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コラム column

2017年11月28日

文化・メディア著作権法裁判

「図書館とコピーの(実は)複雑な関係 ~スマホで撮っちゃダメですか?~」

弁護士 唐津真美(骨董通り法律事務所 for the Arts)

今は、自宅のソファに座りっぱなしでも電車で移動中でも、ネットで手軽に本を探して買って、早ければ当日中に本を受け取ることができる時代です。(21世紀生まれの皆さん!!ちょっと前までは違ったんですよ~。)そんな現代でも、原則無料で本を利用できる図書館が貴重な存在であることには変わりありません。本を借りて、自宅近くのコンビニでコピー。本を借りるまでもないと思ったら、図書館内のコピー機を利用。頁の一部や図表だけが必要なら、スマホで写真を撮った方が早いしタダだし便利!・・・著作権のことを知っている人なら、これらの行為を「"私的使用目的の複製"だからOKだよね」と思っているかもしれません。しかし実は、このような利用行為は、著作権法上それほどシンプルに認められている訳ではないのです。以前別のところで図書館における撮影禁止について解説したのですが、スペースの関係もあって著作権法の細部には踏み込むことができなかったので、今回はあらためて、図書館とコピーの複雑な関係について書きたいと思います。

● 私的使用目的の複製について簡単なおさらい

図書館に収蔵されている資料は、その大多数が、文字や写真、絵などで構成されている著作物です。著作物をコピーしたり写真撮影したりする行為は著作物の複製にあたるので、無断で行えば著作権侵害になるのが原則です。
ただし、著作物の複製については、私的使用目的であれば、使用する本人は、著作権者の許諾を得なくても著作物の複製ができる、という例外規定があります(著作権法(以下「法」)第30条)。
なお、「私的使用」の意味について、「少数のコピーなら大丈夫」と考えている人も多いようですが、著作権法上の「私的使用」の範囲は「個人的又は家庭内その他これに準じる限られた範囲」という狭いものです。業務上のコピーは私的使用目的にはあたらないと一般的に考えられているので注意してください。
ちなみに、社内で文献をコピーする場合については、出版団体や学会によって構成される公益社団法人日本複製権センター(JRRC)を通じて、包括的な許諾を得る仕組みもあります。業務上のコピーについて気になる方は、確認してみてください。

● コンビニにあるコピー機でコピーするのは違法?

では、私的使用目的の複製(以下で何度も出てくるので「私的複製」といいます)であれば、コンビニのコピー機で本を丸ごとコピーすることも可能なのでしょうか。
実は、私的複製を認める法第30条の後半には、気になる文言があります。


著作権法第30条(私的使用のための複製) (抜粋)


著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内おいて使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。


一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合


(以下 略)

法第30条1項1号によれば、基本的に誰でもアクセスできるような場所に設置されている、誰でも簡単に複製できる機器を使って複製する場合は、「私的複製」としての例外的な取り扱いが認められないにことになります。コンビニに置いてあるコピー機は、まさに「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」に該当するでしょう。あれ、ではコンビニのコピー機で本をコピーすると、著作権侵害になってしまうのでしょうか?

ここでさらに細かい話になりますが、著作権法は、「当分の間」は、暫定的に、「文書又は図画」については法第30条1項1号の「自動複製機器」から除外することを定めています(著作権法附則第5条の2)。この附則の規定があるため、コンビニ等に置いてあるコピー機で私的使用のために文献をコピーしても、著作権侵害にはなりません。私的複製については複製の範囲に関する制限もないので、図書館で借りた本をコンビニに持って行って1冊全部をコピーしても、現時点では法的に問題はないことになります。これで一安心です。(暫定的な措置なので、いずれ取扱いが変わる可能性はありますが・・・。)

● 「コピー代行業者」利用は違法?

「私的複製」は、使用する人が自ら複製することが必要です。この点に関しては、いわゆる「自炊代行サービス」の適法性が裁判になったことを記憶している方も多いでしょう。紙の書籍をスキャンして電子データ化する行為(いわゆる「自炊」)も「複製」にあたり、私的使用目的で自炊行為を行うことについては著作権者の許諾は不要ですが、自炊を代行してくれるサービスに関しては、主に「誰が複製をしているのか」という点をめぐって訴訟になりました。裁判の詳細については本稿では触れませんが、結論として、知財高裁は「複製行為の主体とは、複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。」と述べ、問題となった自炊代行サービスの業者は、営利を目的とする独立した事業主体として複製行為を行っているので、複製行為の主体は自炊代行業者と判断して、「私的複製には当たらない」という結論を出しました(知財高裁2014年10月22日判決。上告棄却)。
複製行為の主体に関する上記の考え方は、コピー機による複製にも当てはまるはずなので、たとえ私的使用目的であっても、書籍を預けてコピーしてもらうようなコピーサービスの利用は、私的複製にはあたらないという結論になりそうです。注意しましょう。
この「誰が複製しているのか」という主体の問題は、次の「図書館におけるコピー」についても重要なポイントになってきます。

● 図書館におけるコピーについて~図書館員によるコピーサービス~

では次に、図書館におけるコピーに関する著作権法の規定を見てみましょう。そうなのです。図書館におけるコピーについては、著作権法は特別の規定を設けているのです。


著作権法第31条(図書館等における複製等) (抜粋)


国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第3項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。


一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあっては、その全部。第3項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合

二 図書館資料の保存のため必要がある場合

三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合


(第2項及び第3項 略)

この法第31条の規定は、物的にも人的にも図書館が主体となって複写することが前提になっています。「自炊代行サービス」における知財高裁の基準に照らすと、図書館の利用者が私的使用目的でコピーを依頼した場合でも、図書館の職員がコピーするならば複製を行う主体は利用者ではなく図書館ということになるので、私的複製には該当しません。それでも図書館員によるコピーサービスが認められているのは、法第31条1項1号の規定があるからです。

法第31条1項1号でコピーが認められるのは、「著作物の一部」に過ぎない点にも留意が必要です。「著作物の一部分」とは、多くても著作物全体の半分以下と通常は解釈されています。200ページの小説であれば、最大100ページまでコピーできることになります。複数のコンテンツが編集されている、詩集や百科事典のような編集著作物の場合は、原則として個々の作品・項目が1つの著作物になります。実際に、図書館の利用者が事典の一項目全部について複写を請求したのに対して図書館側が断ったという事案で、利用者が図書館を訴えて訴訟になったケースがあります。裁判所は「原告の請求した本件複写請求部分は、著作物の全部に当たるものであって、「著作物の一部分」の複製物の提供を認める著作権法31条一号の規定に当たらないものというほかなく、その全部の複写を求めた原告の申込みに対して承諾しなかった被告の行為には違法性はない。」と判示し、事典の一項目が著作物だと認定して、図書館の判断は正しいと結論づけました(多摩市立図書館複写拒否事件。東京地裁1995年4月28日判決)。

しかし、事典の一項目や短歌・俳句のようにそもそも全体の分量が少ない著作物の場合、通常の方法で複製をすると必然的に「一部分」の範囲を超えてしまい、これを回避しようとすると、結果的に本来認められているはずの複製も困難になってしまいます。そこで、権利者団体と利用者団体との間の協議の末、2006年1月に、社団法人日本図書館協会、国公私立大学図書館協力委員会、全国公共図書館協議会の連名で、「複製物の写り込みに関するガイドライン」が公表されました。ガイドラインには、「同一紙面(原則として1頁を単位とする。)上に複製された複製対象物以外の部分(写り込み)については、権利者の理解を得て、遮蔽等の手段により複製の範囲から除外することを要しない。」と書いてあるのですが、「権利者の理解」が根拠だとすると、たとえば「私の作品は一句全体のコピーを認めない!」という明言する歌人がいたら、その作品の一句全部のコピーはできないことになりそうです。そんな意味では若干心許ない規定なのですが、これも、図書館におけるコピーの利便性と権利者の権利のバランスを取るための苦肉の策といえるでしょう。

なお、法第31条1項1号においては、複製の目的が「調査研究の用に供するため」とされており、厳密に言えば、単純に自宅で読んで楽しむ目的であれば複製は認められないことになります。もっとも、実態として利用者の真の利用目的まで確認することは困難であり、また、この点が問題になった裁判例もないようです。

 **ちょっと脱線しますが、このコラムの執筆中に、「すべての蔵書が電子書籍という私設図書館が立ち上がった」というニュースが報道されました。運営者が自分の本を1ページずつスキャナーで読み取って電子化した書籍を館内で閲覧できるようにした図書館、ということです。本が傷まない、誰かが借りていても読める等々、便利な点も多々ありますが、書籍の電子化は複製にあたりますし、配信も伴うサービスなので、著作権法との関係でも興味深いものだと思いました。前提として、法第31条に基づいて複製できる図書館は、公共図書館、大学図書館等、政令(著作権法施行令)で定める図書館等に限られますが、報道を見ると、その点はクリアされたようです。ただし次に、利用者に閲覧させるための複製が著作権法で許された「図書館等における複製」にあたるのか、という問題があります。法第31条1項を見る限り、使える規定があるとすれば2号(図書館資料の保存のため必要がある場合)に限られると思われますし、運営者も2号を根拠にしていると言っているようです。しかし、複数の端末で利用者に読ませるような形態での複製が「保存のため」と言えるのか、疑問が残ります。配信の点は、館内のみの配信なので、公衆送信にはあたらない(法第2条1項7号の2括弧書)ということなのでしょう。
電子書籍と図書館については今後も様々なサービスの展開が予想されるので、法的議論の行方を見守りたいと思います。

● 図書館に設置されたコピー機による複製

では、図書館に設置されたコピー機を使って、利用者自身がコピーする場合には、本1冊を全部コピーすることは認められるのでしょうか。この問題を考える前提として、図書館に設置されたコピー機におけるコピーの法的根拠が、私的複製(法第30条)なのか、図書館における複製(法第31条)なのかを考える必要があります。上で書いたように、私的複製であれば複製できる範囲には制限がありませんが、図書館における複製として認められているのであれば、複製できるのは原則として著作物の一部分に限られるからです。
法の規定に照らすと、ここでも、判断基準は「複製を行う主体は誰か」ということになりそうです。図書館が主体となって利用者を手足として利用して複製しているという解釈の余地もあり、法第31条1項1号の趣旨を骨抜きにしないために、このような解釈を取る論者もいます。しかし、図書館利用者は誰かに指図されている訳でもなく、また禁貸本を除けば、本を借り出して外のコピー機を使い、私的使用目的で自由にコピーできるところを、「便利だから」と館内でコピーしているに過ぎません。このような実態に照らせば、図書館利用者が主体となって複製していると考える方が、無理がないように思われます。では、「私的使用目的の複製だから本1冊コピーするのもOK」という結論で良いのでしょうか。
実は、図書館にコピー機を設置して利用者自身に複写させることの是非自体が、長い間議論されてきた問題でした。
複写複製問題を検討した文化庁の著作権審議会第四小委員会は、1976年9月に公表した報告書の中で、「複製を行うことができる主体は図書館等であり、複製を行うに当たっては、当該図書館等の責任において、その管理下にある人的・物的手段を用いて行うことを要するものと解される。その運営が適正に行われるようにするため、著作権法施行規則第1条の3に定める有資格者(司書又はこれに相当する職員)が置かれていることが複製を行うことのできる条件とされており、したがって、コイン式複写機器により複写請求者自身により複製させたり、複製をコピー業者に委託したりすることはこの規定の趣旨を逸脱するものと解される。」と述べています。その一方で、「複写複製物の請求からその交付に至る間の手続を厳正なものとするのであれば、作業としての複製行為のみを複写請求者......に行わせることは許容されてよいと解する見解もある。」と付記されていました。
(よく考えると、この報告書がさらりと書いている「図書館内で複製できるのは図書館だけ(=法第30条による私的複製は図書館の中では認められない)」という前提は、法的根拠が明確とはいえず、この前提自体が政治的産物と言わざるを得ないのですが、以下の指針もこの報告書を出発点としているので、本稿では報告書の是非にはこれ以上踏み込まないことにします。)
利用者の1つである大学図書館は、長期間にわたる協議の末、権利者である社団法人日本複写権センター(現:公益社団法人日本複製権センター)と合意に至り、2003年11月30日に「大学図書館における文献複写に関する実務要項」をまとめました。そして、次の5つの要件に合致すれば、図書館に設置したコピー機による複写は適法とみなすこととしました。


1)図書館が文献複写のために利用者の用に供する各コピー機について、管理責任者(及び運用補助者)を定める。

2)コピー機の管理責任者は、司書またはそれに準じた者とする。

3)図書館は、各コピー機の稼動時間を定めて掲示する。

4)コピー機の管理責任者は、管理するコピー機による文献複写の状況を随時監督できる場所で執務する。

5)図書館は、コピー機の稼動記録を残す。

実施要領はさらに、図書館が利用者に対して、「誓約書」の性格を併せ持たせた申込書の必要事項を記入させ、その申込書を図書館職員がチェックするとしています。こうした運用をすることによって、図書館内に設置してあるコピー機を使って利用者自身が行うコピーを、コンビニなどに設置してあるコピー機による私的複製とは異なり、法第31条の権利制限(図書館における複製)の範囲内で、「図書館が主体となって、利用者を手足として利用して行う複製」というたてつけにする趣旨だと考えられます。反対に考えれば、このような形で図書館が関与しない複製は、やはり「利用者が主体となって行う複製」だという解釈になりそうです。そうだとすると「図書館が関与しない方がむしろ利用者が適法にコピーできる範囲は広がる」という、少し奇妙なことになりそうですね。

このように、図書館に設置されたコピー機によるコピーの運用は、私的複製とのバランスや、図書館による複製の制約の趣旨を考慮しつつ、かなり政治的におこなわれています。実際には、多くの図書館において、申込書を提出せずにコピー機を使ってコピーできるようになっていますが、通常はコピー機のところには注意書きが張り出されていて、「コピーできるのは本の半分まで」等の注意事項が示されています。このような制約を課すこと自体は、図書館に設置したコピー機によるコピーの法的性格に関わらず、図書館が施設の管理者としての権限(施設管理権)に基づいて決められるルールの範囲内といえるでしょう。

● スマホによる撮影(複製)

ところで、図書館では上記のようなコピーサービスが認められているのに対して、多くの場合、資料の写真撮影は認めないというルールが掲げられています。法的性格という観点で考えると、私的使用目的でカメラやスマホを使って資料を撮影する行為は、「私的複製」と考えることになりそうです。図書館に設置してあるコピー機を使うコピーは「図書館による複製」にあたる、と解釈する論者でも、利用者が自分自身のスマホで撮影する行為まで「図書館による複製」だと主張することは難しいのではないかと思われます。しかし一方で、コピーと同様に法第31条1項1号とのバランスは気になりますし、より現実的な問題として、図書館という静寂な環境において、「カシャ」「カシャ」という写真撮影の音があちこちから響くようになると、読書を楽しんでいる他の利用者には多大な迷惑を及ぼすことになります。このような悪影響を考えれば、図書館が、施設管理権に基づいて、デジタルカメラや携帯電話による資料の撮影を禁止することには、合理性があると考えます。
なお、スマホならば大量の撮影は難しいでしょうが、近い将来、技術が発展して、本を上に載せるだけで全部スキャンできるような携帯スキャナーも登場するかもしれません。「スマホ撮影は私的複製で自由」という結論に立つと、利用者が簡易スキャナーを持ち込んで行う複製も私的複製と整理されることになりそうですが、そうすると、ますます、法第31条1項1号で図書館による複製に制限を課していることとのバランスが気になります。

図書館におけるコピーに関する著作権法の規定は、技術の発展に追いついていない部分もあり、どのように解釈しても、他の規定とのアンバランスは残るように思われます。とはいっても、図書館に関する著作権の規定の多くは、「知の宝庫」ともいえる図書館が、書籍の著作権者の利益を不当に害することなく、一方で利用者が快適に施設を利用できるように、という観点で定められているものです。筆者としては、図書館の利用者にも、著作権法の規定を盾に「私的複製だ!」「写真撮影できるはずだ!」等と主張するだけではなく、「著作権者の権利と利用する側の自由のバランス」という視点を持ってほしいと願っています。

以上

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