁判" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="ＩＴ法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<h2>■サンプリングとは</h2>

<p>音楽におけるサンプリングとは、過去の曲や音源の一部をデジタル技術を用いて利用し、新たな曲を製作する方法をいう。ヒップホップやクラブ・ミュージックをはじめとして、さまざまな音楽のジャンルで広く用いられている<sup><big>*</big></sup>。</p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0"target="_blank">ウィキペディアのサンプリングの欄</a>には、たくさんのサンプリングの実例が紹介されている。</p>

<h2>■サンプリングの法的問題</h2>
<p>音楽を収録したＣＤには、さまざまな権利がかかわっている。一般的な例でいえば、曲の作詞家・作曲家の権利（著作権・著作者人格権）、曲を歌唱・演奏している実演家の権利（著作隣接権・実演家人格権）、ＣＤを製作したレコード製作者の権利（著作隣接権）である。では、ＣＤの音楽を元ネタとして利用するサンプリングでは、これらの権利者のすべてから、許諾を得る必要があるのであろうか。</p>
<p>著作権に関して言えば、サンプリングによって、元ネタの創作性のある部分を利用して再生すれば、現行法では著作権侵害になる。それゆえ、そのような利用をする場合には、作詞家・作曲家といった著作権者の許諾を得る必要がある。他方、元ネタの利用部分が短い場合などで、その部分だけでは創作性がある表現を利用・再生したとは認められない場合には、著作権侵害にはならない。したがって、そのような利用の場合には、著作権者の許諾を得る必要はない。創作性がない部分を、どれだけループ（１つの音源を繰り返し再生すること）して長時間利用しようとも、侵害にならないことに変わりはない。</p>
<p>では、レコード製作者の権利（いわゆる原盤権<sup><big>*</big></sup>）についてはどうであろうか。この点については、元ネタの音源をそのまま利用すれば、たとえ１秒といった短い時間でも原盤権の侵害になるという考え方と、そうでないとする考え方がある。以下では、原盤権の問題に限定してサンプリングの問題を検討する。</p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp実務でいう「原盤権」の用語は、実演家の権利を含めて用いられる場合もあるなど多義的とも言える。本コラムで後述する米国判決が、日本におけるレコード製作者の権利に相当する権利を取り扱っていることから、ここでは、いちおうレコード製作者の権利を意味する用語として「原盤権」の語を用いる。</p>

<h2>■米国Bridgeport事件</h2>

<p>日本には、サンプリングによる原盤権侵害の問題をとりあげた判決は存在しない。この点、訴訟大国と言われる米国は"さすが"であり、該当事例が存在する。ここではまず、有名なBridgeport判決を簡単に紹介する。</p>
<p>Bridgeport判決の事案は、原告曲のギターソロ（３音からなるリフで４秒続く）から、被告が２秒を抜粋し、その部分の音を低くしてループし、１６ビートに変更したうえで利用したというものである。被告曲では、そういった部分が約７秒ずつ５回現れる。</p>
<p>この事案で、一審判決（<i>Bridgeport Music Inc. v. Dimension Films</i>, 230 F.Supp.2d 830, 842 (M.D. Tenn.2002)）は、サンプリングされた箇所は原告曲にとって重要部分かもしれないが、一般的な視聴者や、原告曲に慣れ親しんでいる視聴者も、それを認識することができないから、両者の間に実質的類似性はない、として侵害を否定した。</p>
<p>これに対し、控訴審判決（<i>Bridgeport Music Inc. v. Dimension Films</i>, 410 F.3d 792 (6th Cir. 2005)）は、サンプリングした抜粋がいかに少なくても、元の音源を利用した以上は侵害になると判示して、一審判決を覆した。</p>
<p>Bridgeport事件控訴審判決は、上記結論を導くにあたって、もっぱら米国著作権法の条文解釈を根拠としている（この条文解釈については、以下で簡単に触れる）。そして、そのような判断の背景として、明確な基準を採用することの重要性を指摘している。</p>
<p>たしかに、１秒あるいはそれ以下の短い時間であろうとも、元の音源を利用する以上はただちに侵害になる、という基準を貫徹することができれば、侵害の有無を判断する基準として明確である。</p>

<h2>■日本でもBridgeport判決と同様の基準をとるべきとする考え方</h2>
<p>日本においても、Bridgeport判決がとった基準と同じ基準を採用すべきであるとする考え方がある<sup><big>*</big></sup>。この立場は、日本と米国では法制度が異なるため、日本では、より、そのような結論をとりやすいとする。</p>
<p>米国には著作隣接権制度がないため、原盤権も著作権の１つとして保護される（サウンド・レコーディングの著作権として保護される）。これに対し、日本では著作権とは別に著作隣接権の制度があり、原盤権（レコード製作者の権利）は、著作隣接権として保護される。著作権の保護のためには創作性が必要であるが、他方、原盤権の保護のためには創作性は要求されていない。したがって、サンプリングにおいて、たとえ創作性のない部分を利用しただけでも、CDの音そのものを利用する限りは侵害になる、という結論を導きやすいことになる。</p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp前田哲男・谷口元『音楽ビジネスの著作権』232頁は、結論として、「&#9312;著作権については、創作性のある部分が利用された場合にのみ侵害となる（利用された部分が短くてそれだけでは創作性が認められないなら、侵害とならない）、&#9313;著作隣接権については、創作性が直接関係せず、利用された部分が短くても侵害となるが、似たような音を別につくったのなら侵害とならない」と述べる。同書は、「この結論は、原曲の保護と新たな創作の自由をそれなりに調和させるものではないでしょうか」と論じている（同頁）。</p>

<h2>■米国におけるBridgeport判決後の動き</h2>
<p>Bridgeport控訴審判決を出した裁判所の管轄とは異なるが、Bridgeport控訴審判決に従わないことを明言した米国判決も出されている。</p>

<p>フロリダ州南部地区連邦地裁が出したSaregama判決（<i>Saregama India Ltd. V. Mosley</i>, 687 F.Supp.2d 1325 (S.D.Fla 2009)）がそれである。同判決によれば、この判決の事案では、約１秒間の女性ヴォーカル部分がサンプリングされ、被告曲において４回利用されている。この約１秒の断片部分を別とすれば、原告曲と被告曲の２つの曲は完全に別のものであり、歌詞の内容、テンポ、リズム、アレンジが全く異なる。事前に警告を受けていなければ、平均的・一般的な視聴者は、音源が元の曲のものであると気づくことはまずないであろう、とSeregama判決は述べている。</p>
<p>この事案においてSeregama判決は、Bridgeport判決による米国著作権法の解釈は誤りであると指摘する。</p>
<p>米国著作権法114条(b)は、「．．．サウンド・レコーディングの著作権者の排他的権利は、著作権によって保護されるサウンド･レコーディングの音を模倣し又は類似したものであっても、<u>すべての</u>音を独自に固定した他のサウンド・レコーディングの作成または複製には及ばない」（下線は筆者）と規定している。</p>
<p>Bridgeport判決は、この条文で「すべての」とされていることを重くみて、その反対解釈として、ごくわずかでも元の音を利用した場合には、ただちにサウンド･レコーディングの著作権者の権利が及ぶとした。</p>
<p>これに対し、Seregama判決は、次のように判示して、Bridgeport判決の解釈は誤りであるという立場を明確にしている。</p>
<p>「この条文のより妥当な解釈は、著作権の対象となるサウンド・レコーディングの保護は、<i>似たような音</i>&nbspであっても、著作権の対象となるサウンド･レコーディングのどの部分もそのまま利用していないものには『及ばない』ということである。この読み方においては、［被告曲］が、(1)［原告曲］からの音源のいずれかの部分をサンプリングし、かつ、(2)［原告曲］を「模倣するか似ている」場合に、［被告曲］は［原告曲］を侵害していることになる、という結論が含意されていると考えるのが適切である。．．．したがって、［米国著作権法］114条(b)の類似するサウンド・レコーディング作品の条項は、音が類似するサウンド・レコーディングの関係及びそれらが共通の音源を利用しているか否かを規律している。．．．［米国著作権法］114条(b)の立法経緯もこのような考え方を支えるものである．．．」（斜体の強調は原文）</p>

<p>そのうえでSeregama判決は、被告曲は原告曲と実質的に類似していないことから、被告曲が原告曲のサウンド･レコーディングの権利を侵害することはないと結論づけた<sup><big>*</big></sup>。</p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbspこの事件は控訴されたが、控訴審（Seregama India Ltd. v. Mosley, 635 F.3d 1284 (11th Cir. 2011)）は、別の論点に関する理由付けから原告による控訴を棄却した。したがって、原審のサウンド・レコーディングに関する判示部分は、控訴審として特に判断していない。</p>

<p>米国著作権法の分野で著名なNimmer教授も、Bridgeport判決は立法経緯を踏まえていないと批判する<sup><big>*</big></sup>。</p>

<p class="annotation"><big>*</big>&nbspNimmer on Copyright, §13.03【A】【2】【b】</p>

<p>興味深いこととして、全米レコード協会（RIAA）は、このBridgeport判決に対して反対意見を表明しているとのことである。<sup><big>*</big></sup></p>

<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp安藤和宏「アメリカにおけるミュージック・サンプリング訴訟に関する一考察（１）（２）－Newton判決とBridgeport判決が与える影響－」知的財産法政策学研究vol.23 P.243に紹介がある。RIAAの批判の骨子は、従前のルールにしたがって実務の慣行がすでに形成されているのに、裁判所が大きなルール変更を突然行うと実務に混乱をもたらす、という点にあるようである。</p>

<h2>■Bridgeport判決とは異なる考え方</h2>
<p>作花教授は、「サンプリング（sampling）により既存の音を利用する場合、当該音を作出したレコード製作者や実演家の権利、あるいは作曲家の権利がどのように及ぶかが、ひとつの検討課題となり得る。我が国の著作権法では、レコードや実演の保護対象は、固定された音又は演じられた実演そのものであり、創作性などが要件とされていないが、そのことにより、いかなるサンプリング利用に対しても権利が及び得るとの結論が導かれるものか否か、原レコード製作者等の正当な利益の確保及び新たな音楽創造の調和の観点から、検討を要する」と問題提起をしている。<sup><big>*</big></sup></p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp作花文雄『詳解著作権法［第４版］』P.504-505<br/>

同書は、この記述に続けて、「複製権や翻案権などが働くか否かは、サンプリングの結果、作出された音において、元のレコードや実演（又は楽曲）のどの程度の割合のものが利用されているか等の観点から判断されるものと思われる」とする。ここにいう「複製権や翻案権など」がどこまで含む趣旨なのか、文面からただちに明確ではない。ただし、文脈からすると、この部分は、直前の文が触れている「レコードや実演の保護対象」のことも含めた話をしているようにも思える。</p>
<p>『よくわかる音楽著作権ビジネス』の著者である安藤和宏氏は、「サンプリングしたフレーズが元のレコードを識別できる程度に再現されている場合は、たとえそのフレーズに創作性がなかったとしても、著作隣接権（レコード製作者の複製権）の侵害となり、反対に、もはや元のレコードが識別できないほどに変容している場合は、著作隣接権の侵害とならないと解すべきである」とする。<sup><big>*</big></sup></p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp安藤前掲論文P.278-279</p>

<h2>■若干のコメント</h2>
<p>Bridgeport判決のとる基準のように、侵害になるか否かの基準が明確であることは、たしかに魅力的である。</p>
<p>しかし、Bridgeport判決は、原審の判断を一部破棄したうえで差戻しているが、その際に、差戻後の第一審が、フェアユースの適用の有無について判断することは自由である旨述べている。フェアユース（公正利用）の適用の有無は、利用の目的及び性質、利用された部分の量及び実質性など、実質的な要素を踏まえて判断する抗弁である。したがって、Bridgeport判決を前提にした場合でも、米国法の下では、判断過程の入口で、いったんは形式的に侵害の有無を判断しつつも、次にフェアユースの適用可能性を判断する過程で、実質的観点を加味することになるともいえる。そうであるとすれば、形式的基準を貫徹できることになるわけではない。</p>
<p>また、すでに述べたとおり、Bridgeport判決は、RIAAから批判的に受け止められている。レコード協会のメンバーであるレコード会社は、サンプリングにおいて、権利者になることもあれば、利用者になることもある。そのように、立場の二面性（立場の交換可能性）を有する団体がBridgeport判決を支持していない点は、注目すべきであろう。</p>

<p>さらに、侵害が認められる場合には、損害賠償請求権や差止請求権という強力な権利が発生する。そのことを踏まえると、保護されるべき権利の範囲を決めるにあたって、実質的な要保護性という観点を取り入れない考え方には抵抗がある。元の音源を利用すれば、いかにわずかであっても直ちに侵害になるとするのではなく、保護に値する範囲の利用がある場合に初めて侵害の成立可能性をありとする基準が妥当なように思える。</p>
<p>その範囲を定めるにあたっては、そもそも著作隣接権はなぜ保護されるのかといった根本的な問題に立ち返る必要もありそうである。ただし、そのあたりまで本コラムで取り扱うのは荷が重いので、ここでは、著作隣接権に関する参考論文を１つだけあげておくとともに<sup><big>*</big></sup>、結論的には、上記安藤論文の考え方に魅力を感じる旨コメントを述べておくにとどめておきたい。</p>
<p class="annotation"><big>*</big>&nbsp本山雅弘「著作隣接権の理論的課題」コピライト５５３号P.2（2007年5月号）</p>
<br/>
<p><div align="right">以上</div></p>
]]>
        
    </content>
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    <title>（出張編） Internet Watch「規約間競争が始まる？　FacebookやTwitterなど人気サイト利用規約を読み比べる」</title>
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    <published>2011-07-29T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-25T11:03:01Z</updated>

    <summary></summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
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        <category term="ＩＴ法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<entry>
    <title>「デジタル雑誌配信権利処理ガイドラインと信託法・信託業法」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000152.html" />
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    <published>2011-07-28T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-13T07:30:26Z</updated>

    <summary> ■はじめに 昨年12月1日付で，社団法人日本雑誌協会（雑協），日本文藝家協会，...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="その他の実体法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="契約" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="ＩＴ法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<br/>
<h2>■はじめに</h2>

<p>昨年12月1日付で，社団法人日本雑誌協会（雑協），日本文藝家協会，日本写真著作権協会が共同で策定した「<a href="http://www.j-magazine.or.jp/doc/information_006_02.pdf"target="_blank">デジタル雑誌配信権利処理ガイドライン</a>」が発表されました。その１か月前に日本書籍出版協会が<a href="http://www.jbpa.or.jp/publication/contract.html"target="_blank">電子出版対応契約書ヒナ型（３種）</a>を発表していたこともあり，出版の世界での電子化の流れをさらに加速化するものとして，大きな話題となりました。</p>

<p>ガイドライン発表から半年以上が経過した現在，このガイドラインに準拠することを表明している雑誌は，67雑誌（22社）となっています（出版社名・雑誌名は<a href="http://www.j-magazine.or.jp/information_006_02.html"target="_blank">こちら</a>）。雑協に加盟しているのが95社，雑協のデジタルコンテンツ推進委員会のメンバーが56社（2010年11月39日現在）であることを考えると，震災の影響を考慮してもこの数字を多いとみるか，少ないとみるかは評価が分かれるところだと思います。</p>
<p>このガイドラインは，電子出版という，出版社にとっても著作者にとってもまだなじみの薄い分野に関するものとしては，内容もシンプルでとてもわかりやすいものになっています。それに加えて，このガイドラインの内容については，「<a href="http://www.j-magazine.or.jp/doc/information_006_01.pdf"target="_blank">ガイドラインの趣旨</a>」，「<a href="http://www.j-magazine.or.jp/doc/information_006_03.pdf"target="_blank">著作者向けQ&A</a>」，「<a href="http://www.j-magazine.or.jp/doc/information_006_04.pdf"target="_blank">出版社向けQ&A</a>」などの形で，丁寧でわかりやすい説明が発表されています。わかりやすく，使いやすいものを目指したという意味で，とても素晴らしいものだといえるでしょう。ただ，これらのガイドラインやその内容の説明は，一般の方向けにわかりやすさを優先して書かれているところもあるためか，法律的には，もう少し説明が必要ではないかな，と思われる点があります。このコラムではそういった点について考えてみたいと思います。</p><br/>


<h2>■ガイドラインは信託？</h2>

<p class="subcontentW1">１　このガイドラインでは，著作者が雑誌発行社に対して，複製権，譲渡権，翻案権（外国語への翻訳・翻案のみ），公衆送信権・送信可能化権の譲渡の形式で，その利用をゆだねることになっています（第５項）。ただし，この譲渡は期間が限定されていて，その期間が経過すると著作権は著作者のもとに戻ることになっています（第９項）。ガイドラインの本文には「信託」という言葉は出てこないのですが，ガイドラインの説明には「信託的譲渡の法形式を基にしている」という表現が出てきますし，上述のQ&Aの中にも信託という言葉がたびたび登場します。つまり，このガイドラインは信託について定めているわけです。</p>
<p class="subcontent">さて，上述の著作者向けQ&Aにはこんなことが書かれています。</p>

<blockquote><strong>５．具体的に、どのような手続きでガイドラインは効力を持つのですか。<br />　　寄稿するたびにいちいち譲渡契約書を交わすのですか。</strong></blockquote>
<blockquote>ガイドラインに準拠する雑誌は、日本雑誌協会のホームページに雑誌単位で掲載されます。原稿依頼時などに編集部から、文書（メールを含む）、口頭などでガイドラインや、参加が判明しているデジタル配信ビジネスの説明を受け、口頭あるいは書面で同意すれば効力をもつようになります。一度合意すれば毎号その手続きをする必要はありません。</blockquote><br />

<p class="subcontent">ここに書いてあるとおり，著作者がガイドラインに同意をすると，出版社との間で信託の合意＝信託契約を結んだことになるわけです。ガイドラインには信託という言葉が書いてないのに，これに同意すると，信託契約を結んだことになる，まずここが少し不親切じゃないか，と思うところです。</p>
<p class="subcontent">もっとも，信託などという難しい言葉が出てこなくても，ガイドラインに重要なこと，法律的に信託契約に必要な事柄が遺漏なく書いてあれば，「信託」という言葉を使う必要はありません。では，法律上信託とはどんなもので，どんなことに合意をすると信託契約を結んだことになるのでしょうか。</p><br />

<p class="subcontentW1">２　信託について定めているのは信託法という法律です。信託法で定めている信託契約の関係を簡略化して説明すると，<br />
(1)「委託者」が「受託者」に対して財産を譲渡する。その際「受益者」を指定する。<br />
(2)「受託者」が譲渡された財産を一定の目的に従って管理・処分等の必要な行為をする。<br />
(3)「受益者」は譲渡された財産について，「受託者」に対し「受益権」という権利を有する。</p>

<p class="subcontent">このように，信託は「委託者」，「受益者」，「受託者」という三者の間に成立するのが本来の姿です。ただ，音楽著作権について信託を利用しているJASRACなどでは，「委託者」＝「受益者」とすることで，二者（作曲家とJASRAC）の間に信託という関係を持ち込んでいるわけです。</p>
<p class="subcontent">今回のガイドラインも，著作者と出版社という二者関係が想定されています。ですから，JASRACと同じように，「委託者」＝「受益者」＝著作者，そして「受託者」＝出版社，という構成をとっているのだと思います。ただ，これはあくまで本来の信託の姿とは少し違うわけですから，「委託者」，「受託者」，「受益者」が誰で，ここでは「委託者」＝「受益者」なのだということを明確に書いた方がよいように思います。</p>
<p class="subcontent">例えばJASRACの<a href="http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/1.pdf"target="_blank">著作権信託契約約款</a>にはこのように規定されています。「委託者」＝「受益者」＝作曲家，「受託者」＝JASRACという前提でご覧ください。</p>

<blockquote>第３条　委託者は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を、本契約の期間中、信託財産として受託者に移転し、受託者は、委託者のためにその著作権を管理し、その管理によって得た著作物使用料等を受益者に分配する。この場合において、委託者が受託者に移転する著作権には、著作権法第２８条に規定する権利を含むものとする。</blockquote>
<blockquote>２　　　　本契約における受益者は、委託者とする。ただし、本契約の締結の際に委託者が受託者の同意を得て第三者を受益者として指定したときは、当該第三者とする。</blockquote>

<p class="subcontent">少し難しいというデメリットはあるでしょうが，このように書いてあれば，信託だということは明らかになります。</p><br />

<p class="subcontentW1">３　どうして信託であることをはっきり書かなければならないのか，JASRACの信託約款の書き方よりもガイドラインの方が一般の人にはわかりやすいではないか，そう思う方もいらっしゃるかもしれません。</p>
<p class="subcontent">ですが，信託として認められると，譲渡を受けた著作権は出版社の固有の財産とは別のものとして扱われます。ところが，信託として認められなければ，著作者から譲渡を受けた著作権は，出版社固有の財産と同じ扱いを受けます。その結果，出版社の債権者がこれを差し押さえることもできますし，出版社が破産したら破産管財人の管理下に置かれ，著作者のところに当然に戻ってくるということにはなりません。このようなリスクを考えると，やはり単なる譲渡ではない，信託なのだということはガイドライン上もはっきりさせた方がいいように思うのです。</p><br />

<p class="subcontentW1">４　むしろ，「Q&A」などの説明を読まずにガイドラインだけに目を通してみると，果たしてこのガイドラインに書いてあることは本当に信託なのだろうか，という気もしてきます。</p>

<p class="subcontent">上述したように，「委託者」・「受託者」・「受益者」という関係がはっきり書かれていないということが第一の点ですし，「受託者（出版社）」がどのような内容の「受益権」を持つのかについても，何も書かれていないということもあります。むしろ，ガイドラインでは以下のような規定が設けられています。</p>

<blockquote>８　上記著作物の、雑誌における利用の対価は、原稿料等として一括して支払われるものとし、第５条の期間内の利用に対しては、特段の取り決めがない限り、追加の利用料支払いは発生しない。</blockquote>

<p class="subcontent">このように，受益者（著作者）に対する利益の分配は予定されていないわけです。また，ここで「利用の対価」や「利用料」という表現が使われていることにも違和感があります。というのは，「受託者（出版社）」に対して著作権の譲渡をした人つまり「委託者（としての著作者）」との関係では「利用」させてもらうことに対する「対価」や「利用料」ということは考えられますが，「受益者（としての著作者）」との関係で「対価」や「利用料」は考えられないからです。こうしてみると，このガイドラインには受益者についても，受益権についても何も書かれてないように読めてしまうわけです。</p>
<p class="subcontent">なお，信託法では，信託財産の管理により受託者が得た財産も信託財産に属するとされています。したがって，信託譲渡を受けた著作権に基づいて出版社が使用許諾をしてロイヤリティを得れば，それは著作権と共に信託財産を構成することになりますから，信託期間が終われば委託者すなわち著作者に返さなければならないはずです。しかし，それも想定されていません。</p>
<p class="subcontent">おそらくガイドラインとしては，これを報酬や手数料等の名目で出版社が取得することが想定されているのだと思います。しかし，信託法では受託者（出版社）の受け取る報酬額は，<br />
(1)信託契約に信託報酬の額の算定方法の定めがあるときはその定めにより決まる額<br />
(2)信託契約に信託報酬の額の算定方法の定めがないときは「相当な額」<br />
となっています。</p>

<p  class="subcontent">現在のガイドラインでは受託者（出版社）の報酬額の算定方法について特に定めはありませんから，(2)の「相当な額」ということになります。上述のとおり，現在のガイドラインは「委託者」＝「受益者」＝著作者には配分をせず，全額を出版社の報酬とするという考えですが，このように全額を報酬としてしまった場合，報酬額は「相当な額」といえるのか，特に著作者サイドからは異論が出てくるかもしれません。</p>
<p class="subcontent">さらに，信託法では，(2)の場合には受託者（出版社）が信託財産から信託報酬を受けるには，受益者（著作者）に対し，信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならないことになっていますが，ガイドラインではこのような通知をすることについても書かれていません。</p><br />

<p class="subcontentW1">５　このように，信託という説明は，実際のガイドラインの内容を見る限りまだ違和感が残るところです。</p>

<h2>■ガイドラインに基づく信託と信託業法</h2>

<p>著作権の信託については，信託法の他に信託業法，そして著作権等管理事業法という法律も関係しています。少し複雑で，正確を期すとかえってわかりにくくなってしまいますので，以下ではわかりやすさを優先して簡略化した説明をいたします。</p>

<p><strong>１　「管理」を目的とする信託と「処分」を目的とする信託</strong></p>

<p class="subcontent">上述のとおり，信託法では，信託契約は，受託者が一定の目的に従い財産の<strong>「管理」</strong>又は<strong>「処分」</strong>及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約と定められています。そして，信託業法では信託の引き受け，簡単にいえば受託者となることを行う営業を「信託業」といい，この信託業を営むためには内閣総理大臣の免許を受けなければならないことになっています。</p>
<p class="subcontent">他方，著作権等管理事業法では，委託者が受託者に著作権を移転し，著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の<strong>「管理」</strong>を行わせることを目的とする信託契約を「管理委託契約」と呼んでいます。そして，この管理委託契約に基づく著作権等の管理を業としておこなうことを「著作権等管理事業」と呼び，この著作権等管理事業を行うためには文化庁長官の登録を受けなければならないとしています。</p>
<p class="subcontent">以上のとおり，信託業法と著作権等管理事業法をみると，著作権の<strong>「管理」</strong>を目的とする信託契約に基づいて受託者となることを事業として行う場合には，内閣総理大臣の免許が必要な信託業にも，文化庁長官の登録が必要な著作権等管理事業にも該当してしまうということになります。</p>
<p class="subcontent">これでは２重の規制になってしまいますから，著作権等管理事業法では，上述の著作権等管理事業については，信託業法の適用はないと定めています。</p>
<p class="subcontent">少しややこしかったかもしれませんが，今までのところをまとめると，このようになります。</p>

	<p><img src="images/clumn110729_1.jpg" width="497" height="198" alt="表１" /></p>

<p class="subcontent">あれ，と思う方がおられるかもしれません。この表によると，ガイドラインに従って出版社が著作者から著作権の信託を受けるためには，著作権等管理事業法による文化庁長官の登録が必要ということになってしまいます。でも，上述した，このガイドラインに準拠することを表明している67雑誌を発行している出版社22社の中で，そんな手続きをしているところはまずないのではないかと思います。</p>
<p class="subcontent">これにはもう一つからくりがあります。</p><br />

<p><strong>２　一任型の信託と非一任型の信託</strong></p>
<p class="subcontent">ここまでは著作権等管理事業法の「管理委託契約」について，著作権の<strong>「管理」</strong>を目的とした信託契約，と説明していましたが，実は「管理委託契約」からは，受託者（出版社）による著作物の利用の許諾に際して，委託者（著作者）が使用料の額を決定することとされているものが除外されているのです。要するに，委託者（著作者）が自分で使用料額を決定するのであれば，自分で管理しているのと同視できるから，いろいろな規制をする必要がないという考えによります。このような場合を「非一任型」と呼び，それ以外の場合を「一任型」と呼んでいます。</p>
<p class="subcontent">ですから，著作権の管理を目的とする信託でも，「非一任型」の場合は「管理委託契約」にはあたらず，したがって文化庁長官の登録も必要ないというわけです。ガイドラインもこのような考え方に立っているものと思います。</p>

<p class="subcontent">ただ，この考えは少し疑問の余地があります。ガイドラインに基づいた信託では，著作者に対する利益の分配は予定されていませんから，おそらく著作者としては，いつ，だれに対して，どのような条件で自分の作品の使用許諾がなされたのかを知る機会すら与えられない可能性が高いです。このような場合も「非一任型」と評価できるのでしょうか。もともと「一任型」と「非一任型」の区別自体があいまいだという指摘もあったところですが，今回のガイドラインによる信託ではこの点の疑問はますます大きくなるように思います。</p>

<p><strong>３　ガイドラインに基づく信託と信託業法</strong></p>

<p class="subcontent">さて，ここまでの説明を踏まえて，先ほどの図に「一任型」と「非一任型」の区別を書き加えてみましょう。</p>

	<p><img src="images/clumn110729_2.jpg" width="499" height="194" alt="表２" /></p>

<p class="subcontent">お気づきのとおり，右下の「信託業法の適用除外」の後に「？」を書き加えています。この点が，このコラムの最後のテーマです。</p>
<p class="subcontent">上述のとおり，ガイドラインは，著作権の管理を目的とする信託のうち，非一任型については，「管理委託契約」から除外されているから，著作権等管理事業法に定めている文化庁長官の登録は不要だと考えています。そして，それと同時に，信託業法の適用も除外されているという考えに立っているはずです。おそらく立法者の考えも同様だと思います。</p>
<p class="subcontent">ところが法律の条文だけを読むと，非一任型の著作権の管理を目的とする信託について，信託業法の適用が除外されているとも，除外されてないとも，どちらにも読める余地があるのです。</p>

<p class="subcontent">仮に，除外されるという理解に立つと，財産の管理を目的とする信託のうち，著作権の管理を目的とする非一任型の信託については，信託業法の規制も，著作権等管理事業法の規制も及ばないということになります。上述のように，「一任型」と「非一任型」の区別があいまいだという指摘がなされていることから考えても，両者の間にこれだけドラスティックな違いが生じることは少し疑問に思うところです。</p><br />

<h2>■最後に</h2>
<p>以上述べたことのほかにも，ガイドラインについては検討しなければならない課題があるように思います。</p>
<p>ただ，電子出版はまだまだ歴史の浅い分野ですから，これを円滑に進めるために，何らかの契約書のヒナ型やガイドラインは必要でしょう。その意味で，今回のガイドライン，丁寧な説明も併せて発表されたことも含め，試みとしては素晴らしいことだと思います。信託という構成に伴う問題も含め，今後さらなるブラッシュ・アップが期待されるところです。</p>
<p>ガイドラインがより良い内容のものとなり，各出版社や著作者にさらに広く受け入れられ，電子出版の世界が発展することを祈念してこのコラムを終えます。</p><br />

<p align="right">以上</p>
]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>「オプション・アグリーメントの交渉ポイント　～小説を映画化する場合を例に～」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000151.html" />
    <id>tag:www.kottolaw.com,2011:/column//3.151</id>

    <published>2011-06-29T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-13T07:25:06Z</updated>

    <summary>クール・ジャパンと言われて久しい。日本の文芸作品や漫画等は、世界中で高く評価され...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="契約" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[<p>クール・ジャパンと言われて久しい。日本の文芸作品や漫画等は、世界中で高く評価されている。日本のコンテンツは、日本のマーケットのみならず、言語や文化の壁を越えて、世界中のマーケットに発信できる力をもっているはずである。</p>
<p>しかしながら、多くのコンテンツホルダーは、これまで日本の中で分かりあえる相手とだけ交渉し、その信頼関係に頼り、何か問題になった場合には、後で協議すればよいだろうと期待する。その結果、契約交渉に必ずしも熱心ではなかった、というのが実情であろう。</p>
<p>そのような「温室育ち」のコンテンツホルダーに、ハリウッドのスタジオから、コンテンツを映画化し、多角的利用を前提とした、規模の大きいオファーが来る。そのような場合、どのような契約交渉をすればよいか。</p>
<p>本稿では、<a href="http://www.unijapan.org/library/unijapantext/post_1.html" target=_blank>経済産業省「平成22年度コンテンツ産業人材発掘・育成事業」プロデューサーカリキュラム/ユニジャパン</a>に寄せた筆者の原稿の一部を紹介する。</p>

<h2>１．オプション・アグリーメントとは</h2>

<p>例えば、小説を映画化する場合、ハリウッドのスタジオは、いわゆる原作契約を締結するに先立って、その小説の映像化がビジネスとして成立するかどうかを、ある程度長い期間をかけて、まず検証する。</p>
<p>この点、日本の当事者間では、たとえば半年程度の独占的な検討・開発期間を約束し、検討・開発期間が終わってから初めて正式に原作契約を締結するということも少なくない。また、独占的検討期間を得るのに、支払が伴わない場合も珍しくない。</p>
<p>ところが、ハリウッドのスタジオとの交渉は、多くの場合、まず、オプション・アグリーメントと呼ばれる契約の交渉をすることから始まる。</p>
<p>ハリウッドのスタジオでは、実際の小説の素材を利用して、スタッフを選定し、プロットを作成し、イメージボードを制作するなどし、制作資金を集めるといった作業を行うのが通常である。そのために、ある程度の期間を確保する必要がある。その期間内は第三者に小説の映像化その他の二次利用の権利を奪われないようにしたいが、その一方で、まだビジネスとして成功するかわからない状態で、原作使用料にあたる映像化権料すべてを払うのはリスクがある。</p>
<p>そのような場合に、小説の素材を使って映像化を検討できる独占的な期間、つまりオプション期間を確保して、オプション期間終了時までに映像化するかどうかを選択する権利（「オプション」）を行使できるようにする。このために締結するのがオプション・アグリーメントである。ハリウッドで頻繁に用いられている契約である。</p>

<h2>２．オプション・アグリーメントの内容</h2>

<p>オプション期間の獲得を希望する当事者（「オプション権者」；ここではハリウッドのスタジオ）は、一定の対価（「オプション料」）を、コンテンツ（プロパティーと呼ぶ）の権利者（「プロパティー権者」；ここでは日本の小説の出版社）に支払う。オプション料は、映像化権料の10％程度、オプション期間は、1年半程度であることが多い。</p>
<p>そして、オプション期間終了時までにオプション権者が映像化を決定した場合、オプション権者はオプション権を行使して、映像化権料を支払う。すでに支払ったオプション料は、映像化権料の一部に充当できるのが通常である。</p>

<p>オプション・アグリーメントに規定されるのは、通常、以下のような内容である。</p>

<p class="subcontent">(1) プロパティーの定義・範囲<br />
(2) Chain of Titleの提出<br />
(3) オプション期間中にオプション権者がプロパティーを利用して行える活動<br />
(4) オプション期間・オプション料　/　オプション期間の延長・オプション延長料<br />
(5) 映像化権料（およびオプション料の充当）<br />

(6) オプション行使の結果獲得する権利（映像化権）の範囲・内容<br />
(7) プロパティー権者に留保される権利<br />
(8) 著作者人格権の不行使　あるいは　クリエイティブ・コントロール<br />
(9) 制作された映像の権利帰属<br />
(10) プロパティー権者への追加支払い<br />
(11) プロパティー権者による表明・保証<br />
(12) 免責・補償条項<br />
(13) 救済手段の制限<br />
(14) 一般条項（不可抗力、完全合意、準拠法・紛争解決、譲渡禁止等）</p>

<p>つまり、オプション・アグリーメントは、<strong>映像化を検討している者に対して単に独占的な検討期間を与えるだけの契約ではなく、オプション権が行使された後に制作される映像の権利帰属・利用形態、経済条件等がすべて網羅されている、いわばプロパティーの今後の運命を左右しかねない、重要な契約</strong>なのだ。</p>
<p>そして、場合によっては、プロパティーに関するあらゆる利用が、プロパティー権者からはく奪されるような規定となっていることもあり、契約の締結にあたっては細部まで注意が必要である。</p>

<h2>３．交渉ポイント</h2>

<p>(1) プロパティーの範囲</p>
<p class="subcontent">映像化権の対象となるプロパティーの範囲は、（i）コンテンツに含まれるキャラクター、テーマ、ストーリーライン、風景、プロット、セリフ、衣装、などの要素だけでなく、(ii)　今後当該コンテンツに関して執筆される前篇、続篇、リメイク、スピンアウト（一部のキャラクターにスポットをあてた別ストーリー）その他のバージョンとこれらの上記要素も含む、と規定されている場合が多い。</p>
<p class="subcontent">この規定をそのまま見逃してしまうと、当該コンテンツやその派生作品について、今後一切利用できない事態になりかねない。</p>

<p class="subcontent">すなわち、オプション権行使の結果付与される映像化権は、制作した映像を、全世界において、永遠に、あらゆる媒体においてあらゆる形態の利用ができる権利と規定されていることが多い。</p>
<p class="subcontent">そうすると、コンテンツである小説が、今後シリーズ化し、多くの前篇、続篇やスピンアウト作品が執筆された場合でも、すべての映像化権とそのあらゆる利用権は、このたった1通のオプション・アグリーメントによって、オプション権者であるハリウッドのスタジオの手中におさまってしまう。すなわち、プロパティー権者である小説の出版社は、今後一切、この小説について、第三者と映像化の話、商品化等の二次利用の話ができなくなってしまうのだ。</p>
<p class="subcontent">映像化権料とのバランスにもよるが、どの範囲まで、プロパティーの映像化権を渡すのか、プロパティー権者として、慎重に検討すべきであろう。</p><br />

<p>(2) オプション権行使によって付与される映像化権の内容</p>
<p class="subcontent">(a) 地域・言語・期間</p>
<p class="subcontent">ハリウッドのスタジオが提示するオプション・アグリーメントでは、映像化権は、地域、言語、期間の制限なく付与される旨規定されていることがほとんどである。</p>
<p class="subcontent">もっとも、プロパティー権者の現在または将来的な利用のために、地域、言語、期間を制限する交渉の余地は十分ある。かかる場合には、全世界・あらゆる言語・永遠の場合に比べ、制限に相応の減額された映像化権料について交渉することとなるだろう。</p>

<p class="subcontent">(b) 権利の内容</p>

<p class="subcontent">映像化権の内容は、プロパティーを利用した映像の制作と、制作した映像（「本映像」）のあらゆる媒体・あらゆる形態による利用権を含むが、これに加えて、本映像の前篇・続篇・スピンアウト、リメイク等の派生的作品の制作およびそのあらゆる媒体およびあらゆる形態による利用権を含む場合もある。</p>
<p class="subcontent">映像の制作については、アニメや実写、コンピューター・グラフィック等の形態の区別なく原則として映像化権に含むとされるが、プロパティー権者の現在・今後の利用のために、一部の形態を制限する交渉は可能であろう。</p>
<p class="subcontent">プロパティー権者としては、次項に述べるように、自らコントロールしたい利用形態については、映像化権に含めず、自ら留保するよう交渉すべきであろう。</p>
<p class="subcontent">また、映像化権には今後開発される全ての媒体における利用も含む、と規定されることが多いが、新たな媒体については都度交渉を必要とするよう提案して交渉を試みることは可能であろう。</p><br />

<p>(3) プロパティー権者に留保される権利</p>
<p class="subcontent">オプション権の行使によって、映像化権をオプション権者に付与する場合でも、プロパティー権者は、自らコントロールしたい利用形態については映像化権に含めず、自らに留保していることを明記するよう、交渉すべきである。また、すでに映像作品が存在している場合も、その利用について留保されることを明記することも必要である。</p>
<p class="subcontent">小説の場合、プロパティー権者（出版社）に留保される権利として、たとえば、小説の出版権、翻訳権、電子出版権、オーディオブックの出版権、舞台化・上演権、前篇・続篇等を執筆して二次利用する権利等を明記する例もある。もっとも、前篇・続篇を執筆して二次利用する権利は、オプション権者の映像化権と競合する場合があるので、権利行使期間について一定の制限（ホールドバック）や範囲の制限を求められる場合がある。</p>
<p class="subcontent">また、プロパティー権者が、オプション権者の本映像の利用形態の一部について、優先交渉権・最終拒否権を獲得するような交渉も可能である。</p>

<p class="subcontent">たとえば、本映像の脚本やノベライズの出版については、少なくとも日本において、出版社であるプロパティー権者が優先交渉権をもつ、といった提案をすることが考えられる。</p><br />

<p>(4) 著作者人格権の不行使</p>
<p class="subcontent">経済的権利である著作権に関しては、映像化権の付与によって、オプション権者は映像の制作と自由な利用が可能となる。</p>
<p class="subcontent">しかし、著作権上改変自由であることが前提であっても、プロパティーの作者（小説家）の著作者人格権（特に、同一性保持権：意に沿わない改変に異議を申し立てることができる）を行使すれば、オプション権者の本映像の制作・利用に何らかの制限を課すことができる。したがって、著作者人格権の扱いについては、プロパティー権者（出版社）にとってオプション権者との大きな交渉ポイントとなる。</p>
<p class="subcontent">オプション権者としては、高額な映像化権料を支払う以上、創作面も含め、自由に制作して利用を行いたいと考える。そこで、著作者人格権を行使しないことを、プロパティー権者に求めることとなる。</p>
<p class="subcontent">これに対して、プロパティーの作者には、作品への思い入れがある。その世界観や基本的意図が、第三者による映像化およびその広範な利用によって長きにわたって損なわれることは耐えがたい。そのような作者のため、プロパティー権者（出版社）は、作者によるクリエイティブ・コントロールを行うことを、映像化の条件とすることを交渉することとなる。</p><br />

<p class="subcontent">これは、いずれも、オプション権者による著作者人格権不行使同意の要請と真っ向から対立する事項であるが、オプション権者にとってプロパティーの価値が極めて大きく、代替性がない場合、プロパティー権者には交渉の余地が大いにあるといえよう。</p>
<p class="subcontent">同時に、クリエイティブ・コントロールをある程度確保しておけば、広範な映像化権を半永久的に付与することとなるオプション権者に対し、今後のプロパティーの映像化を安心してゆだねることができる。</p>

<p class="subcontent">逆にいえば、<strong>クリエイティブ・コントロールがなされずに広範な映像化権だけ与えてしまった後では、今後自らまたは第三者による新たなプロパティーの映像化は望めない状況のなか、プロパティーの作者の意思に沿った活用が図られないこととなってしまうのだ。</strong></p><br />

<p>(5) 映像化権料・追加支払</p>
<p class="subcontent">オプション・アグリーメントにおける映像化権料は、プロパティーの映像化権付与の対価のみならず、本映像の利用の全ての対価をも含むケースが多い。そのような場合、プロパティー権者への追加支払いは原則として規定されない。</p>
<p class="subcontent">しかしながら、(a)二次利用に応じた追加支払、(b)一定の収益に応じたボーナス的追加支払、(c)新たな種類の映像（続篇・リメイク等）を制作する場合の追加支払などについて交渉すれば、これが規定される場合もある。</p>
<p class="subcontent">この点は、プロパティーの範囲、映像化権の範囲（留保される権利との関係）等を考慮のうえ、プロパティーの収益力を盾に交渉することが可能な点といえよう。</p><br />


<p>以上、原稿の一部の紹介ではあるが、詳しくは、<a href="http://www.unijapan.org/library/unijapantext/post_1.html" target=_blank>経済産業省「平成22年度コンテンツ産業人材発掘・育成事業」プロデューサーカリキュラム/ユニジャパン</a>を参照されたい。</p><br />

<p>コンテンツホルダーなら、コンテンツを大切にしたいと誰もが思うであろう。その想いは、契約の規定の中に反映して初めて実現できることを忘れないでいただきたい。</p>
<p>なお、本稿に記載したオプション・アグリーメントの内容や交渉ポイントは、いくつかの実際の取引をベースにしている。言うまでもないことだが、提案内容や交渉ポイントは、コンテンツの種類や性質によってさまざまであるので、本稿に記載したことが必ずしもあてはまらない場合もある。</p>
<p>実際の契約交渉においては、この分野に詳しい専門家のアドバイスを得て、専門家を通じてコンテンツの特質に応じた交渉をすることをお勧めする。</p>

<p><div align="right">以上</div></p>
]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>「 『全メディアアーカイブを夢想する』　―国会図書館法を改正し、投稿機能付きの　　　全メディア・アーカイブと権利情報データベースを始動せよ― 」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.kottolaw.com/column/000150.html" />
    <id>tag:www.kottolaw.com,2011:/column//3.150</id>

    <published>2011-05-30T15:00:00Z</published>
    <updated>2012-01-25T11:02:07Z</updated>

    <summary>	 本稿は、昨年度日本知財学会の秋季シンポジウムでおこなったスピーチに基づいてい...</summary>
    <author>
        <name>kottolaw</name>
        
    </author>
    
        <category term="著作権法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
        <category term="ＩＴ法" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.kottolaw.com/column/">
        <![CDATA[	

<p>本稿は、昨年度日本知財学会の秋季シンポジウムでおこなったスピーチに基づいています。スピーチの内容は、いわば拙著『著作権の世紀』第5章の続編と言えるものです。それは、「Googlization」と呼ばれる状況やそれに対抗するEUの戦略をにらみつつ、一種の思考実験として、日本が目指すべきと思えるメディア横断のアーカイブ案と、関連する法改正の方向を示したものでした。内容はその後同学会誌第7巻3号に掲載されたのですが、幸い幾人かの方から関心を寄せていただきました。学会誌はネット公開されていないため、編集部にご快諾いただき一部加筆してコラム化したのが本稿です。</p>
<p>何ぶん元が論文ですので、読みづらい点はどうぞご寛容を。また、特に記載がない限り、情報は2011年初頭のものに拠っています。</p><br />

<p>【概要】現在、情報世界を席巻するプラットフォームは、ほぼアメリカ系で占められたと断言して良い。EUは2008年、統合電子図書館「ユーロピアーナ」を立ち上げた。背景にあるのは文化の集積と流通をめぐるシビアな戦略的思考であろう。日本にも数多くの野心的なアーカイブの試みがあるが、「収集の壁」「権利処理の壁」「統合の壁」に苦しむ。</p>
<p>本稿では、ある種の思考実験として、日本が中期的に目指すべきと思える文化アーカイブのプロジェクト案を提示する（図表参照）。それは、文献・画像・映像などを横断する全メディア・アーカイブであり、通常の収集に加えて投稿機能を備える。ディジタル収録された作品が市販中の場合、権利登録データベースに登録した権利者が「公開」と指定しない限りは視聴できないが（オプトイン）、入手困難・権利者不明と判別された場合には、6ヶ月以内に権利者が「非公開」を指示しなければ視聴可能となる（オプトアウト）。視聴は有料とし、対価は権利者が自由に指定できる。</p><br />

<h2>１　『Googleとの闘い』と欧州電子図書館の誕生</h2>
<p>2005年、ヨーロッパで一冊の本が出版された。</p>
<p>元フランス国立図書館長、J・ジャンヌネー氏が著した『Googleとの闘い』という書籍である。<span class="alignsuper"><a href="#footnote1">[1]</a></span></p>
<p>同書は、世界最大のネット企業と化したグーグルが情報世界の覇権を握り、英語文化を中心に世界の文化が序列化されることに強い警鐘を鳴らし、当時のEU関係者に衝撃を与える。</p>
<p>それから5年、「グーグルの脅威」といった言説はすでに聞き飽きられたものとなり、ここで改めて紹介するまでもないだろう。</p>
<p>過去数ヶ月はアップル社にニュースの主役を奪われがちとはいえ、同社は、世界各国で圧倒的シェアを握る検索エンジンの最大手であり、検索連動型広告という手法を確立したネット広告の革新者であり、世界最大のアクセス（Page View＝PV）数を誇るネットサイトであり（子会社であるユーチューブも世界3位のPV数を誇り、Alexaによれば両者を合わせたPV数は世界5位までの他の企業、すなわちFacebook、Yahoo!、マイクロソフトLiveを合わせたよりも多い）<span class="alignsuper"><a href="#footnote2">[2]</a></span>、そして作品など社会に散在する情報を取り込んでユーザーに提供する「アグレゲート型」サービスの代名詞的な存在である。</p>
<p>たとえば、2009年から日本でも大きな話題となったグーグル・ブックスは、古今の書籍をスキャンして電子書籍化するプロジェクトであり、世界最大の動画投稿サイトユーチューブには、本稿執筆時点で1分あたり35時間以上の動画が世界各国から投稿され1日20億ビュー以上の視聴を集める。大量のネットニュースを自動収集して体系化・リンクするグーグル・ニュースや、世界中の街並み写真を提供するストリート・ビューなど、全てのサービスが我々のネットライフに大きなインパクトを与えた。</p>

<p>グーグルを筆頭に、世界2位のPV数を誇り日本でもユーザーが急拡大するSNS「Facebook」、音楽を皮切りに世界のコンテンツ配信を統合しつつあるアップル、「電子書籍元年」の起爆剤であり、eコマースの覇者たるAmazon、日本でもユーザーが1100万人を超えたTwitter、非営利事業ながらPV数世界7位にまで成長したWikipediaなど、現在ネットを席巻するサービスのほとんどはアメリカ発であり、およそプラットフォームは全て米国系で占められたと断言して良い状態だろう。</p>
<p>こうした企業の中には世界に支社を持つものもあるが、なおその本拠地は米国であり、アメリカの文化・経済や法制度の強い影響下にある民間企業であることは間違いない。『Googleとの闘い』の筆者は、来るべきネット社会において、情報の流通を米国の一部企業に握られ、グーグルを特徴づける「ランク付け」により英語以外の文化情報は「2ページ以下＝下位」にランクされることで益々周辺に追いやられることを危惧したのである。</p>
<p>同書に対するEUの反応はすばやく、同年には欧州統一の巨大電子図書館<a href="http://www.europeana.eu/portal/" target="_blank">「ユーロピアーナ」（Europeana）</a>プロジェクトがスタートした。これはヨーロッパ各地の電子アーカイブを統合したもので、既存のディジタルアーカイブを結びつけるがゆえにその「収録数」の伸びはすさまじい。2010年には、2008年の立ち上げ時の約7倍にあたる、1400万部のディジタル化された文献・画像・動画・音楽が無料で公開されている <span class="alignsuper"><a href="#footnote3">[3]</a></span>。その最大の特徴はメディア横断という点にある。ユーロピアーナでは現在、ユゴーの「レ・ミゼラブル」もゴッホの「ひまわり」も、同じ画面上で検索し観賞することができる<span class="alignsuper"><a href="#footnote4">[4]</a></span>。</p>
<p>急速な対応の背景にあるのは、「文化の集積と流通を支えるのは、域外の一民間企業ではなく、中立的で安定した地域内の公共セクターであるべきだ」というシビアな戦略的思考であろう。それを支えるのは加盟各国のディジタル化プロジェクトであり、旗振り役といえるフランスでは、サルコジ大統領の肝いりで文化資産のディジタル化に1000億円以上の巨大予算を計上している。</p><br />

<h2>２　苦闘する日本</h2>

<p>我が日本にも、数多くの野心的なアーカイブの試みがある。</p>
<p>代表例は、国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」などのプロジェクトだろう。すでに約17万冊の明治・大正期書籍がディジタル化されて無料公開されているほか、国会図書館では更に1968年までの90万冊について、追加ディジタル化を進行中である（2010年12月時点で累計38万8000冊を電子化済み）。同館の長尾真館長は、ディジタル化した書籍を一般家庭にも有料配信し、その配信収入を作家・出版社といった権利者に分配する意欲的な私案を公表しており<span class="alignsuper"><a href="#footnote5">[5]</a></span> 、その実現を目指して作家・出版社との協議も進む<span class="alignsuper"><a href="#footnote6">[6]</a></span> 。民間の書籍アーカイブではこのほかに、非営利のボランティアが手入力したテキストデータを無償提供する「青空文庫」の果たした役割は大きい（1997年創始。2009年時点で所蔵8500点）。</p>
<p>他のジャンルでは、映画の収集・修復をおこなう国立近代博物館フィルムセンター、NHKアーカイブス・NHKオンデマンドなどの放送番組ライブラリー（前者は、2009年現在でニュース除いて57万5000番組を所蔵し約6500番組を公開）、日本放送作家協会などの「脚本アーカイブズ」、日本レコード協会ほかによる歴史的音盤アーカイブなど、意義ある取り組みが数多い。</p><br />

<p>しかし、これら国内アーカイブの多くは困難に直面中とされ、運営をめぐる労苦をしばしば耳にする。</p>
<p>たとえばそれは、作品の収集・保存・修復に費やすヒト・カネ・ノウハウの全てが不足しているという「収集の壁」であり、収集してもディジタル化・公開のための必要な権利処理が行えないという「権利の壁」であり、そしてそれぞれのデータベースが孤立しており連携が十分にとれないという「統合の壁」である。</p>

<p>日本に限らない世界共通の課題として、アーカイブの権利処理の苦労に拍車をかけるのは権利者不明の「孤児作品」の多さであろう。かつて、国会図書館で明治期図書の著作権が切れているかを調査したことがある。すると、全7万人強の著者の7割以上について、連絡先はもとより没年もわからなかった<span class="alignsuper"><a href="#footnote7">[7]</a></span>。明治期図書ならば権利者不明が多いのは当然とも言えるが、放送番組のように多数の権利者（スタッフ・出演者）が関与するジャンルでも、権利者不明のケースが多いことはつとに指摘されている<span class="alignsuper"><a href="#footnote8">[8]</a></span>。</p>
<p>言うまでもないが、権利者が不明ならば許可は取りようがない。</p><br />

<p>こうした「権利処理の壁」を乗り越えるべく、多数の作品の権利情報を集約的に管理し事業者が利用許可を一括で取得できるような、「権利の集中管理」についての取り組み・提言は多い。</p>
<p>我が国にはすでに、権利の集中管理をおこなう著作権等管理事業者は少なくないが、代表的な存在は、言うまでもなく日本音楽著作権協会（JASRAC）だろう。同団体は、オンライン・データベース「J-WID」に搭載された作品数だけで国内外約269万曲（2010年4月時点）とされ<span class="alignsuper"><a href="#footnote9">[9]</a></span>、ほとんどのプロフェッショナルの音楽作品の権利を一括管理していると言っても過言ではない。</p>
<p>音楽に比べると、他の文化ジャンルでの権利の集中管理化はまだ道半ばと言える。文芸・放送脚本・映画シナリオの分野では、いわゆる文芸三団体（日本文藝家協会、日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会）が各ジャンルの作家から委託を受けて作品の権利を管理している。このうち委託数が最も多い文藝家協会の「委託作家リスト」によれば、同協会が権利を管理する作家数は3511 名（2009 年時点）である<span class="alignsuper"><a href="#footnote10">[10]</a></span>。これは一面においては十分に多いが、国会図書館所蔵和書の作家数が合計70万名を超えることを思えば網羅的と言うにはまだ遠く、かつ、ステークホルダーである出版社の権利問題という課題を残している。そのため、電子書籍をめぐって2010年に立ちあがった「ディジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」（いわゆる三省懇）による「書籍版JASRAC」の提唱など<span class="alignsuper"><a href="#footnote11">[11]</a></span> 、書籍分野での権利の集中管理化も模索される。</p>

<p>映像分野でも、経団連によって「映像版JASRAC」構想が提言されるなどしていたが、2009年には日本芸能実演家団体協議会（芸団協）・日本音楽事業者協会（音事協）などの実演家関連団体によって、映像分野での著作隣接権処理を一本化するための映像コンテンツ権利処理機構（aRma）が立ち上がった。</p>
<p>そのほか、「Japan Contents Showcase」、「著作権問題を考える創作者団体協議会」ポータルサイト、いわゆる任意登録制構想など、権利の集中処理や権利情報の一括提供をめぐっては、多数の提言・プロジェクトが混在する。</p><br />

<h2>３　全メディア・アーカイブに関する試案</h2>
<p>こうした状況を踏まえて、以下では今後5～10年間の中期目標として、日本が（あえて「国策」として）目指すべきと思える文化アーカイブのプロジェクト案を提示する。（図表参照。もっとも、言わば前述の「ユーロピアーナ」、賛否両論を呼んだ「グーグル・ブックス和解案」<span class="alignsuper"><a href="#footnote12">[12]</a></span>、及び長尾国会図書館長の構想を参考に、どんな仕組みなら権利者も「乗れる」のかを想像してみたもので、あくまで議論の対象を提示するための筆者の思考実験若しくは夢想に近い。）</p><br />

<p id="DraftMediaarchive"><strong>（図表）全メディア・アーカイブ試案</strong></p>
<p><img src="images/draft_mediaarchive.jpg" width="500" height="380" alt="（図表）全メディア・アーカイブ試案" /></p><br />

<p class="simpleborder"><strong>　　　　　公開のルール</strong><br /><br />

 ・ パブリック・ドメインのもの、ＣＣライセンスなどあるもの<br />
 　 ⇒ 無料公開<br />
 ・ 市販中の作品、海外作品<br />
 　 ⇒ 権利者の指示により公開・価格設定可（オプトイン）<br />
 ・ 品切れなど入手困難、権利者不明作品<br />
 　 ⇒ 6ヶ月予告し、権利者の反対がなければ公開。<br />　　　 その後も価格変更・停止可（オプトアウト）<br />

</p>

<p><strong>1) 全メディア・アーカイブとする</strong></p>
<p>ディジタルに垣根はない。また、美術館のアーカイブにメディアアート作品（映像）が収録されるように、メディアミックス的な領域も生まれている。映像アーカイブと脚本アーカイブを別個にすることは必ずしも望ましくないように、スケールメリットやワンストップ・ショッピングの便宜を考えれば、ユーロピアーナに見られるような<span class="underline">ジャンル横断的な全メディア・アーカイブ</span>が望ましい。</p><br />

<p><strong>2) プラットフォームを担うのは非営利セクター</strong></p>
<p>アーカイブ事業の大半は、営利セクターでのビジネスとしては成立しづらく、公共的な資金を用いなければ安定的な展開は難しい。公共資金を導入した全メディア・アーカイブの運営主体としては、新たな独立行政法人や民間非営利法人も考えられるが、独立性が高くディジタルアーカイブとしてのノウハウもある<span class="underline">国立国会図書館</span>も有力候補であることは間違いない。</p>
<p>無論、日本にはすでに先行の意欲的なプロジェクトやアーカイブが存在する。これらのアーカイブのノウハウや独自性は無論これからも尊重されるべきであろう。そこで、全メディア・アーカイブは独自の作品収集を続けながらも、こうした<span class="underline">既存アーカイブに相互接続</span>を呼びかけ、その検索と後述する課金・決済のプラットフォームとしても機能するのが現実的だ。</p><br />

<p><strong>3) 市販中作品はオプトイン、入手困難・権利者不明作品はオプトアウト</strong></p>
<p>作品のディジタルデータの収集は、これまで国会図書館でおこなって来た納本制度、フィルムセンターや美術館・博物館がおこなって来た個別の収集と連動させる。ただし、ディジタルデータがアーカイブに収録されても、著作権の保護期間が切れた（パブリック･ドメインの）作品を除いてただちにはネット公開されない。</p>
<p>収集後、作品は「市販中」か「入手困難・権利者不明作品」かが判別される。市販中の作品は、作品名と小サイズのサムネール画像だけがアーカイブ画面上で表示される。</p>
<p>全メディア・アーカイブと同時に、<span class="underline">作品の権利登録データベースを設置</span>する。アーカイブとは独立でも良いし、可能ならば既存の権利情報データベースを相互に結びつける形でも良い。</p>
<p><span class="underline">市販中の作品の場合</span>、権利登録データベースに権利者が登録の上「公開」と指定しない限りは公開されることはない。つまり原則は配信されず、権利者の許諾があった場合だけ配信される「<span class="underline">オプトイン</span>」である。</p>
<p>他方、<span class="underline">入手困難・権利者不明作品と判別された場合</span>には、収集後に権利登録データベース上をはじめ、国内のわかる範囲の権利者に「公開準備中」と通知される。以後、6ヶ月以内に権利登録データベースに登録した権利者が「非公開」を指示しなければ、公開される。すなわち、権利者が反対の指定をしない限りは配信される「<span class="underline">オプトアウト</span>」である。無論、いったん公開された後も権利者が指定すればオプトアウトは可能とされる。</p>

<p>なお、権利登録データベース上は、ひとつの作品（ディジタルデータ）について、著作権や隣接権などの権利ごとに「権利行使者」はひとり（一社）を登録する形をとる。たとえば作家と出版社であれば、権利を行使する者を取り決めない限り、データベースに登録したり使用料を受領することはできない。無論、「行使者」はいつでも変更可能。仮にひとつの作品について複数の権利者が登録しようとすれば、当事者同士の協議が求められる。意見をまとまらない限りはアーカイブで公開はされない。</p>
<p>こうすることで、時に当事者間の契約の曖昧さがネックになる日本のコンテンツ流通状況の整理を加速することが期待される。</p><br />

<p><strong>4) 課金・決済機能を持たせる</strong></p>
<p>アーカイブからの作品視聴方法としては、<span class="underline">パブリック・ドメインのものは無償でダウンロード可能</span>とし、<span class="underline">保護期間中のものは視聴のみでダウンロード不可、若しくは事実上「貸出し」と同様になるようにダウンロードから数日後に視聴不能</span>にする。そして、<span class="underline">パブリック･ドメインのものを除いて視聴やダウンロードは有料</span>とし、オンライン決済を可能にする。</p>
<p>徴収された対価は全メディア・アーカイブ／権利登録データベースの手数料を控除した後、権利者に分配される。その配分実務は既存の権利者団体に委託するなど、すでにあるリソースの活用をはかる。</p><br />

<p><strong>5) 価格決定権は権利者に</strong></p>
<p>価格は、閲覧若しくは貸出し類似のみのサービスであることも考慮して「図書館・美術館へ通う電車・バス賃程度」<span class="alignsuper"><a href="#footnote13">[13]</a></span> を念頭においた200～400円の金額を標準の設定とするが、権利登録データベースに登録した<span class="underline">権利者が価格を指定できる</span>。人気があれば高くするのも自由だし、逆に無料にもできる。極端な話、貴重な専門書の作家が自著の数日間の「貸出し」の対価を1万円にしても構わない。バランスを失した価格ならば、誰も視聴しない結果となる。</p><br />

<p><strong>6) 投稿機能を備える</strong></p>
<p>書籍以外のジャンルの作品についても現在の「納本制度」的なルールを検討しても良いが、いずれにせよ過去の作品については収集するほかない。フィルムセンターなどの例を挙げるまでもなく、この収集が難事業である。散逸している作品はおそらく多い。</p>
<p>他方、ユーチューブのような投稿サイトでは、貴重な映像が豊富に見られることは時に驚くほどである<span class="alignsuper"><a href="#footnote14">[14]</a></span>。そこで、全メディア・アーカイブでもこうした関係者やユーザーの自発的な提供に期待して、<span class="underline">作品は誰でも投稿できる</span>ようにする。</p>

<p>ただし、言うまでもないが権利処理が必要なので、ユーチューブなどと異なり<span class="underline">パブリック･ドメイン作品以外はすぐには公開しない</span>。市販作品ならば、やはり「オプトイン」の対象となる。つまり、投稿があったという事実とサムネール画像だけは表示する。公開して欲しいという人々のリクエストを投票できるようにしても良い。権利登録データベースを通じて、権利者の認証を確認できれば公開される。</p>
<p>他方、「入手困難・権利者不明作品」と判断されれば、やはりわかる範囲の権利者に6ヶ月予告をおこない、期間中に「オプトアウト」がなければ公開される。その後も、権利者が現れればいつでもオプトアウトは可能である。</p><br />

<p><strong>7) 海外作品もオプトイン</strong></p>
<p><span class="underline">以上は、国内作品について</span>であり、海外作品についてはベルヌ条約などの国際条約の壁があるため、パブリック･ドメイン作品を除けば安易に「オプトアウト」の対象にできない。無論、収集・投稿された海外作品についてもオプトインは広く呼びかけ、権利登録データベースを通じた権利者の許諾があれば、海外作品も公開される。</p><br />
<p>以上の概念図が<a href="#DraftMediaarchive">上記の図表</a>となる。</p><br />

<h2>４　導入の理由と危惧</h2>
<p>こうしたプロジェクト案、若しくは夢想に対しては、言うまでもなく多くの懸念や批判が予想される。以下、想像される幾つかについて考えてみよう。</p><br />

<p><strong>1) 図書館無償論</strong></p>
<p>「図書館は万人に開かれた文化のオアシスであり、その恩恵は無償にて平等に万人に与えられなければならない」という発想から、有償での配信には抵抗を覚える意見があるかもしれない。</p>
<p>しかし、同じように公費の補助を受け、同じように文化のオアシスであるはずの美術館・博物館は有料が常態化し（博物館法第23条参照）、無償でなければならない論理必然性はない。ネット配信を無償でおこなえば、図書館での通常の貸出しよりははるかに多くの人々に視聴され、その結果として正規市場を侵食する可能性は高まる。しかも図書館での貸出しはその前提として書籍が購入されているがアーカイブではそれもない。</p>
<p>何より、現行法では配信ビジネスには権利者の許可が必要であるのだから、無償にこだわれば提供できるコンテンツはパブリック･ドメインのものなど数が限られて来る。万人への提供にこだわるあまり、提供されるコンテンツ数が限定されては本末転倒であろう。</p>
<p>図書館が万人に開かれるべきだからといって、図書館に来るための電車・バス賃の助成は出ないのだから、数百円をデフォルトとするアクセス料金を徴収しても、それが図書館の使命に反するとは思えない。</p><br />

<p><strong>2) 「なぜ税金を使うのか」「民間でやるべき」「民業圧迫である」との意見</strong></p>

<p>おそらくこうした意見は強いだろう。いずれももっともな懸念である。</p>
<p>公共のサポートによっておこなう第一の理由は、こうした全文化アーカイブは社会インフラだからである。日本は今もって国費だけで約6兆円の税金を道路などの公共事業工事に投資している国である<span class="alignsuper"><a href="#footnote15">[15]</a></span>。こうした公共工事の中には無論必要なものもあろうが、不要不急なものも多いなど多くの社会論争を招いている（311後の世界では、ますます公共工事のあり方はゼロベースで見直す要請が強まった）。情報社会にあって、文化アーカイブは道路に劣らず重要な情報産業の基礎と考えるならば、公共事業に費やす税金のごく一部をこうした情報の公共インフラに割いて良いだろう。科学技術振興などと同様、あくまでも財源の適正配分の問題であるので、財政緊縮をはかりつつ必要額を割くことは決して不可能ではない。</p>
<p>第二に、こうしたアーカイブによる収益はほとんどが権利者に還元され、また、権利者の指定により何時でも配信は停止できる。その意味で、原則として民業圧迫は生じにくい</p>
<p>第三に、市販作品はそもそも権利者が個別に許諾（オプトイン）しなければ配信対象にならない。おそらく少なからぬ商業作品は、（プロモーション的な部分配信を除いて）配信されないだろう。コマーシャルな作品は独自のマーケティング戦略をもって市場で勝負すべきであり、そうでなければ高額な売上は望めないからである。</p>
<p>第四に、世界に存在するほとんどの作品はこうしたコマーシャルなマーケットでは流通していないか、問題になるほどの売上をあげていない。それらは民間での展開はおそらく難しいだろう。</p>
<p>競合があるとすればアップルApp Store、グーグルなどアメリカ発の配信プラットフォームである。しかしながら、アーカイブ的な幅広い文化の提供事業は、情報の安全保障、文化の序列化への対抗の視点、文化振興・産業育成、公平性と安定感のいずれの観点からも、海外企業が寡占することは必ずしも望ましくない。</p><br />

<p><strong>3) 「なぜオプトアウトなのか」との疑問</strong></p>

<p>現在、日本で進行中・計画中のアーカイブはほとんどが権利者の事前許諾を得る「オプトイン」型と、権利の切れた作品を公開する「パブリック・ドメイン」型である。（これに、権利者が不明の「孤児作品」については、文化庁長官の利用裁定という制度を利用する形がまれに組み合わされる。）</p>
<p>当然であり、現行法を前提にするならこれらの形しかとれない。進行中の計画はどれも意義深く、筆者の関わっているものを含めて、大きな可能性を秘めている。</p>
<p>しかし、他方において「オプトイン」型では過去の膨大な作品を数百万点規模で収集公開する「全文化アーカイブ」は、少なくとも数十年間は達成不能であることも、ほとんど間違いない。その理由は他所で何度も述べたので繰り返さないが、一言でいえばさほどの売上が望めない過去の大半の作品について、いちいち権利者を探し出して交渉し、許可を貰うことは難しいからである。「電子書籍元年」にあって電子書店の品揃えがいずれも3万点前後に留まったことに、上記は端的に現れている。</p>
<p>もしも社会が、過去の膨大な文化資産が収録され、そして権利者に収入配分のできるアーカイブを必要とするならば、（同じくらい膨大な税金をつぎ込まない限り）そのための仕組みはおそらく「オプトアウト」しかない。無論、この仕組みには後述するような法改正が必要である。そのため、5～10年間の中期的なビジョンと断ったのである。</p><br />

<h2>５　必要な法改正</h2>
<p>以上の仕組みを稼動させるためには、幾つかの関連法令の改正が必要となる。</p><br />

<p><strong>1) 国会図書館法</strong></p>
<p>仮に国会図書館がアーカイブを担うなら、全分野アーカイブの設置、ディジタルデータの収集、公開及び課金決済、そのための人的体制、並びに権利管理データベースの設置（運営主体たる別法人を含む）、権利者・作品の登録及び使用料の配分についての大幅な法改正が必要となる。</p><br />

<p><strong>2) 著作権法</strong></p>
<p>著作権法の現行31条に新たな項を置き、&#9312;国会図書館の運営するデータベースでの提供に供するための同館その他の者による日本の著作物等の複製、&#9313;同データベースを経由した当該著作物の小規模な画像（＝サムネール）の公衆送信、並びに、&#9314;入手困難・権利者不明と判断された当該著作物等について、同データベースを経由した公衆送信を許すこととする。</p>
<p>ただし、前記&#9314;については、権利者が政令で指定する登録団体に登録の上要求した場合には、公衆送信は停止される。また、教育目的などの一定の非営利利用を除いて、適正な対価が利用者から徴収され、登録した権利者に支払われるか、登録権利者が存在しない場合には、将来の権利者からの請求に向けて適正な引当金を積み立てた後に、残額は文化振興若しくはかかるデータベースの運用に利用される、とする。</p><br />

<p>なお、保護期間を確定しづらい映像著作物については、旧著作権法からの経過規定を改正し、パブリック･ドメイン作品としてアーカイブに収録したりその他活用できる時点を明確にする。すなわち、旧法時代の映画について現行法での計算期間（公表後50年若しくは70年）が終了している場合、著作者の確定の有無に関わらず「作品に映画監督として表示された者の死後38年を超えては保護期間が続かない」ことを明確にする（映画の著作権の保護期間については、コラム「<a href="column_110530_1.html" taeget="_blank">古くて新しくて悩ましい―　映画の著作権保護期間について</a>」を参照）。</p><br />

<h2>６　小括</h2>
<p>繰り返すが、以上は現実味に乏しく乱雑な、筆者の思考実験に過ぎない。それを実行しようとすれば、幾多の問題が浮き彫りになって計画は抜本的な見直しを迫られるだろうし、その実現には多くの困難を要するだろう。</p>
<p>しかし、現実に市場での自然発生的なプロジェクトだけでは、（一部の意欲的な事業を除いて）文化資源の配信・アーカイブが十分には進んで来なかったのも事実である。他方で、この程度の思いきった対応をとらない限り、文化のディジタル配信市場では米国発サービスによる寡占化が今後も進むであろうというのも、あながち的外れなシナリオではない。</p>
<p>できる分野から、本書の示すような方向に向かっていこうという意見は、決して少なくはあるまい。誤りがあれば、レビューをおこない直して行けばよい。ディジタルも、著作権も、永遠のβ版でありそれ自体が壮大な社会実験なのだから、これは当然だ。全てが実験である以上、様々なプロジェクトにわざわざ「実証実験」などという堅苦しい名前をつける必要もない。プロジェクトの出来を定期的に検証するのが当然なら、出来が悪いものを修正したり止めるのも当然なのである。</p><br />

<p>本稿の元となる小論を書いて以後、東日本大震災により私たちの周囲の世界は一変したように見える。しかし、突然に住む家と町と暮らしを奪われた避難者たちが、わずか数時間許された一時帰宅で持ち帰ろうとしたものは、私たちに大事なことを思い起させてくれる。それは、大切な人々の写真であり、懐かしい手紙であり、愛読した本であった。そこで守られようとしたものは、家庭やコミュニティの記憶＝「アーカイブ」に他ならない。</p>
<p>懐かしい記憶を、素晴らしい文化の蓄積を、米欧がともに達成していない独自の仕組みで保存し必要とする人々に提供できれば、その価値ははかり知れない。となればこうした夢想にも、あるいは幾ばくかの意味があるかもしれない。</p>
<p class="alignright">以上</p>

<img src="images/line_dot.gif" width="466" height="1" alt="" /><br />
<p><strong>脚注</strong></p>
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<dl class="footnote">
<dt id="footnote1">[1]</dt><dd>翻訳書：ジャン－ノエル・ジャンヌネー著・佐々木勉訳『Googleとの闘い　―― 文化の多様性を守るために』（岩波書店・2007年）</dd>
<dt id="footnote2">[2]</dt><dd><a href="http://www.alexa.com/" target="_blank">http://www.alexa.com/</a> より</dd>
<dt id="footnote3">[3]</dt><dd><a href="http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/10/1524" target="_blank">http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/10/1524</a></dd>

<dt id="footnote4">[4]</dt><dd>もっとも、検索後に作品をクリックすると、該当する各国のディジタルアーカイブにジャンプするケースが多く、肝心の「検索以後の統合」は今後の課題である。</dd>
<dt id="footnote5">[5]</dt><dd>三瓶徹「<a href="http://www.iajapan.org/Review/pdf/IAJReviewVol10-1.pdf" target="_blank">動き出す国会図書館の「電子書籍配信構想」</a>」ほか参照</dd>
<dt id="footnote6">[6]</dt><dd>2009年11月5日「<a href="http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2009/1188240_1393.html" target="_blank">日本書籍検索制度提言協議会の設立について</a>」</dd>
<dt id="footnote7">[7]</dt><dd>2007年4月27日文化審議会・<a href="http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm" target="_blank">過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会における国会図書館の報告</a></dd>

<dt id="footnote8">[8]</dt><dd>石井亮平「NHKオンデマンド　著作権等の契約ルールと今後の課題」コピライト2009年5月号、梶原均「報告：NHKオンデマンドの1年」同2010年3月号　参照</dd>
<dt id="footnote9">[9]</dt><dd><a href="http://www.jasrac.or.jp/profile/outline/index.html" target="_blank">http://www.jasrac.or.jp/profile/outline/index.html</a></dd>
<dt id="footnote10">[10]</dt><dd><a href="http://www.bungeika.or.jp/wlistframe.html" target="_blank">http://www.bungeika.or.jp/wlistframe.html</a></dd>
<dt id="footnote11">[11]</dt><dd><a href="http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu02_02000034.html" target="_blank">2010年6月28日同懇談会報告</a></dd>
<dt id="footnote12">[12]</dt><dd><a href="http://books.google.com/intl/ja/googlebooks/agreement/" target="_blank">http://books.google.com/intl/ja/googlebooks/agreement/</a> ほか</dd>

<dt id="footnote13">[13]</dt><dd>前掲三瓶、<a href="http://www.hummingheads.co.jp/column/seminar/seminar89.html" target="_blank">http://www.hummingheads.co.jp/column/seminar/seminar89.html</a> ほか</dd>
<dt id="footnote14">[14]</dt><dd>たとえば、本稿執筆現在、同サイトで「のらくろ」というキーワードを検索すれば、約80の動画がヒットする。その中には、戦前の「のらくろ」ドラマのレコード盤を音声再生･収録したものや戦前の「のらくろ」無声映画、DVDなどが発売されていない歴代の「のらくろ」アニメや雑誌付録など、入手困難な作品が多数見出される。このように、ユーチューブは現在すでに、動画ばかりでなく（代替的受け皿の不在ゆえに）画像や音源の投稿型アーカイブとしても良かれ悪しかれ機能していることは示唆に富む。</dd>
<dt id="footnote15">[15]</dt><dd>2010年度国家予算額。</dd>
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</dl>]]>
        
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