All photos by courtesy of SuperHeadz INa Babylon.

English

コラム column

2009年5月21日

著作権法

「著作権法改正案の概要(第1回)」

弁護士 桑野雄一郎(骨董通り法律事務所 for the Arts)

■今国会に提出された著作権法改正

去る3月10日に,「著作権法の一部を改正する法律案」が閣議決定を経て国会に提出されています。また改正か,と思われる方も多いと思いますが,今回の改正案は近年になくかなり大幅で実務に与える影響も大きいと思われますので,注意が必要です。
今回の改正案は主に以下の3点を柱としています。

① インターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための措置

現在の著作権法は電子化された著作物等(デジタルコンテンツ)の利用についての例外規定が必ずしも十分ではなく,そのことがインターネットを利用したコンテンツビジネスが諸外国に比較して遅れている一つの原因になっていると指摘されていました。そこで,今回の改正案ではこの点を克服するための施策が盛り込まれています。

② 違法な著作物の流通抑止

近年ネットオークション等のインターネットを通じた取引が活発化していますが,それに伴い著作権を侵害する物品の取引がなされている例も多く見られるようになりました。そこで,インターネット上での違法な著作物の流通を抑止するための制度が盛り込まれています。

③ 障害者の情報利用の機会の確保

障害者のために,権利者に無許諾で行える著作物利用の範囲を拡大する規定が設けられています。


内容も盛りだくさんですので、これから2回に分けてその概略をご紹介することにします。今回は①の前半部分について概要をご紹介いたします。

■インターネットで情報検索サービスを実施するための複製等

現在インターネット上で広く行われているいわゆる検索エンジンサービスの作業工程は,概ね
 (Ⅰ) ソフトウェアによるウェブサイト情報の収集・格納(クローリング)
 (Ⅱ) 検索用インデックス及び検索結果表示用データの作成・蓄積
 (Ⅲ) 検索結果の表示(送信)
に分析することができますが,著作物が検索対象になっている場合,この作業工程のそれぞれについて,複製権や公衆送信権の侵害の可能性があると指摘されていました。そこで,今回の改正案は,インターネット上での情報検索サービスを行う者が必要な範囲で複製や公衆送信等(以下「複製等」とします)を行うことを認めています。

(1) 複製等を行うことができるのは「公衆からの求めに応じ,送信可能化された情報に係る送信元識別符号を検索し,及びその結果を提供することを業として行う者」ですが,その具体的な基準は政令に委ねられています。

(2) 複製等を行うことができるのは,「送信可能化された著作物」ですが,当該著作物について受信を制限するための手段が講じられている場合は,その手段を講じた者の承諾を得たものに限られています。現在,ウェブサイト開設者が自己のウェブサイト上の情報を検索エンジンによる検索対象外とするために技術的回避手段を講じることが行われています。今後はこのような手段を講じないと検索エンジンによる検索対象とされても著作権法上のクレームを行うことができないということになります。

(3) なお,検索エンジンサービス提供者が,送信可能化することが著作権を侵害すると知った場合は,自動公衆送信(送信可能化を含む)を行ってはならないことになっています。

■権利者が所在不明な放送番組等のインターネットでの二次利用

権利者が不明な作品を利用するための制度として,従来から文化庁による裁定制度がありました。ただ,この制度は手数料や手続に関する時間等の点からあまり利用されておらず,これが作品の利用の妨げとなっていると指摘されていました。また,現在の法律では著作隣接権については裁定制度の対象となっていませんでしたから,特に二次利用の需要のある映像作品がなかなか利用できないという問題点も指摘されていました。
そこで,今回の改正案では,著作隣接権を裁定制度の対象にすると共に,文化庁長官の定める額の担保金を供託すれば,裁定申請をした時点から著作物の利用ができることになっています。具体的にどのような場合が権利者不明の場合にあたるのか,といった点は政令で定められることとなっています。この改正が実現すると,TV番組等の映像作品を中心とする過去の著作物の二次利用が飛躍的に促進されると予想されます。

■国立国会図書館における所蔵資料の電子化

文化的所産としての著作物を幅広く収集・保存すると共に,国民ができるだけ幅広くこれにアクセスすることができるようにする,いわゆるアーカイブ事業の円滑化を図る一環として,今回の改正案では国立国会図書館における図書館資料のデジタル化を認めています。
デジタル化された図書館資料の閲覧は,現行法38条1項に基づいて国立国会図書館内で閲覧させることが可能ですし,コピーサービスも現行法31条によって行うことができます。ただ,国立国会図書館以外の図書館や一般家庭等で閲覧させるといった公衆送信にあたる利用は今回の改正案でも認められていません。

■インターネット販売等での美術品等の画像掲載

インターネットオークション等で絵画等の美術品を販売する場合,作品の画像を掲載することがどうしても必要になりますが,このような行為は複製権や公衆送信権との関係で問題があるのではないかと指摘されていました。そこで,今回の改正案では美術の著作物又は写真の著作物を適法に譲渡・貸与する場合,作品を複製又は公衆送信(送信可能化を含む)することを認めています。ただ,画像については複製を防止・抑止するための措置等を講じることが必要とされています。具体的にどのような措置を講じなければならないかは政令に委ねられています。

■情報解析研究のための複製

コンピュータによる情報解析を目的とする場合,著作物を記録媒体に記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む,以下「複製等」とする)することを認めています。高度情報化社会においては,インターネット上の膨大な情報等から情報・知識の抽出等を行うことによりイノベーションの創出が促進されるとの観点から設けられたものです。但し,情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物は本条の適用対象外とされています。

■送信の効率化等のための複製

近年,情報処理技術や伝送技術の発達に伴い,情報サービスの利用の重要性が高まっている一方で,ブロードバンド基盤の整備によりネットワーク上を流通する情報量は飛躍的に増大しています。そこで,送信の円滑化・効率化,そして安定した送信を実現するための以下のような著作物の複製を認めました。

 ①アクセス集中によるサーバーの負担軽減のためのミラーリング等
 ②サーバーのデータの滅失・毀損等に備えたバックアップ等
 ③著作物の伝送過程での中継・分岐の際などに生じる瞬間的・過渡的な蓄積等

(1) この規定によって複製ができるのは「自動公衆送信装置等を他人の自動公衆送信等の用に供することを行として行う者」です。「自動公衆送信装置等」とは,「自動公衆送信装置及び特定送信装置に記録され,又は当該装置に入力される情報の特定送信をする機能を有する装置」であり,「特定送信用装置」とは「電機通信回線に接続することにより,特定送信用記録媒体に記録され,又は当該装置に入力される情報の特定送信をする機能を有する装置」であり,「特定送信用記録媒体」とは,「記録媒体のうち特定送信の用に供する部分」であり,「特定送信」とは「自動公衆送信以外の無線通信又は有線電気通信の送信で,政令で定めるものをいう」とされている。また,「自動公衆送信等」とは,「自動公衆送信及び特定送信」とされている。
一読しただけではよくわからない複雑な規定ですが,今後政令で何が「特定送信」と定められるかが本条の適用範囲を画することになります。

(2) この規定により本条により複製ができるのは「送信可能化等がされた著作物」です。「送信可能化等」とは,「送信可能化及び特定送信をし得るようにするための行為で政令で定めるもの」とされていて,政令に委ねられています。

(3) 本条による複製の範囲は字数の関係で詳細は省略せざるを得ない。

■電子機器利用時に必要な複製

電子機器を利用したり,これを使って通信を行う際に,機器に著作物が一時的に蓄積されることがありますが,これが著作権法上問題があるのではないかという指摘がなされていました。瞬間的・過渡的な蓄積はそもそも複製に該当しないとの解釈もありますが,それ以外の一時的蓄積については疑義がありました。
そこで,電子計算機で著作物の複製物を利用する場合や著作物の複製物を受信する場合などに,電子計算機の情報処理の過程でその記録媒体に記録することを認めています。
もちろん,著作物の複製物の利用が著作権を侵害しないことが条件ですし,また記録することができるのは,「当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度」とされています。具体的な範囲は今後の解釈運用に委ねられることとなります。

なお,以上の説明は説明の便宜上簡略化していますので,正確な内容については文部科学省のHPをご確認ください。

以上

※本サイト上の文章は、すべて一般的な情報提供のために掲載するものであり、
法的若しくは専門的なアドバイスを目的とするものではありません。
※文章内容には適宜訂正や追加がおこなわれることがあります。