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コラム column

2009年7月27日

著作権改正IT・インターネット

「著作権法改正案の概要(第2回)」

弁護士  桑野雄一郎(骨董通り法律事務所 for the Arts)

■著作権法が改正されました

前回のメールマガジンを発行後,6月12日に「著作権法の一部を改正する法律」が参議院で可決され,成立しました。一部の例外を除いて来年の1月1日から施行されます。前回に引き続き,その概要をご紹介します。

■違法な著作物の流通阻止

1. 海賊版の頒布告知行為の禁止

近年インターネットのオークションサイトなどで著作権等の権利を侵害する海賊版が出品されることが増えてきています。現行法でも海賊版をそれと知りながら頒布する行為は著作権侵害とされ,罰則も設けられていますが,今回の改正によって,その頒布の前段階である(情を知って)頒布する旨の申出をする行為も譲渡行為と同様に扱われることになりました。

オークションサイトで海賊版の取引がなされた場合のオークションサイトの開設者の法的責任については様々な議論のあるところですが,今回の改正で頒布の申出自体が著作権侵害となると,その場所を提供しているオークションサイト開設者に法的責任が認められる余地が拡大することが予想されます。オークションサイト開設者としては対応に注意が必要だと思われます。

他方,権利者としては,海賊版が出品された段階で,この規定に基づいて出品者やオークションサイト開設者に対して警告をするケースが増えることが予想されます。

2. 違法配信からの私的録音録画の禁止

オークションサイトの問題と共に,インターネット等を通じた著作物の違法配信も問題となってきています。配信行為自体はもちろん違法ですが,誰が配信しているかを把握することはとても困難で,これを違法としてもその実効性がないのではないかと言われていました。そこで,今回の改正法では違法配信を,それと知りながら受信して録音録画することを私的録音録画の対象外としました。これによって,違法配信されたコンテンツを違法なものと知りながらデジタル方式で録音録画することは著作権(複製権侵害)となるわけです。侵害となるのはデジタル方式での録音録画に限定されていますので,ご注意下さい。

もっとも,①録音録画されたコンテンツが違法配信されたものであること,②録音録画した人が違法配信されたものと知っていること,という要件は証明することは簡単ではないでしょう。また,この規定に違反しても罰則は設けられていません。

このようなことからすると,あまり実効性はないように思われますが,権利者が今回の改正に基づいて警告をすることは増えてくるように思います。適法な録音録画についてまで不当な萎縮的効果を与えないような運用が望まれるところです。

■障害者の情報利用の機会の確保

インターネット上での利用に関する改正ばかりでしたが,今回の法改正では障害者の方々のための著作物の利用を促進するための措置も設けられています。

1. 視覚障害者向け録音図書を作成することが可能な施設の拡大

これまでは視覚障害者向け録音図書を作成等することができるのはいわゆる点字図書館に限定されていましたが,今回の改正案では視覚障害者等の福祉に関する事業に関する者に拡大されました。具体的な範囲は政令で定められることになっています。

2. 聴覚障害者のための映画や放送番組への字幕や手話の付与の可能化

現行法でも聴覚障害者のためにいわゆる文字放送をすることができましたが,今回の改正案では,さらに映画や放送番組に字幕や手話をつけることが可能になりました。

3. 聴覚障害者等のための複製

2で字幕や手話を付したものを,聴覚障害者等へ貸し出すために複製することも可能になりました。

障害者に対する福祉のためには,今回のように障害となっている規定を改正することも大切ですが,これらの視聴覚障害者のための複製等を行う事業に対する財政的支援が行われることも強く望まれるところです。

■その他 ~登録原簿の電子化

このほか,著作権登録原簿を磁気ディスクをもって調製することを可能にする規定も盛り込まれました。近年は不動産登記簿も電子化が進んでいますし,特許権や商標権などについては特許庁の電子図書館で閲覧することができます。著作権については登録は権利の発生要件ではありませんが,対抗要件としての登録などは今後も利用が増えることが予想されますので,登録されている著作物の内容等がネット上で閲覧等をすることができるようになったり,もっと進んで登録手続がオンライン上でできるようになったりすることが期待されます。

なお,以上の説明は説明の便宜上簡略化していますので,正確な内容については文部科学省のHPをご確認ください。

以上

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